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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
227/248

(西から迫る兵火)39

 私は二人に提案した。

「和議は、こちらの攻撃が終了した時点から発する、

そういうことで宜しいかな、ご両所。

もっとも、それまで尼子殿が生き残っていればだが」

 小笠原長雄が私を憎々し気に睨む。

「我がお屋形様を狙うのか」

「それは現場判断。

隙があれば狙い撃つ。

なければ手を出さぬ。

大切なのは家来達の命だ。

無理せぬ様にとは申し伝えてはあるが」

 飯母呂十兵衛が黙った小笠原に力強く言う。

「お屋形様はご無事です。

我が一族が総力を上げて身辺を固めております。

知らぬ鼠は一匹たりとも通しません」


 ここで今、正式に和議を結ぶ必要はない。

私は二人を交互に見た。

「一応、念を押しておく。

攻撃が終了した時点でこちらは待機に入る。

そこから、なし崩しで和議状態とする。

そちらが一家でも望まないのであれが別だが。

何か尋ねたい事はないか」

 小笠原は顔を顰めた。

飯母呂は心底を覗かれたくないのか、表情を消した。

それでも二人は渋々ながら頷いた。


 私は新たな問題を提起した。

「纏まって誠に持って祝着至極。

・・・。

それでだ、その方等を無事に都へ戻したいが、帰路に関し、

何がしかの腹案を持っているのだろうな」

 即座に小笠原が飯母呂を見遣った。

飯母呂任せらしい。

その飯母呂は思案顔。

首を捻った。

私は飯母呂に声をかけた。

「どうした」

「はっ、ははは、それが・・・。

来た道を戻るつもりでおりましたが」

 私は親切心から断言した。

「比叡山なら無理だ。

頃合いからあの一帯には足止めが布告されている。

出入りは一切認められない。

押して通る者、密かに通る者、それが女子でも稚児でも、

それらは理由の如何を問わずに斬り捨てられる」


 飯母呂が肩を竦めた。

「某一人なら抜けられますが、困りましたな」

 同行している面々は武士ばかり。

弓馬なら得意だろうが、無事生還を期すとなると・・・。

無理だな。

飯母呂にしても、生還できる確率は半々だ。


 私は提案した。

「道は一つ。

無事に戻りたければ若狭から船に乗るしかない」

 小笠原の顔色が良くなった。

それでも懸念があるらしい。

「尼子の船が寄っておりましょうか」

 この中で詳しいのは産物取締役方。

その者がここぞとばかりに口を開いた。

「おりますぞ。

商家は武士とは違い、商いの活発な土地に寄り付きます。

それが尼子の商家だとしてもですな。

ここでの商いで儲けた銭が尼子家の矢銭になるのです。

お叱りのない様に。

・・・。

先触れを出して置けば待たせられます」

 私は指示した。

「その様に、任せるぞ」

「承りました。

尼子の商家の船を待たせます。

もし居ぬ場合はそれ相応の船を用意させます」


 去り際に小笠原が姿勢を正して私の方を見た。

「興味からお尋ねしたいのですが、宜しいですか」

 ほほー、何だろう。

こいつの興味は。

「当家の手の内は明かせない。

それで良いのなら」

「伊勢の北畠様はどうなされていますか」

 はは~ん。

北畠家が官軍に加わる様子がないから困っているのか。

「将軍宣下には重職の者を代理で送ったと聞いているが」

「それ以降は音無しなのです。

書状を送っても、言うなれば、柳に風かと」

 適当に受け流していると言うのか。

そうなると原因は義兄しか考えられない。

織田家がこの機会に再び動き出した。

そのせいで北畠家は織田家の調略、調略、調略に困り果て、

身動きが取れない。

そういったところだろう。

「私は北畠と付き合いがないので分かりかねる」


     ☆

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