表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
20/248

(稲葉山城)8

 実家との話し合いがもたれた。

私と父抜きで双方の実務者が顔を合わせた。

先方は兄と叔父。

こちらは参謀の芹沢嘉門と大人衆筆頭の伊東康介。

私と父がいないので短い時間で合意に達した。

 明智領での私の事業は継続する事になった。

技術はこちらの物だが土地は向こうの物。

父を納得させる為に五分五分、対等と言うことにして、

明智領地の事業から上がる純利益を折半することにした、

まあ、会計業務はこちらなので数字はどうにでも弄れる。


 嬉しかったのは側仕え全員が私の直臣になったことだ。

近藤勇史郎、土方敏三郎、沖田蒼次郎、お園、お宮。

五名は幼時から私を優しく、かつ厳しく、教え導いてくれた。

彼等彼女等が側にいるだけで安心できた。

 加えて、その伝手で女中が六名、下男が八名、下女が五名、

計十九人が明智領から来た。

紐付きが含まれているかも知れないが、素直に受け入れよう。

私の懸念を聞いた猪鹿虎永が胸をドンと叩いた。

「任せて下され。

遊ばせておいて、まず紐の先を探る。

しかるのち、こちらの利を鑑み処理いたします」

 利を鑑み処理か。

怖い、怖い。

何を、どうするんだ。


 城を得て終わりではない。

ここから新たに始まるのだ。

明智光国家の第一歩が。

 銭雇い達に仕事を振り分けた。

優先は城の守り。

次は城下町の活性化と治安維持。

そして周辺の村や集落の掌握。

周辺とは北が長良川、南が木曽川。

今のところは、これで限界だろう。

なにしろ人手が足りない。

そこで河川を越えないように指示した。

人手が増えれば、その限りではないけど。

 最後は当然、銭儲け。

こちらでも明智本家と同様の事業を行う。

増やしても共倒れになる懸念はない。

予想される消費量に比べ、圧倒的に供給量が少ない。

積極的に生産量を増やす事にした。


 それとは別にして、地元の有力者と親睦を深める必要もある。

城下町や村、集落の肝煎りや年寄り衆を招こう。

酒宴で持て成し、腹を割って話し合おう。

明智光国家の領地の将来を。

私は酒宴には慣れてないけど、我慢、我慢。

 なにしろ美濃には売れる物が多い。

関の孫六に代表される刀工、美濃和紙、陶器の美濃焼等々。

畿内も近いので銭儲けの種には事欠かない。

これらに私の明智印を加えたら、えへっ、涎た~らたら。

銭が貯まる、銭が貯まる、銭が貯まるぞう。


 斎藤義龍が意外と早く軍勢を解散させた。

徴用した農民を領地に戻したい国人や土豪の不満を、

国主の権威を持ってしても抑え切れなかったらしい。

地団駄を踏んでいると言う。

お気の毒さま。

でも、こちらとしては大歓迎。

一方の斎藤道三も尾張に去ったので、暫くは平穏であると思いたい。


 願望は叶えられなかった。

一月もせぬうちに足下が揺らいだ。

五日前、私が近江の国主・六角氏が発布した楽市令を手本に、

一歩進めた楽市楽座令を発したのに対し、

城下町の商人達や寺社勢が公然と抗議行動に出た。

集団で城門に詰めかけた。

武装した僧兵の一団が商人達と交替し、

制止しようとする城兵達を押して行く。

これは強訴だ。

 私は執務を中断して指示を出した。

「城兵は門内に引け。

門を閉じ、決して手出しするな。

ただし、押し入ろうとする者がいれば、容赦なく斬り捨てて構わん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ