表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
45/248

(関ケ原)7

 庭で焼肉を食べていると、目敏い大人衆が来た。

「ご相伴、ご相伴」

 遠慮がない。

私の手元の皿にも箸を伸ばした。

私は肉を頬張る猪鹿の爺さんに尋ねた。

「今回の戦で六角家に睨まれないか」

 なにせ猪鹿家は近江国甲賀郡の歴とした地侍。

その家の前当主である爺さんが、あっけらかんと答えた。

「睨まれましょうな。

それでも問題はなかろうと思います。

観音寺城に在番するほどの仲じゃないですからな。

城下の商人と同じ扱いで、家伝の技を売るだけ。

文句のつけようがないでしょう」


「そうか、ならいいが。

拙いとなったら当家に逃げ込んでくれよ。

全員受け入れるからな」

「喜んで。

そうそう、今回の件で甲賀衆を集め難くなりますな。

そこで伊賀衆に声をかける事にしました。

引き入れる事をご承知ください」

「それは構わない。

ただし、猪鹿家の下に置くこと。

山窩衆や河原衆と同じ与力扱いだ。

家名を与え、家禄も銭で支給する。

よく面倒を見てくれよ」


 話が一段落したとみたか、大人衆筆頭の伊東康介が口を開いた。

「浅井領をこれからどうしますか」

「難しいな。

内憂外患の大安売りだからな。

内では美濃勢と浅井勢の確執。

外には六角、三好、京極、幕府、朝廷、向こう岸にはお寺さん、

この山の北の奥には朝倉。

おまけに私を襲撃する奴。

これでどうしろと」

「ごもっともです。

それでも何とかしましょう、御大将」試すような目付き。


 私は言葉を選んだ。

「内を治めるのは斎藤家の近江の方が一番だな。

当人が浅井家の直系で、嫡男が斎藤家の直系でもあるから、

美濃勢にも浅井勢にも受け入れ易い。

しかし、外がなあ、押し付ける訳には行かないな」

「はい、女子の身には、きついでしょう」

「小谷城は私が受領するのは決定だな」

「御大将でなければ美濃勢同士での争いになります。

どの御仁も一癖も二癖もありますからな」

「そうなると美濃と近江の二か国持ちか。

文官と武官を上手く組み分けて凌ぐか。

・・・。

面倒事が山積みでも、一つだけ良い事がある。

康介、分かるか」

「はて、何でしょう」

 私は伊東に小声で囁いた。

「近くに若狭と越前がある。

何れかを取れば海に出れる。

船を造れば商売繫盛だ」


 それが聞こえたのか、猪鹿の爺さんが言う。

「となれば、ますます人手が必要になりますな。

紀伊の雑賀衆や根来衆から抜けた者も誘うとしましょうか」


 翌日も大広間に皆が集まった。

並びは昨日と同じ。

左に美濃の武将達。

右に浅井の降将達。

双方が醸し出す空気も同じ。 

 誰もが納得するのは難しい。

どこかで誰かが割を食う。

それを恐れては前には進めない。

今回、割を食うのは浅井勢の降将達。

割を食いたくなければ勝てばよかった。

あるいは勝つ方に付けばよかった。


 私は皆を見回した。

「昨日の話を元にして私が決めた。

従う、従わない、それは各々方の心のままに。

伊東、述べよ」

 伊東が試案を私に持ってきたのは今朝。

一読した。

小谷城一帯は明智家に。

六角に接する一帯は美濃勢に。

若狭や越前に接する一帯は浅井勢に。

大雑把に上手く双方を引き離していた。

多少は血が流れるだろうが許容範囲内だ。

 伊東が一人一人を名指しして論功行賞を行い、処分を下した。

美濃勢は新たな領地か褒賞金、もしくは刀剣等の下賜。

浅井勢は領地没収か削減、転封。

喜色は美濃勢が多い。

沈むのは浅井勢。

私は邪気を払うように清々しく言ってのけた。

「これは決定だ。

意に染まぬ者は領地に立ち戻り、直ちに兵を挙げられよ。

もしくは帰農なされよ。

また、領外に去るもよし」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 国主じゃない上に反抗的な国人も多い美濃と浅井の領地だけで2カ国持ちとは言わないと思う 美濃勢にも浅井勢にも繋がりがある名目上の君主とかクッソ邪魔なのに何で接触させてんの…… 浅井が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ