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影の聖魔  作者: 霊王
第壱章
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第6話 〜父との会話〜

 この国では15歳以上が成人と認められる年齢だ。それにあたって貴族・王族にとってその日の誕生日は社交デビューとされ他の上流階級の名家が親睦を深める為にこぞって集まる日でもある。他にも王族となると12の誕生日が来る前にもお披露目会やら親睦会に似たものが設けられている。



 ――――――――――――――――――――――――



 お風呂の一件の次の日、ミーシャは父・カルロスの執務室へと向かった。廊下を歩くミーシャの後ろには侍女のリンともう一人、専属護衛騎士のレイがついて来ていた。



「城内なんだしレイがついて来る必要ある?」


「ですから姫様、昨晩もお話しました通り危険というものがどこに潜んでいるか分かりません。」



 ミーシャの問いにリンが言い聞かせるように答える。

 レイはミーシャの専属の騎士でこの国の中でもかなり強いらしく、若くして第一騎士団の副団長にまでなった出世頭。ミーシャの専属になったのは最近のことだが、身近な男性ということもあり前世の感覚でどうも親しげに話してしまうようだ。



「そうですよ姫様。姫様専属の俺が暇になってしまいますよ。」


「う、うん……」



 優しく笑うレイの顔を見たミーシャの頬は少し赤らめていた。どうやらそれだけではないようだ。



「ゴホン!!……レイ様もミーシャ様専属の騎士なのでしたらミーシャ様の(そば)にいて下さい。騎士が守る相手が気づいたらいなかったなど笑い話になりませんので!」


「か、返す言葉もない……」



 ショボンとするレイの姿が酷くいたたまれない。私のせいだもの。うぅ、ごめんねレイ。これからも迷惑かけるかも。(反省の色なし)


ーーーーーーーーー

ーーー


 そうこうしていいるうちに目的の部屋の前に着き、ミーシャは扉の前に居る二人の騎士に声をかける。



「お父様に呼ばれて参りました。」


「ハッ、伺っております。どうぞ中へ。」



 右側の騎士が反応しその扉から離れる。リンが慣れたように執務室の扉を開けると、ミーシャは扉を(くぐ)る。


 執務室に入ると二人の男の人がいた。


 一人は、赤茶色の短髪に同色のヒゲを生やしている。ダンディな男だ。窓際の机にこちらに向かって座っており、険しい顔で忙しく書類のようなものを書いている。これがミーシャの父でありこの国、ラミエット第二王国の国王 カルロス・アルトス・ラミエットその人である。

 座っているカルロスの机の横に立って書類を手に持っているのは先日廊下で挨拶した執事長のウォルフだった。



「ミーシャ姫様、おはようございます。」


「む、ミーシャか。ちょっと待っておれ…もう少しで片付くから。」



 ミーシャにいち早く気づいたウォルフが挨拶をしてくる。それに気づき、ミーシャを見たカルロスの顔には(くま)があり、頬には汗が一滴垂れていた。お疲れのようだ。



 数分後、一通り書類が片付き、カルロスの机の上が空いた。ウォルフはその書類らを持ってどこかへ行ってしまった。

 カルロスが机の上に肘をつき両手を顔の前で合わせる。



「待たせたな。ミーシャよ、分かっているとは思うがそなたの誕生日に貴族の者たちも招待する。」



 カルロスの問に私は(うなず)く。話の内容は直訳すると私の十歳を祝うパーティーの事だった。


 元々人前が苦手な私は社交場に自ら出ようとはしなかった。勿論、それはワガママだということも分かっていたし、いつか私も表舞台に出なきゃいけないとは考えていた。それでもこの国きっての秀才と(うた)われるお姉様と比べてしまうと自信がなくなってしまうことがある。


 この姿もそうだ。一種の先祖返りだとみんなは言うけどそう思わない人も少なくない。例えば、貴族派の中にある……強いて言葉にするなら反王党派。



「おぬしはその容姿でいろいろ悩んでいるのも知っている。今までそういった場所を設けなかったのも私の私情だ。だが、だからこそ他の者に知らしめる必要があるのだ。」


「はい、お父様。」


「すまんな、ミーシャ。」


「いえ、私もこれまで好き勝手やっていましたので。それに私はここまで育ててくれたお父様と使いの人たちに感謝しています。あとついでにお姉さまにも。」


「ふっ…そうか。では誕生日会は------」








「失礼いたしました。」


「うむ。」


「あ、あと…………今度、ゆっくりお話がしたいです。」



 私は部屋を出る最後に照れながらそう言って一礼をして慌てて出た。



「姿を見たのは2ケ月ぶりか?」


「ホッホ、さてはボケが始まりましたな陛下。4ケ月ぶりでございますよ。」


「おぬしこそボケたのではないか? そんなに経って…………いるのか。」



 ふと机の上に置かれているカレンダーに目がいった。そこに書かれているのはほとんどが会議や交流会の日付などの予定でびっしりと埋め尽くされていた。が、ミーシャの誕生日のすぐ近く。その日にだけは小さく“命日”と書かれそれ以外は空欄だった。

 そして、カルロスは思い出したかのように引き出しを開け、あるものを取り出した。



「ラティア様のペンダントですか?」



 それに反応したウォルフが問う。


 ペンダントには銀色の鎖にエメラルド色の宝石がぶら下がっていた。しかし、その宝石は中がくすんでいるのかあまり美しいと言えるものではなかった。しかし、カルロスがその宝石を手に取るとひとたびエメラルド色の宝石は輝きを取り戻すかのように淡く光出した。



「あぁ、私が持っていたものをあげたのだ。王族の者が触れぬと光らぬのだが、それなのにあやつは嬉しそうにしていた。」


「もう十年も経つのですね。ラティア様が亡くなられてから。」


「時というのは早く過ぎるのだな。」


「やはり、ボケてきましたか?」


「やかましいわ。」



 そんなやりとりの部屋をあとにしたミーシャの胸にも同じように宝石の首飾りが淡く光っていた。

ーー魔道具ーー


王族の証石(しょうせき)


特殊な技法と魔石で作られたネックレス型の魔道具。翠色の結晶が魔石で王族の血族が触れることにより淡く光る。このネックレスのおかげで家族と見た目が違かった幼きミーシャは王族として認められた。

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