(稲葉山城)5
銭雇いに加えて山の民、山窩。
義龍は渋い顔で一同を見回し、再び長井に目を遣った。
「会談の様子を最初から聞かせてくれ」
長井は城に入ってからの一部始終を詳細に語った。
つぶさに観察したつもりでも足りぬ箇所もある。
その足りぬ箇所は日根野や氏家が補足した。
聞かされる側の者達は時折、質問を差し挟む。
終えたところで義龍を始めとした一同、光国の言動を理解し兼ねた。
武将の一人が真っ先に質問した。
「光国とやらは分家すると申したのか」
「そう聞いた」
「明智家の当主の許しは」
「おそらく、ない。
道三軍に潜らせている者は聞き及んでいないようだ」
「光国は道三の味方ではないのか」
「それもないだろう。
味方するのなら城攻めではなく、我らの背後を襲う。
だが奴は城を選んだ」
氏家が長井に確認した。
「奴は我等を見送る際、そう言えば近くに空いた城があるよね、
そう申しておりましたな。
心当たりは大桑城、鷺山城、この二つ。
道三側の城だが、暗に襲えと唆したとしか思えないのだが」
日根野が唸った。
「う~むっ、そう言われると、今にして思えば唆されたのか」
それまで黙っていた武将が言う。
「道三が目の前にいるから、その二つの城の城兵は僅かだ。
稲葉山城の奪還が難しいのなら、そちらを貰うか」
長井が言う。
「二つの城を頂いて、奴と道三、明智家の関係をみるのも手。
道三の事だから城を明け渡せと申し渡すだろう。
光国が譲渡するか、拗れるか、見せてもらおう。
如何ですか、義龍様」
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