表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
42/248

(関ケ原)4

     ☆


 六角義賢は本陣の奥深くにて、

陣卓子に広げられた地図を見て唸っていた。

使番から伝えられる戦況が悪化の一途。

特に敵の鉄砲は計算外。

ここまで長く撃ち続けられるとは。

忸怩たる思いに駆られていると、新たな使番が駆け込んで来た。

「お味方第三陣が敗走、その後を敵が追って来ております」

 六角義賢の耳にも敵の陣太鼓が聞こえた。

「これは総攻めだな」

 傍らの後藤賢豊が立ち上がった。

「某が防ぎます。

お館様は退かれますように」

 後藤賢豊は重臣中の重臣。

国人としての手勢も多い。

後を進藤賢盛に託して、自陣に駆け戻って行く。

それを見送りながら六角義賢が旗本に命じた。

「我も出る、馬を曳けい」腰を上げた。


 進藤賢盛が遮った。

「お館様、一時の感情で動かれてはなりません。

このままですと敗走するお味方の軍勢に紛れて、

敵勢が奥深くにまで入ってまいります。

万一の事が起こってからでは遅いのです。

取り敢えず、陣を下げましょう」

 退くとは言わずに下げると言う。

進藤賢盛も重臣中の重臣。

後藤と進藤、二人して『六角の両藤』と称される人。

徒や疎かにはできない。

そこに蒲生定秀の声がかかった。

「某も後藤殿と共に防ぎましょう。

進藤殿、お館様をお頼みいたす」

 蒲生定秀にまで言われては無下にはできない。


 旗本と進藤の手勢に守られて六角義賢は後退に次ぐ後退を重ねた。

陣を下げるそばから敵勢が前進して来るのだ。

味方はと言うと、多くは東山道沿いの山中に逃れた。

数が異様に減っているので、そう判断するしかない。

足軽や雑兵は仕方ないが、名のある武将もそうなのだ。

いつもは口煩い連中の旗印が見えないのがその証。

 頼りは後方に翻る味方の旗印二つ。

後藤と蒲生が巧みな用兵で、追い縋る敵勢の勢いを削いでいた。

六角義賢は馬を寄せて進藤賢盛に尋ねた。

「このまま逃げ切れるか」


 そこへ物見が戻って来た。

「西濃衆の軍勢が待ち構えています。

数はおおよそ三千、旗印は不破と稲葉です」

 布施公雄が馬を寄せて来た。

「某が先手仕ります」

 池田景雄も馬を寄せて来た。

「某も」

 二人の手勢合わせて五百。

小勢にも関わらず、西濃勢に突きかかって行く。

進藤賢盛が六角義賢に声掛けした。

「先手が開けた穴に飛び込み、喰い破ります。

お館様、匹夫の勇ではなく、ここは我慢です。

中段にてご辛抱ください。

我らが必ず守り抜きます」


     ☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ