表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
30/248

(斎藤義龍)3

 山南と賄い方が鉄砲を抱えて現れた。

山南を含めて五丁。

この五名、賄いもだが鉄砲も得意。

しかも賄い方なので火種も常時携帯していた。

私は獲物を指し示した。

敢えて人名は口にしない。

「五名で先頭の武者を狙い撃て」


 正面の陣を下げた沖田のお陰で先頭の顔がよく見えた。

兜の下の、顔の特徴が一致した。

私は勝利を確信した。

山南の声。

「馬の頭が邪魔するが慌てるな。

確実な箇所に狙いをつけろ。

い~ち、に~い、さ~ん。

よ~し、撃てっ」

 一斉に五丁が火を吹いた。

どこに命中したか分からないが、人馬ともに横倒し。


 私は戦場の汗を流してから大広間に入った。

入る前から廊下にまで笑い声が聞こえていたものが、

私が入るやいなや大爆発。

大人達が口々に褒め称えてくれた。

「わっはっは、殿、やりましたな」

「はっはっは、大手柄でございます」

「いやはや、殿はできる方だと思うておりました、ふぁっはっは」

「これが笑わずにいれますか、あっはっは」

 面映ゆい。

たまたまなのに。

あっ、鉄砲だけに弾々か。

「それで義龍殿は」

 流石は大人衆の筆頭。

冷静な顔の伊東がこちらを向いた。

「町のお年寄り衆が死体は斎藤義龍殿であると確認しました」

「そうか、それで」

「城下に斎藤家と懇意の寺がありましたので、そこに運び込み、

死体を清めるようにと依頼しました」

「清めた後、斎藤家へ引き渡すつもりでいるが、どう思う」

「それで宜しいかと。

引き渡しは、その寺に一切を任せましょう。

我等が出張るより、寺が無難でしょう」


 遺体の問題が片付いた。

が、それで済む訳がない。

論功行賞は当然として、実行部隊の講評等々。

 それよりなにより、掛かった費用の算出と言う面倒事があった。

兵士に掛かった経費、馬に掛かった経費、破損に伴う経費等々。

味方の死傷者も数字で現すのだ。

勝てば勝ったで後始末も全て私に回ってくるとは思わなかった。

私が一件書類に目を通し、納得すれば署名、もしくは差し戻し。

これが上に立つと言う事なんだと自覚した。


 疲れた私に更なる難題が降りかかった。

「斎藤義龍殿の戦死に伴い、美濃の立ち行きが怪しくなりました」

 大広間で参謀・芹沢嘉門の言上を受けた。

「どうなるんだ」

「義龍殿のご嫡男は元服まで間があります。

それでも、すんなり家督は継げるでしょう。

男子一人ですので。

問題は美濃の守護代職です。

これは現状、元服していないご嫡男様が継ぐとなると、

足下を見られて通常よりも献上品が嵩張る事になります。

どれだけ用意できるものやら。

特にお金が」

 守護代の職は幕府から買い付けるものだった。

買ったとして、何年で回収できるのか。

義龍君は在位期間が短いから、赤字だよね。

赤い血を流してたし。


「そうなると誰が継ぐことになる」

「義龍殿の御兄弟がお二人おります。

いずれも弟で、利堯殿、利治殿」

 芹沢の顔色が悪い。

健康面で問題がある訳でも、心配事がある訳でもない。

悪巧みしている顔。

「二人とも道三殿の所か」

「その通りです」

「手駒が二枚か。

ん、んん、もしかしなくても、守護も関わってくるのか」

「当然です。

あちら様も子がいます。

守護として戻れないなら、我が子を守護代にと思うでしょう。

実入りとしては守護よりも守護代ですからな。

その手駒が二枚。

一枚は手元に。

もう一枚は斎藤家が預かっております。

道三殿も、守護様も、欲深い方々ですから、

なにやら仕出かしても不思議ではありません」楽しそうに言う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ