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影の聖魔  作者: 霊王
第壱章
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第5話 〜王女の悩み〜



 ラミエット第二王国・第二王女ミーシャ・アルトス・ラミエットには悩みがあった。



「姫様、またですか……この際どこで何をしていたのかはあえて聞きません。私達が外で遊べと言ったのですから。しかし、こんな遅くまで護衛の一人もつけず、何をしておられたのですか?」


「……さんぽ。」


「そんなに汚れて、その姿のどこが散歩なのですかッ!!」



 現在、リンにお(しか)りを受けているところである。


 …はい、門限に間に合いませんでした。


 今まで書庫に引きこもってろくに運動もしなかった王女(ミーシャ)の体に《身体強化》を使った挙句(あげく)、全速力で走る……もちろん耐えられなかった。途中で休憩しちゃいました。


 なんとか城に着いて、コッソリ自分の部屋に行こうとしたところ、不運にもリンと鉢合(はちあ)ってしまい現状に至る。



 いや、悩みって言うのはコレじゃないんだけど……



「姫様は危機感というものが足りなさ過ぎです。城内でも危険はあるのですよ!? せめて護衛の一人でも付けてください! 万が一でも命を狙われたらどうするのですか!?」


「……ごめんなさい。」


「私にも非があったのは認めます。外で遊べと言いすぎました。ですが、いいですか姫様? 危機感を持ってくださいまし。」



 それもそうだ、一国の王女が城内とてウロウロ護衛もつけ付けずに歩いていたら何をされてもどうしようもない。自重しなければ……



「それと、陛下がお呼びしておりましたよ。」


「お父様が?」


「はい。もうすぐ来る姫様の誕生日のことでだそうです。」


「あ……」


「あって……姫様、まさかご自身の誕生日をお忘れに?……まったく、しっかりして下さいまし。そのようでは先が思いやられます。」



 ずっと書庫とかに居たり夜更かししていたから時間感覚が。そっか、私もう少しで十歳になるのか……ということは、(ミーシャ)として生まれ変わって十年。長かったような早かったような。もう薄れ始めている前世(東羅蒼太)の“記憶”と“想い”。私の中では王女(ミーシャ)としての自覚が芽生えていた。



「今日はもう遅いですから明日にするようにしてもらいましたので。先にその汚れを落としますよ、さあ浴場に……」


「いや……今日も……タオルが、いいなぁ〜なんて……」


「ひ・め・さ・まッ!! いい加減に淑女(しゅくじょ)としての行動をして下さいましな! 一国の王女が風呂嫌いなんて国民に知れられたらどうなる事か。」


「はうぅ……で、でも知られなきゃ……」


 (ギロッ)


「すみません。」



 十歳になる子供に淑女とは……まぁ、異世界だから何も言えないけど。

 それでもお風呂は嫌い。というより苦手だ。いつもお風呂に入った後の記憶が無い。ぼんやりとは覚えているが頭が回っていない感じ……それと前世(まえ)とは違って召使いの人達が身体を洗うのだがそれも苦手だ。

 それに何故か要望する侍女たちが殺到しているし、最近はお姉様も一緒に入っているらしく(自分は知らなかった)、何かされているのではないかと少し不安である。



「無理に入れとはさせられませんが、今日のように泥だらけでいますと……」


「うぅ、もう外で遊ばないわ……」


「いや、それはそれで困るのですが。あぁもう分かりました分かりましたから! 今日はもう遅いですしタオルでよろしいですから明日は朝一番に入ってくださいね?」


「はぁ〜い。」



 ふふ、やった!こういうの分かってくれるからリンは好きだ。朝ならどうせほぼ寝ているようなものだし問題なし!


 そう話がまとまっていた時、部屋の扉がノックされた。



「リン様、連絡です。」



 扉を開けるといつもリンの補佐をしている侍女が立っていた。リンは私に一礼をしてその彼女の所へ向かうと耳打ちしていた。



「コホン。姫様、申し訳ございません。先程のタオルの件、前言撤回でお願いします!」


「え?」


「さ、今からお風呂に入りますよ。」


「えぇ〜〜!!」



 私はリンに説明されず浴場へと連れていかれた。





 この城の入浴場は広く、よく漫画に出てくる大浴場に近いと思う。魔道具を使って常に湯を沸かしている状態で湯気が立ち上っていた。


 私は身体にタオルを巻いた状態で入浴場に入る。温かい温度とお湯が流れる音に湯気が立ち上り視界が悪くまるで夢の世界に居るような感覚。



 あぁ、まずい。意識が……



 フラフラととする私を他所に、リンは手を叩き他の侍女達を呼んだ。



「リン……どうして急に――――」


「申し訳ございません姫様。」



 ここに来て不安がつのりリンに言おうとするも、その言葉は侍女たちの行動に遮られる。


 この侍女たちの動きそういう事か―――――


 ボーッとする中、侍女たちの後ろにエルナお姉様が居ることに気づいたのが最後、ミーシャの意識は落ちていった。





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 気がつくと自分の部屋のベッドの上で寝ていた。身体がホカホカとまだ温かい事からそれほど時間は経っていないことが分かる。



「―――うひゃあッ!」



 ベッドから降りようと身体を起こすと全身にゾクゾクッと電気のようなものが走る。身体が敏感になっているのか、動く度に電気が走り力が抜け元の体勢に戻ってしまった。



(何をしたのリン……いや、お姉様……)



 なんか変な汗が出てきたし、あつい……



「のど乾いた……」


「失礼します。」



 そう思った時、リンの声がした。部屋の扉が開きリンが入ってきた。



「起きられたのですね、姫様。」


「リン……これはお姉様が計画した事?」



 リンは持っているポットを机の上に置くと目をつぶった。私は睨むも追求はしなかった。どうせお姉様が無理やりやらせた事だろうと思う。このお咎めはお姉様にしなくては。



「姫様が毎晩タオルで身体を洗っているとエルナミア様が聞いて企画したものです。大半は彼女と侍女たちの私欲のものでしょうが。私には止める理由もなかったものでして。」



 ()()って…でも気を使わせてしまっていたのにも変わりはない。少し自分勝手にやりすぎてしまったなぁ。



「ありがとう、リン。でもこれからはちゃんとお風呂に入るからアレはやめて。」


「はい。尽くしてはみます。」



 うんまぁ、相手がお姉様となるとリンの立場じゃ逆らえないか。今度、私から言っておこう。



「それでは姫様、おやすみなさいませ。」


「おやすみ、リン。」



 全くもってお姉様には悩ませれる。いや、私が言いたい悩みってのはコレじゃない……これも悩みだけど。


 そう、相手のいない問に私は答える。


 ベッドの側にある机の上にリンが持ってきたティーカップを見て私は手を伸ばした。しかし、まだ治らない体がビクッとしてしまい手元が狂う。



「熱ッ、くない……あぁ、またなのね。」



 反射的に目を閉じるも来ると思っていた熱が伝わらない。目を開けるとティーカップは下に落ちておらず中身もこぼれていなかった。

 しかし、そのカップのとってには黒い帯のような巻きついている。私の“影”だ。



 この世界にある不思議なこと。魔法・魔物・異種族、そして能力(スキル)


 そのスキルの中でも珍しいものが『固有能力(ユニークスキル)』いまカップに巻きついている私の影も固有能力の一つだ。



 固有能力・『影の聖女』



 そして、私の悩みはこの能力が制御出来ないことにあった。

ーー固有能力ーー

《影の聖女》

聖なる神の力の一部、黒き力は“影”と成りてその身に宿る。付近の生命に力を与え、聖女としての証を示す。


所持者 ミーシャ・アルトス・ラミエット

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