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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
61/248

(包囲網)4

     ☆


 足利義輝が幕府奉公衆を率いて京を進発した。

軍勢五千で小谷城の明智家討伐に赴いた。

それを見送った三好長慶は伊勢貞孝と共に執務に戻った。

道すがら長慶は伊勢に尋ねた。

「明智家の様子はご存知ですかな」

「多少は」

「勝てそうですかな」

 伊勢は辺りを見回し、黙って首を横にした。

近くには互いの側仕えしかいないが、敢えて口にはしない。

長慶も深くは突っ込まない。

柔らかい語気で続けた。

「近江や美濃の国人衆にも御内書を出されたそうですな」

「ええ、聞き及んでおります」

「その結果は」

 ここでもまた伊勢は首を横にした。

「織田家が帰路に小谷城に立ち寄ったことはご存知ですかな」

「ええ、聞き及んでおりますが、

公方様の耳には入れぬようにしております。

他の者達も同様です。

機嫌を損なうのは口にした者ですからな」

「ですな。

織田家の姫が明智家に輿入れすると言う話は」

「小耳には挟んでおりますが、所詮は尾張の小大名、

公方様の耳に入れる話でもないでしょう」


 長慶は別の話題にした。

「越後の長尾景虎殿の件もご存知かな」

 伊勢が足を止めた。

表情を歪めた。

「秋口に上洛の予定を前倒しして、この春先にしてもらった件ですかな」

「如何にも。

大変だったとお聞きしました」

 伊勢が長慶を建物の陰に連れて行く。

「当然です。

秋口で日程調整をしたのは拙者ですからな。

通過予定の領地や寺社に御内書と副状を届けさせ、承諾を得、

それから越後に通知。

それが僅か三日後に破棄されたのですぞ。

・・・。

公方様の、長尾の上洛は春先にしろ、の一点張りで全てご破算です。

偉い人は良いですなあ。

お陰で御内書と副状はやり直しで、てんてこ舞い。

こちらの気苦労も知らないで」

「それはご苦労でした」

 伊勢が長慶の耳元に地声で囁いた。

「ふざけるな。

誰があの方を朽木谷から連れ出した。

どうしてお天道様の下に野放しにした」

 目が本気色。

ややあって、自省したのか、長慶に謝罪した。

「すまん。

今のは忘れて下され」


 別れ際に長慶は最後の問い。

「長尾殿は明智攻めに間に合いますかな」

「こればかりは・・・。

急な変更でしたからな」


     ☆

     ☆


 京を進発した足利義輝の軍勢は途次にて、

道々の国人や地侍の手勢を加えて膨らんで行く。

勝戦だと信じた陣借りの者達をも吸収し、一万超え。

 既に観音寺城の六角勢は先行していた。

公方様の露払いを行いながら、小谷を目指していた。

ところが一戦もない。

領境で明智家に臣従している筈の国人達が姿を現さないのだ。

それぞれの砦も居城も、もぬけの殻。

矢の一つも飛んでこない。

村人に尋ねたところ、「領主様方は美濃方向へ向かわれた」と。

慌てて、その方向に物見を走らせたところ、目撃者が続々・・・。

 肝心の明智家の軍勢も見当たらない。

疑問は疑問のままにして置けない。

姦計に嵌っては目も当てられない。

そこで後続の公方様を待つことにした。

公方様を迎え入れられるように大きく布陣した。


 数日遅れで公方様の軍勢が合流した。

六角義賢は自ら先頭に立って出迎えた。

「公方様、お出でをお待ち申しておりました」

 足利義輝が軽やかに馬から下りた。

「出迎え大儀。

して、ここは」

「野良田と申す所です」

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― 新着の感想 ―
[一言]  決戦の場所が野良田というだけでもう草生えますわ。六角特効、ついでに公方にもぶっ刺さりそう。(足利義輝)お前……(野良田の地に)消えるのか?
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