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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
57/248

(近江)11

     ☆


 私は小谷城下町での観閲式を終え、ホッとした。

口では簡単に言ったが、ああまで大がかりになるとは思わなかった。

一言で表すならば大成功。

皆が頑張ってくれたお陰だ。

関係者にも金一封を奮発した。

 それにしても最後の実弾斉射は圧巻だった。

観閲式の締めに、一組百丁の鉄砲隊が十組み登場した。

十段撃ちを披露した。

途切れることのない銃声、漂う硝煙。

結局、十段撃ちを五回繰り返し、都合、五千発放った。

凄いとか言いようがなかった。


 甘かった。

観閲式の反響が、と言うか影響が凄かった。

各所に影響が及んだ。

一番は美濃や近江の国人衆や地侍衆だろう。

ほとんどが誼を通じて来た。

 中には臣従の申し入れもあった。

これまで恭順した家は十数家あったが、臣従は初めて。

待ってましたとばかり、大人衆がテキパキ交渉した。

手間取ったのは双方の条件の擦り合わせ。

臣従すると言いながらも粘る奴がいるのだ。

そういう奴は白紙にして、丁寧に追い返した。

大人衆筆頭・伊東康介が書類を持って来た、

「殿、これを」

「それは臣従した家の書類か」

 臣従には二種類あった。

一つは領地を明智家に献上した上での臣従。

一つは領地安堵の上で、明智家への臣従。

 明智家へ領地を献上した家は収入が途絶えるので、

その分は家禄として銭を支給する。

銭勘定から言えば、領地を持っていた頃より収入は確実に増える。

さらに番役方への与力としたので、与力手当ても上乗せされる。

家族のみならず手勢も余裕で養える。

良いことずくめ。

 対して領地安堵の家は明智家へ臣従するのみで、

他は何も変わらない。


 伊東が嬉しそうに言う。

「臣従すると言いながら往生際が悪い奴が多いですな」

「そんな奴等を虐めるのが好きなんだろう」

「人聞きの悪い。

親切に現実ってもんを教えてやるんですよ」

「それでどうやる」

 満面の笑顔で説明した。

「まず恭順していた家々の扱いから手をつけます。

これまでは番役方の与力として扱っていましたが、これを見直します。

元々、家禄も与力手当も与えてなかったのですが、

臣従した家々が入ってくると、収入の面で差が生じます。

それを避ける為に、無役とし、所属を郡代役方とします」

「郡代役方として何をやらせるんだ」

「何もさせません。

形だけの郡代役方です」

「それでいいのか」

「いいんです。

飼い殺しです」


 伊東の笑顔が止まらない。

「次は領地安堵の連中です。

これも郡代役方とします」

「飼い殺し仲間か」

 笑顔が倍増した。

「はい。

戦にも参加はさせません。

下手に手柄を上げられると論功行賞ものですからね」

「何も分けてやらないと言うことか」

「はい。

それぞれの領地に引き籠ってもらいます。

戦から遠ざけても置けば、そのうちに腕も錆びるでしょう」

「領地を献上した家々のみを優遇すると」

「当然です。

献上したご褒美です」大いに頷いた。


 花押慣れをしたところに参謀・芹沢嘉門が入って来た。

「悪い知らせです」

「聞きたくないな」

 芹沢がニヤリと笑う。

うちの大人衆はおかしい。

何故か悪い事が大好きだ。

「公方様と三好方が和議をしました。

やはり六角が手を回したようです」

「六角の次の狙いは当家か」

「公方様も三好を追い込めなかったので、次を考えている筈です」

「二人して当家か」

「京の周りで浮いているのは当家だけですから恰好の獲物でしょう」

「そう簡単に獲れるかな」


     ☆

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― 新着の感想 ―
[一言] 国人衆は独裁者じゃなく郷の利害の代弁者つまり村長みたいなものなので一言で所領返上しますなんて簡単にできませんよ 特に明智家みたいな中央集権に対する対抗手段として存在してるので民の方から反発が…
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