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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
213/248

(西から迫る兵火)25

結果としてデータが消えたのが良かったのかな。

たぶん、良かった、・・・。

別の仕立てにしました。


 尼子家主体の新幕府軍の行動は早かった。

天下の耳目を河内に勢揃いした大軍に集め、その実、

山城の留守居を預かる軍勢から三千余を抽出、密かに進発させた。

主将は尼子家の重臣・三刀屋久扶。

尼子晴久は彼に、山城と近江の国境である逢坂の関を確保せよ、

そう命じられた。


 三刀屋久扶率いる軍勢三千余は、都から逢坂の関へ向かった。

町を過ぎ、幾つかの村を抜けた。

その様子を遠くから見張っている者達がいた。

彼等は明智家の忍び役方に属していた。

彼等は直近の失態で肩身の狭い思いをしていた。

尼子家が三好家に裏工作していた事実を見過ごしていた一件だ。

その一点だが、ただの一点ではなかった。

敵に大軍を擁する時間を与えてしまった。

彼等忍び役方は信用を一挙に失った。

そんな彼等に殿・光国様が言葉が掛けられた。

「気に病むな。

我等は神でも仏でもない。

偶には失敗もする。

顔を上げろ、胸を張れ。

私は今後もお主達の働きに期待する」


 光国様が言葉を続けられた。

「しかし、お主ら、直ぐにも汚名を返上したいのだろう。

その気持ちは痛いほど分かる。

だったらその機を与えよう。

幸いにもお主らの仲間が畿内各所に散開している。

これを活かさぬ手はない。

鈎の陣、そういうものを聞いた事はあるだろう。

それを再現して貰う。

銃と焙烙玉の使用も許可する。

ただしだ、決して討ち死にはするな、許さん」

 かつて、六角家が幕府軍と戦ったのが鈎の陣。

そこで甲賀と伊賀の忍びが六角家に味方した。

六角家の当主・六角高頼を山中に迎え入れ、

第九代将軍・足利義尚率いる幕府軍を迎撃した。

その義尚を襲い、陣中にて討った。


 光国様は更に言葉を続けられた。

「この戦、お主らが先鋒だ。

徹底的に敵勢を小突き回し、甚振り、立ち往生させよ。

戦場を河内や山城、丹波等の敵地に限らせよ。

疲弊させるのはその敵地のみ。

我等はこれ以上の領地獲得は望まぬ。

だから安心して暴れよ、焼き尽くせ。

・・・。

三好家とて遠慮は要らぬ。

尼子に組した国人地侍に限るが、徹底的に明智の強さを教えてやれ」


  三刀屋久扶率いる軍勢三千余を割り当てられたのは、

忍び役方配下の根来党。

根来忍びからの抜け忍を中核とした一党だ。

彼等は森の高所から軍勢を見下ろしていた。

標的の姿が近付いた。

騎乗した一団の真ん中にいた。

距離が有るので顔は確かめようがないが、目立つ鎧でそれと確信した。

よくよく見ると、周囲の標的に接する態度もそう。

軍勢を率いる主将にまず間違いなし。

 二丁の銃口が標的に狙いを付けた。

三丁目は別の箇所。

それぞれの射手が小声で言う。

「よし」

「よし」

「よし」

 聞いた介添えが片手を上げた。

見ていた班長が応じた。

「撃て」

 三丁が一斉に火を噴いた。


 二発が標的に命中した。

鎧を纏っているので被害の程度は不明だが、

標的は意識はあるようで必死に馬にしがみ付いた。

しかし三発目が馬の臀部に命中した。

それで馬が暴れ、標的を振り落した。

 ドッと落馬した標的。

供回りの者達が駆け寄った。

従っていた武将の一人が振り返りながら、後続の者達に命じた。

「狙撃した者共を捕えよる。

なるべくなら生かして捕えよ」


 後続の兵五十余が森に突入した。

藪を分け、勾配のある坂を駆け上った。

手柄欲しさもあるのだろう。

隊列も指揮系統もなし。

 不意に鳴り響く銃撃音。

追っていた者達に伏兵。

二十丁が横合いから狙いを定めての銃撃であった。

撃たれた者は当然として、撃たれていない者も地に倒れる様に伏せた。

恐々と左右を見回した。

「「「動くな」」」

「「「動けば狙われるぞ」」」

 銃撃は続かない。 

伏兵は一斉射だけで去った。


 落馬した標的の周辺は騒然としていた。

木盾と兵で取り囲み、警戒を密にしていた。

「「「殿、殿、聞こえますか」」」

 供回りの者達が標的に声を掛けるが、応答はなし。

首筋に手を当てていた者が口を開いた。

「微かに動いている。

手当てのできる者はいないか」

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― 新着の感想 ―
[一言] 当時の武将が着ける鎧兜は動きやすさよりも防御力重視のため30kg以上の重さがあったそうです。その重い鎧兜を身に纏って1.5mほどの高さから落馬して硬い地面に叩きつけられれば、最悪は首を骨折し…
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