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影の聖魔  作者: 霊王
第壱章
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第4話 〜異世界の力〜

 姉・エルナミアから逃げ……もとい、戦略的撤退をしてきたミーシャは城の廊下を歩いていた。


 行く度、すれ違う人たちに頭を下げらるのは第二王女だから仕方ないのだけれど、私はいつも歯痒く感じていた。これも、前世の記憶のせい?



 そんな中、目的地へと到着した。



 ここをあえて言うなら森だ。


 先程のような城の内部とは打って変わり、辺り一面に木々が生い茂る場所であった。しかし、ここは今だに城の中だ。正確には城と城壁の間。

 このラミエット城は内側から城・森林・城壁・城下町・城壁となっている特殊なつくりだ。


 なぜ森林があるのかと言うと、何でもこの土地は元々は大きな山だったらしくそこを開拓して出来た時の(ゆかり)らしい…林だけに。その時の国王は植物や自然などが大好きで開拓時にわざと森林の一部を残した。その為ここだけ自然感が(すさ)まじい。



 このような造りの国はここだけだと思う。それより城の人達は林って言ってたけどこれは森に近いんじゃない?外で遊べって………あ、別に皆に注意されたから外にいるわけじゃないよ……ないよ?



 周りに誰もいないか確認をし私は下を向いて(つぶや)いた。



「出てきていいよ、ルー。」


「キュウッ!」



 その言葉に反応したようにどこからともなく小さな竜が現れた。その竜は楽しそうに私の周りをパタパタと何周か飛ぶと私の頭にベタッと乗っかった。意外と重い……


 城内だと他の人の目もあるため、稀にだがこうやって人気のない所で自由にさせてあげている。だけど、いつまでも隠し通せるわけじゃない。どうにかしてあげないと。



(かといってバレたら大変なことになっちゃうし。)



 この子が安全だとも私には証明できない。だけど懐かれちゃってるし前に逃がした時は戻ってくる始末。それに私も心の拠り所にもなりつつあるので離れたいとは思っていなかったりして。



「ルー、追いかけっこしよ。この間のリベンジ。」



 ルーは飛ぶときはパタパタと遅いのだが地上となると素早い。前の時はルーを全然捕まえられなかった。あぁ、その時は全身泥だらけになって城に帰ったらリンに叱られたな、懐かしい……2週間前だっけ。

 今も既に所々汚れちゃってるけど。いや、ドレスでくるからいけないんだけど私ドレス以外の服となると…………うん。ない。何も思いつかない。


 バッと頭の上から降りたルーは私の方をチラッと見ると走り出した。あ、始まったのね。今日こそは捕まえやる。



「《身体強化》」



 そう(つぶや)くと私の体が一瞬、淡く光り走るスピードが上がった。


 この世界の特有のチカラ“魔力”は使い方も色々あり、魔力を体にめぐらせて基礎運動能力を上げたり、魔道具に魔力を流し使用したりできる。勿論、()()も使える。

 でも、魔法は成人を迎えるまでは普通は教われないが、《身体強化》のような魔力操作の応用なら練習すれば使えてしまう。


 草むらを悠々と走り抜けるルーを私は跳躍(ジャンプ)で追いつく。



(惜しい、あともう少しだった!)



 ルーはスラスラと木々の間をすり抜け私の攻撃をかわした。私は諦めずもう一度走り距離を縮めると今度は木々の幹を蹴ってルーに飛びかかった!が………



「はっ! あっ――――」



 ゴンッ―――



「……痛い。」



 失敗した。魔力の操作を誤り、ルーを通り越して木に顔面から激突してしまった。私はぶつけた(ひたい)(こす)りながらその場に座り込んだ。


 どうも私は魔力操作が下手で長時間持続できない。色々と試そうにもあまり無茶をするとみんなに迷惑をかけるかもしれないから実践的な事はしない方がいいと思うし。



(………よし。)



 ミーシャは思考を放棄した。


 完全に放置する訳じゃないけど体がシンドい。《身体強化》はその後の筋肉痛が本当に酷いのだ。現に数分使ったかどうかで身体の節々(ふしぶし)が悲鳴を上げている。


 それに焦らなくてももうすぐ魔法の習い事が行われる。その時に教わればいい。


 ギュッと拳を握り痛みを堪える。



「キュウ?」


「ルー。」



 追いかけてこない私を心配したのか草むらから顔をのぞかせているルー。近づいてくると「大丈夫?」とでも言いたそうに、私の顔に擦り寄って心配しているようだ。


 かわいい、癒される。



「ゴメン…大丈夫だよ、安心して?」



 大丈夫と言っているが私の額からは血が垂れていた。



「えっと……“光よ 癒しの力を”《治癒(ヒール)》」



 私はそう唱えるとみるみると傷口が塞がった。流れていた血も止まると痛みも段々と和らいできた。《治癒》は私が本を読んで初めて覚えたものだ。


 七つある属性の聖属性の初歩中の初歩の魔法だ。本当はまだこの歳では使ってはいけないけど、これくらいは目をつぶってほしい。



「よし、もう1回!」


「キュウ!」



その後何度かの追いかけっこと失敗を繰り返した。

すると、途中でルーが何かに気づいたように鳴いた。



「キュウキュウ!」



 何事だろうと思い考えているとルーが上を向き鳴く。木々の隙間から見える空は先程の青白い空ではなく、いつの間にか朱色に染まっていた。


 やばい、怒られる。



「ルー、影に入って!」



 ルーに指示すると、私の足元に飛び込むとルーの姿はそのまま影に吸われるかのように消えた。そして私はそのまま気にすることも無く王城の方へと走り出した。



 急がないと皆に、リンに叱られる!

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