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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
58/248

(包囲網)1

     ☆


 足利義輝は和議がなったお陰で久しぶりに京に戻れた。

近衛家の娘が正室として嫁いでも来た。

傍目には順風満帆に見えるかもしれないが、

当人は鬱々とした日々を過ごしていた。

肝心の幕政が三好一門と伊勢一門に牛耳られ、

義輝の意向が軽んじられていたからだ。

しかし、それを脱する手立てがなかった。


 新年過ぎた頃合いに六角義賢が入洛をした。

一人の少年を伴っていた。

浅井賢政。

戦死した浅井久政の嫡男だ。

観音寺城で義賢が鳥帽子親として元服を済ませていた。

新年の挨拶もそこそこに、浅井賢政の目通りを願い出た。

「亡き浅井久政の嫡男です。

どうかお目通りお許し下さい」

 事前に互いの近臣同士で打ち合わせていたので、直ぐに許された。

六角義賢は打ち合わせたままの文言を口にした。

「この者に小谷城を取り戻してやりたいのです。

公方様、どうかお力添え下さい」

 仕事を欲していた足利義輝に否はない。

二言三言交わしただけで偏諱を与えた。

「浅井義政、小谷城を取り戻してやろう」


     ☆

     ☆


 観音寺城の居館の奥まった小部屋。

六角義賢は密かに主立った者達を集めた。

家督を継いだ六角義治。

重臣中の重臣・後藤賢豊。

先の美濃攻めで戦死した進藤賢盛の嫡男・進藤治宗。

同じく先の美濃攻めで戦死した蒲生定秀の嫡男・蒲生賢盛。

平井定武。

三雲賢持。

目賀田綱清。

そして浅井義政。


 家督を嫡男に譲っても実力者は六角義賢。

当然のように上座に腰を据えた。

「このところワシは忙しくて入洛しておらぬが、

義治、公方様のご様子は如何だ」

 嫡男の六角義治が生真面目に答えた。

「御内書の鬼になっておられます。

近隣はもとより、北は伊達大崎から、南は大友島津にまで、

知る限りの全てに出されておるように思われます」

「それは些かやりすぎだろう。

伊達や大崎、大友に島津か、それらが迷惑するだろう。

それに添える副状を書く三好や伊勢が、よく止めぬな」

「お二方には内緒で進められております。

そこで副状は大館晴光か細川藤孝か、その辺りの者が」


 六角義賢は後藤賢豊に尋ねた。

「細川晴元殿は如何だった」

「話をしたところ、大層ご機嫌になられました。

公方様同様に無聊をかこつ日々だったようです」

「それでは引き受けて貰えたのか」

「はい、一も二もなく飛びつかれました。

何時にても手勢を集めるとお約束頂けました」

「見返りは」

「少々融通せよと」

「どのくらいだ」

「御心配には及びません。

こちらにとっては小銭です」


 進藤宗治に尋ねた。

「若狭の武田家はどうだ」

「親子での争いに決着が付きました。

嫡男の義統様が勝ち、信豊様は追放されました」

「すると相手は義統殿か」

 宗治は深く頷いた。

「はい、信豊様はもう駄目でしょう。

・・・。

義統様と交渉したところ、六角家の後ろ盾が欲しいと申されるので、

私の一存で引き受けました。

代わりに今回の件では喜んで出兵するとの事です」


 蒲生賢盛に尋ねた。

「朝倉家はどうだった」

 賢盛は神妙に答えた。

「朝倉義景様にお会いいたしました」

「それで今回の件は」

「六角ではなく、公方様に御奉公すると仰いました」

「味方してくれるなら、それでいい」

「ただし、雪解けまで待ってくれと」

「当然だな」


     ☆

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 足利義輝の偏諱なら「浅井輝政」が妥当と思われますよ。上杉輝虎みたいに。
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