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oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに。  作者: 渡良瀬ワタル
10/248

(開演)10

     ☆


 私は四千の軍勢を率いて城攻めに赴いた。

目の前に聳え立つのは稲葉山城。

堅城に数えられる一つだ。

 城下町に忽然と現れた我が軍勢に誰もが驚いた。

町衆も城兵達も口を大きく開け、目を見開いた。

ここまでは斎藤義龍軍に味方している国人衆の目を掻い潜る為、

軍勢を分散させ、人目の少ない間道や河原を行軍して来た。

無事に来れたのは行程を組んだ者の手柄だ。

偏に猪鹿虎永だろう。

当人は私の傍で笑顔満開。

「若、始めましょうか」

 私の合図で旗指物が次々に掲げられた。

白地に赤く浮かび上がる桔梗紋二つ。

私の旗だ。

法螺貝が吹かれ、鬨の声が城下町の空を支配した。

 はあ~、テンション上げ上げ。

どっからでも掛かってこんかい。

銭かけてんだ、うちの足軽隊に。


 所詮、銭雇いの寄せ集めと馬鹿にされるかも知れない。

しかも今回が初陣、私も軍勢も。

けれど練度には自信がある。

田畑を耕させ、川を浚わせ、木こり仕事で筋力をつけさせた。

合間に槍術、刀術、弓術、盾術、用兵等を学ばせた。

基礎的な連携教練も済ませた。

かつ、鳥獣を狩らせて食わせ、身体も作り変えた。

畿内の戦を経験している者も多い。

 そもそもが今の戦の主役は足軽。

数で圧する方が大抵は勝つ。

加えて統率する者が優れていれば万全だ。

 私の軍勢は全員足軽で、装備一式は揃えた。

足りないのは経験だけ。

その経験が目の前にぶら下がっていた。


 陣太鼓が打たれた。

布陣する備太鼓。

一斉に軍勢が攻撃担当ヵ所へ移動した。

一番隊五百名、隊長は松原忠助。

二番隊五百名、隊長は武田貫太郎。

三番隊五百名、隊長は井上源次郎。

四番隊五百名、隊長は谷三太郎。

五番隊五百名、隊長は藤堂平太。

六番隊五百名、隊長は鈴木幹之助。

 普段の仕事振りを見て、統率力のある者を隊長に任じた。

隊長の下には百人頭、五十人頭、十人頭を設け、

命令系統を確たるものにした。

これで戦の前の準備は十全だろう。


 私の手元の兵力は千。

小荷駄隊を含めての数で、戦闘に携わるのは五百。

小荷駄隊を背後にして本陣を置いた。

側にいるのは猪鹿虎永を始めとした面々。

側仕えの近藤勇史郎、土方敏三郎、沖田蒼次郎。

銭雇いから側仕えに抜擢した長倉金八、斎藤一葉。

銭雇いから参謀に抜擢した芹沢嘉門、新見金之助。

そして二頭の犬、太郎と花子。

 参謀の二人は猪鹿虎永とは旧知の者。

畿内の戦で主家を失って流浪したところに猪鹿虎永が出くわし、

これも縁と銭雇いで声をかけた。

否がなかったので、今ここにいる。

幸いにも二人には文武に加え、謀の才があった。

そこで参謀とした。


「斎藤義龍軍が道三軍、織田軍との戦闘に入りました」

「城の周辺、敵影なし」

「長良川周辺、敵影なし」

「城下町に不審な動きなし」

「社寺の僧兵は武装を解いています」

 物見が次々に戻って来た。

それらを聞き終えた私は攻太鼓を打たせた。

一斉に六隊が鬨の声を上げて動いた。

各隊、盾足軽百を先頭に弓足軽二百、槍足軽二百と続いた。

これに城兵が弓で応じた。

各隊は盾の壁で矢を防ぎ、弓足軽を盾の後ろに並べて応戦した。

城からの出撃があれば、槍衾で阻止する構え。

 出足は好調。

躓く懸念は見当たらない。

さあ、稲葉山城を頂戴しようか。

 せめおとし いなばのうさぎ かわをはぐ。

脳内も絶好調。

かかってこんかい。

いや、攻め込まんかい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新撰組さん、逆行転生されてますなw
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