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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
41/248

(関ケ原)3

     ☆


 最前線には出られない私に使番が順次、戦況を伝えに来た。

「こちらに浅井の第二陣が迫っています」

 朝靄にも関わらず物見が敵の動静を探って来た。

「敵第一陣が崩壊し敗走、第二陣と入れ替わります」

「弓隊が迎撃開始しました」

 弓足軽隊は二百名。

「投石機で迎撃開始しました」

 大陸で用いられた投石機を再現させたもの。

その車輌から大きな石が唸りを上げて飛んで行く。

この投石機は五両。

「連弩機で迎撃開始しました」

 これも大陸で用いられた複数の矢を撃ち出す武器。

こちらも五両。

「鉄砲隊が迎撃開始しました」

 一組百丁が五組、五百丁の五段撃ち。

雷鳴にも負けじと劣らぬ轟音を響き渡らせた。

「敵は未だ一兵たりとも空堀にまで到達いたしません」

 私が前に出ぬように参謀・大石蔵人が側に詰めていた。

「辛抱なさって下さい」

「分かっている」

 戦況が有利に進んでいるとは言え、

斎藤義龍の例があるから自分から前に出ようとは思わない。


 伊勢街道でも戦っていた。

そちらの参謀・新見金之助から使番が来た。

「敵の第二陣を退けました」

「お味方の被害は軽微です」

「総攻めはまだでしょうか」


 朝靄が搔き消えた。

陽光の下、戦場の有様が露わになった。

矢が刺さった者。

投槍で串刺しになった者。

銃弾を受けた者。

投石で潰された馬。

 至る所に浅井と六角の死傷者。

必死に藻掻く者。

力を振り絞って退却しようとする者。

悲鳴しか上げられない者。

全く身動きしない馬。

 浅井の第三陣が手前で足を止めた。

六角の第三陣も手前で足を止めた。

どちらもそれ以上、踏み込んでこようとはしない。


 これは私が意図したものではない。

私の手札は番役方四部隊四千名、恭順した二千名、

斎藤家から預けられた二千名。

投石機十両、連弩機十両、鉄砲千丁。

これを二つに分けた防御陣で六角軍と浅井軍を押し止めただけ。

事細かな戦術は美濃衆に丸投げした。

「明智勢のみで敵を一日は食い止める。

その間に方々で何とかして頂きたい。

この辺りの地形は私より方々の方が詳しいでしょう。

如何かな、引き受けて下さるかな」ちょっと挑発した。


 法螺貝が吹かれた。

参謀・芹沢嘉門が攻め時と判断したようだ。

攻太鼓が打たれた。

出撃。

一拍置いて懸太鼓が打たれた。

総攻撃。


 馬防柵の一角が開けられる音。

馬の嘶き。

「浅井勢を踏み潰せ」

 馬上に長井道利。

百頭を越える騎馬を従えて駆け出した。

その後ろに徒士や足軽の入り混じった隊列が続いた。

それはもう一つの馬防柵でも同じ。

「六角勢を圧し潰す、者共続け」

 日根野弘就が先頭の馬で叫ぶ。

喜色満面とはこれだろう。

軽やかに馬を走らせた。

一騎駆けせんとする勢い。

他の騎馬達が遅れじとそれを追う。


 ここに西濃三人衆の姿はない。

不破光治を入れた四人はこの辺りの地形に詳しい。

大きく迂回する事になるが、

獣道をひた走って敵軍の背後に回り込むと言ってのけた。

ついでに敵の兵糧を奪うとも笑った。

 不破光治と稲葉一鉄は六角軍の背後へ。 

安藤守就と氏家直元は浅井軍の背後へ。

それが上手く運べば敵軍に大打撃を与えられる。


     ☆

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