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Third target

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「この町の採取依頼ってどんなものがあるんですか?」


「キノコだね」


「キノコ?」


「そう。なんでも毒消しに使うとかで重宝されているんだ」


「ふ~ん」


「おもしろそうだな、シャロール」


「うん」


「それじゃあ、今日はキノコ狩りで決まりかな?」


「はい」


「うん」


――――――――――――――――――――


「ツヨイノシシの生息地から少し外れたこの辺に……」


「これです!」


 ギルド職員が僕達に見せてくれたキノコは鮮やかな紫色をしている。


 これが毒消し?

 むしろ毒では?


「わー! すごい色!」


「見つけやすいでしょ?」


「わかりやすいですね」


「ちなみに黄色は麻痺治し、緑は混乱治し、青は眠気覚ましだよ」


「じゃあ、このピンク色のは?」


「それは……魅了や隷属を打ち消すキノコだけど、なかなか使わないと思うよ」


 隷属……嫌な思い出があるから、回収しておこう。

 僕はそっとピンク色のキノコを採った。

 そのときどす黒い色のキノコが目に入った。


「この黒いキノコは?」


「それは黒魔術を打ち消すキノコだね」

「……もっともそんな魔法を使う人間やモンスターはめったにいないけどね」


 ……これがもっと早く見つかっていれば、僕がスキルを使わなくてもなんとかなったわけだ。

 今となっては必要ないだろうが、一応採っておこう。


 ……手がふさがってしまったな。

 こんなときは……アイテムボックス!


 僕が心の中でそう念じると、手に持っていたキノコが消えてしまった。

 たぶんアイテム欄に表示されるはず。

 ……文字化けして。


「佐藤、集めるのは紫だよ。変なのまで採らないで」


「わかったわかった」


 こうして僕達はキノコ狩りを始めた。


――――――――――――――――――――


 これだけ集めれば、もう十分だろう。

 もう帰ろうかな。


「おーい、シャロー……」


「きゃーーー!」


 なんだ?

 今のはシャロールの声だ。


「どうした!? シャロール!」


 僕が声の方に駆け付けると、そこにはギルド職員しかいなかった。


「シャロールはどこですか!?」


「わかりません。自分が来たときにはもういませんでした」


 僕達はしばらくあたりを探してみたが、シャロールはどこにも見当たらない。


「一度戻りましょう、もう暗くなってきました」


「そんな……」


 まだ見つかっていないのに……。


「夜の山は危険です、早く降りましょう!」


「……わかりました」


 僕は渋々山を降りた。


――――――――――――――――――――


「佐藤君、今日は……」


 そこまで言うとヒュイさんは何かに気づいた顔になった。


「シャロールはどこだい?」


「それが……」


「何かあったのかい?」


 ヒュイさんの顔に焦りの色が見える。

 しかし、僕はあまりのショックでうまく言葉が口から出てこない。


「ヒュイさん、大変なことになったんです」


 僕の代わりにギルド職員が話し始める。


「実は……シャロールさんが行方不明になりました」


「なんだって!?」


 ギルド職員がそう言い終わるや否や、ヒュイさんが叫んだ。


「何があったんだい、佐藤君!」


 明らかに興奮しているヒュイさんが僕に尋ねた。


「シャロールと僕は途中から別々に分かれてキノコを採っていたんです」


「するとシャロールの叫び声が聞こえてきて……」


「君はきちんと見ていなかったのか!? 私達ギルド職員の仕事は冒険者をサポートすることだろう!?」


 ヒュイさんは同行していたギルド職員に尋ねた。


「すみません……ちょっと目を離したすきに見失ってしまい、探していたところに悲鳴が聞こえてきて……」


「なんてことだ……これからどうすれば……」


「今からでも探しに行くべきか……」


ヒュイさんは見るからに、狼狽している。


「ヒュイさん、お気持ちはわかりますがもう暗いので捜索は明日に……」


「そんな悠長なこと言ってられるか! 夜になるとあそこには危険なモンスターが出てくるんだぞ!」


「ですので……明日に……」


「それまで娘を放っておけと言うのか!?」


 ヒュイさんの顔が今まで見たことがないほど、怒りで真っ赤になっている。


「いえ……そんな……」


「もういい!」


 そう言い捨てると、ヒュイさんは山への道を走り出した。


「あの! 僕も!」


「君は寝ていなさい! どうせ足手まといだ!」


「な……」


 ヒュイさんの言葉が胸に突き刺さる。

 僕は度重なる出来事にショックを受けながら一人寂しく家に向かって歩き出した。


――――――――――――――――――――


 僕はどうしたらいいんだ。

 こんなことになるなんて。


 シャロール……。


 この気持ち……初めてじゃない気がする。

 シャロールと出会ったばかりのあのときもこのどうしようもない気持ちを感じた。

 けれど、あのときとは何かが違う。 


 なぜだろう?


 僕がシャロールのことを……。


 いいや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 シャロールを探さなくては……。


 しかし、シャロールがどこに消えたかなんてわからない……。

 どうやって消えたかもわからない……。

 なぜ悲鳴を上げたのかもわからない……。


 わからないことだらけだ。

 だが、ここでないない言ってばかりじゃなにも……。


 ない……。


 そうだ!

 僕のスキルを使えばいいんだ!


 さっそく僕はスキルを選択してこう言う。


「シャロールの居場所がわからない!」


 これでシャロールの……。


 <システムエラー>


「は?」


 どういうことだ!?


「シャロールの居場所がわからない!!」


 <システムエラー>


「シャロールの居場所がわからない!!!」


 <システムエラー>


 だめだ。

 何度やってもこのメッセージが出てくる。

 肝心なところでまたこのゲームはバグるのかよ!


「クソ!」


「もう僕にはどうすることもできないのか……!」


 フォン。

 <スキルが使用されました>


「え?」

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