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Fifth target

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「もう二日も山に行ったから、山はイヤー」


「じゃあ、海に行くのはどうだい?」


「「海?」」


「そう、海のモンスターもいるんだよ」


 へー。

 ケスカロールは周りが草原だったが、ホロソーは山に海となんでもありだな。


「私、海に行ったことない」


「そうか、シャロールはあの町から出たことがないからな」


 ヒュイさんはしばらく何かを考えてから僕の方を向いた。


「よし、佐藤君。後は任せたよ」


「は、はい」


 任せたって、何を?


「さ、早く行こう! 佐藤!」


――――――――――――――――――――


「ここがホロソーの砂浜よ」


「わー! きれーい!」


 シャロールは初めて見る海にはしゃいでいる。


「おや、お嬢ちゃんは海を見るのが初めてかい?」


「はい!」


「それならさぞ楽しいだろうね」

「ただ、あそこにいるシェルリバーを倒すことも忘れずにね」


 ギルド職員が指さした先には大きなヤドカリがいる。

 現実のヤドカリとよく似ているが、大きさはけた違いだ。

 僕の腰あたりまである大きな貝を背負っている。

 おまけに、あの鋭いはさみ……。

 舐めていると、危ないかもしれない。

 だが、まずは……。


「佐藤、あのモンス……」


「ブクブクだ」


「え?」


「いいからやってみてくれ」


 シャロールは半信半疑でつぶやく。


「ブクブク?」


 するとヤドカリがこちらを向いた。

 どうやら正解のようだ。

 これからシャロールがヤドカリと……。


「佐藤、逃げて!」


 シャロールがそう叫んだ。


「え?」


 ヤドカリがこちらに向けて、走ってきている。

 意外と早いな。

 ……もしかして、そんな悠長なことを言ってる場合じゃない?


「シェルリバーはオスを攻撃する習性があるんだって!」


 そんな馬鹿な!

 僕は逃げ始める。


「これは本能だから止められないんだって!」


 まずい、やっぱり早いぞ。

 これじゃあ追いつかれる。


「倒しちゃだめなのか!?」


「だめ!」


 う~ん。

 それなら……。


「かかって来いよ、ヤドカリ」


 あえて逃げるのをやめて、正面から迎え撃つ姿勢をとる。


「ブクブク」


 泡なんか吐きやがって……。


「きゃー! 佐藤、危ない!」


 シャロールがヤドカリとぶつかる寸前の僕を見て悲鳴をあげる。


 が、僕は素直にこいつの攻撃をもらうつもりはない。


「よっ!」


 猛烈な勢いで迫るヤドカリをひらりと避けて、ヤドカリの貝を掴む。というか、掴まる。

 僕を背中に乗せてヤドカリはしばらく走る。


「さあ、どうする?」


 しかし、僕を見失ったからかヤドカリはほどなくして動きを止めた。


「さあ、説得してくれ。シャロール」


「う、うん」


 幸い僕の声はこいつには聞こえていないようだ。

 ヤドカリって耳あるのか?

 とりあえず、こいつにはないみたいだ。

 しばらくこの貝から降りるわけにはいかない。

 見つかったら、また襲われる。


――――――――――――――――――――


「なるほど。シェルリバーのあれはやっぱり本能なのか」


 僕達は夕食を食べながら、今日のことについて話す。


「子孫を残すためだって」


 だからって、人間のオスまで襲う必要はないのでは?


「モンスターも必死に生きているんだなぁ」


「そもそもモンスターって何なんですか?」


 ゲームでは当たり前のようにいるが、他の動物と何か違うのかな?


「そうか。佐藤君は異世界人だから知らないんだね」


「私も知らないー!」


「そうか、シャロールもか。では、お父さんが説明してあげよう」


「モンスターとはね、実はお父さんが産まれるちょっと前から出てきた新しい動物のことでね」


「普通の動物とは何が違うんですか?」


「彼らには大なり小なり邪悪な魔力が宿っているんだ」


「それって見えるの?」


「うーん、相当強力じゃないと普通の人には見えないかなー」

「特別な道具を使うともやみたいに見えるらしいよ」


 もしかして、ジェクオルのあれって魔力なのかな?


「モンスターって悪いの?」


「それはわからないんだ」

「攻撃的なモンスターもいれば、そうでないモンスターもいる」


「シャロールは嫌だと思うかもしれないが、普通の動物と違うからどんなに優しそうなモンスターでもギルドは討伐対象にすることが多いんだよ」


「そうなんだ……」


「モンスターが持つ邪悪な魔力は人間に対して悪影響があるんですか?」


「それはまだ調査中でわかっていないんだよ」


「じゃあ、もしかしたらモンスターと仲良くしてもいいの?」


「そうだね。これからそんな世の中になるかもしれない」


 もっとモンスターについての研究が進めば、ありえるか……。


「さ、今日はもう寝よう」


――――――――――――――――――――


「佐藤、仲良くできるといいね」


「ああ、そのためにはモンスターについてもっと知らなきゃな」


「うん」

「これからいっぱいモンスターに会おうね」


「そうだな」

「ただ、気を付けるんだぞ?」


「大丈夫!」

「私には佐藤がいるから!」


 シャロールが僕を見つめる。


「ははは……大丈夫かな?」


「あ、でも!」


 何か思い出したのか?


「どうした?」


「明日はあそこに行くからね!」


「はい、はい……」


 あそこねぇ……。

 洞窟にはいい思い出がないんだけどなぁ……。

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