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影の聖魔  作者: 霊王
第壱章
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第3話 〜変わった朝〜

 ピヨ、ピヨピヨ



「んぁ…朝か……」



 部屋の小窓から日の光が射し、目が覚める。


 寝起きのあくびを終えベッドから降りようとした時、コンコンとドアがノックされ声が聞こえた。



「姫様、入ってもよろしいでしょうか?」



 その声に『私』はうん、と返事をすると扉の外からメイド服を着た女性が入ってきた。

 落ち着いた茶髪を清楚(せいそ)に後ろで結び、銀色のメガネに緑色の瞳をしている綺麗な女性だ。



「おはよう、リン。」


「おはよう、じゃありませんよ姫様。もうお昼時です。」



 ベッドを降りた私は『リン』と呼んだその侍女(メイド)に急かされながらも部屋の隅にある大きな鏡の前に立たされた。


 そこに映ったのは()()だった。窓から射す光が白銀の長髪に反射し、深い赤紫色の瞳が私を見つめている。白に近い肌と幼さが残るも整った顔立ちをして薄い水色のネグリジェを着た少女だ。


 まるでファンタジーの世界にでも出てきそうな人物だ。



(あれから何年経ったっけ……?)



 リンに服を着替えさせられながら鏡に映っている自身の姿を見る。


 事故にあってあの後、気がつけば見知らぬ天井を見上げていた。病院か?と思ったが横に居る人が違うと言っている、見た目的に。



 (メイドだ、メイドが居る!  ココドコ!?)



 それから落ち着いて状況把握で分かった事がある……自分は赤ちゃんになっていた。



 (あ、自分、転生したんだな。)



 それから数日が経ち、更に気づいたことがある。



 (ここ、自分の知ってる世界じゃないな(笑))



 知らない言語と不思議なチカラ……“魔法”。目の前で見たら誰だってこの考えに至ってしまうのでは無いのか。



「姫様、どうされました?」


「ん、何でもない。」



 最初の頃は戻る手段とか考えていたのだが、前世の記憶は日が経つにつれて薄れてきてしまっていた。そう、私はもう(ミーシャ)なのだ。どこか心残りがあるが私は自分に言い聞かせ鏡に映る私を再度見る。


 いつの間にか着替え終わっており、先程のネグリジェとは違い、ドレスとは違う……なんて言うんだっけ、これ。ゴスロリかな……派手すぎない?



「今日のご予定は?」


「……いつも通り、かな?」


「何故、疑問形なのですか……かしこまりました。」



 この侍女(メイド)リンは私が産まれた時からお世話になっており、私を支えてくれる優秀なメイドだ。『いつも通り』だけで分かってくれるところ流石は私の専属メイドだけはある。リンだけだろう。私はリンを連れて部屋を出た。





 この世界に来てまずぶつかった壁は言語だ。この異世界で日本語なぞ通じるはずもなく、翻訳してくれる謎のチカラもありはしなかった。しかし、絶え間ない努力と充分な環境のおかげで習得できたと思う。その際に教材として使った本に興味を持ち今では本を読むことに夢中になっていた。



「ミーシャ様、ごきげんよう。」


「ごきげんよう、ウォルフ。」



 廊下を歩いていると執事の格好をした貫禄のある老人が話しかけてきた。私がお返しに挨拶の言葉を送ると後ろにいたリンはお辞儀をした。この人の名前は『ウォルフ』見た目通り執事をしていて、執事長を務めている。



「また夜遅くまで起きておられましたね?」


「ごめんなさい、昨日見つけた書物が興味深くて、つい……」


「それは喜ばしい事でございますな……それとは別に夜更(よふ)かしなどは程々にお願い致しますぞ。」


「うぅ……以後気おつけます。」



 ウォルフに注意されつつも、とある部屋にたどり着いた。道のりが長くすこし上がっていた息を整え私は部屋に入る。


 扉を開けるとそこには沢山の本棚が並べてあった。陽の光が弱く差し込み、紙とインクの匂いが心を落ち着かせた。

 扉の横にはお爺さんがいた。先程のウォルフよりかなり高齢だ。



「ハノ爺、ごきげんよう。」


「おや? ごきげんよう、ミーシャ様。ホッホッホ、いつもの事ながらお若いのに感心じゃの〜。」



 ハノ爺はここ書庫の管理を任されている人で入り浸っている私はかなりお世話になっていた。雰囲気的には近所のおじいちゃんだ。



「ハノ爺、あの本 届いてる?」


「えぇ、先程届けられましたよ。姫様がいの一番ですぞ。」


「やった。」



 ハノ爺から本を受け取るとリンは別の用事を片付けに行くと立ち去った。


 私は本を持って部屋の隅の方の席に座る。ここは本棚に遮られて人の気配をあまり気にすることがないため私のお気に入りになっていた。




 丁度良いのでここらで重要な話をしておこうと思う。



 お気づきだと思うが、私はこの国……ラミエット王国の

 国王カルロス・アルトス・ラミエット

 とその妻(王妃)ラティア・アルトス・ラミエット

 の間に生まれた

 二番目の娘ミーシャ・アルトス・ラミエット第二王女、それが今の私です。


 要するにここは城の中、王城という事。

 先程、王国といったが正確には「第二王国」が正式名称だけど、その説明はまた今度にする。そして、この世界には前世の世界のファンタジーように他種族が存在している。



「クウゥ?」



 獣人とか魔族とかドワーフ、エルフ、妖精…(以下略)



「キュウキュウ!」



 私この国は人間が多く一般的に人族と呼ばれている。そして、いつの間にか机の上にいる生物が……竜種。


 名前は ルー。


 竜種とは、文字通りの生物で強固な鱗は攻撃を弾き鋭い牙ヤツめは岩なんかも破壊する。長く生きた竜の知能は高く様々な魔法を駆使する個体も存在する。その力は強大。国ひとつを簡単に(ほふ)れる程だと伝えられるこの世界の種族でも最強の存在だ。



「ルー、いつの間に……勝手に出てきちゃダメだよ……」


「キュ〜ウ!」



 この子は昔、怪我をして倒れていたところを拾ったら懐かれてそれからずっと一緒にいる。この子はまだ子供だが、それでも城の人たちにバレたら大騒ぎである。



 ―――――コツコツ



 廊下から人の歩く音が響いてきた。私は咄嗟にルーを捕まえてどうにかしようあたふたしていると入口の扉が空いた。



「ハノ爺様、ごきげんよう。ミーシャは居られますか?」


「エルナミア様、ごきげんよう。ミーシャ様でしたらいつもの席に居られますよ。」


「ありがとうございます。」



 やばい、早くルーを隠さないと!



「ミーシャいた! きゃ〜〜! いつ見てもミーシャは可愛い! もう最強! 本を読んでる時の知的な姿も(たま)らないわ!」


「うぐっ、お姉様苦しい。」


「もう! 今は二人しか居ないんだから、お姉ちゃんって呼んで!」



 いや、ハノ爺が居るよ……



 この少女、赤茶色の髪に翡翠色の瞳を持ちドレス姿で私に飛びついてきたこの人の名前はエルナミア・アルトス・ラミエット第一王女。つまり、私の姉にあたる人だ。彼女は容姿端麗、才色兼備の超完璧美少女なのだが1つ欠点があった。



「……お、お姉ちゃん。」


「きゃ〜〜ッ!」



 こんな感じで妹の私に溺愛中(できあいちゅう)の残念な姉だ。嫌われるよりはいいけど……


 エルナ姉様を見ればわかるが私は不思議と家族と違って髪色も瞳の色も全く違った。そのせいで忌み嫌われるだろうな、と思ってたけど何故かかなりの大人気。嬉しいけど……節度を保ってもらわないと死ぬ、窒息で。



「用事があったので来られたのでは?」


「あ! そうそう、私の妹が可愛すぎて忘れてたわ。ミーシャ、この本がどこあるか分かる?」



 そう言ってドレスのポケットから1枚の紙を取り出した。ドレスにポケットってあるの?



「えっと、その本は…そこの棚の上から5番目の段、右から6冊目。」


「え〜と、上から5番目の……1、2、3…これかな? さすがだねぇ〜我が妹は天才かい?」


「お姉様に言われたく無いよ……」


「またお姉様って呼んだ! お仕置き〜!」


「うぐッ…」



 先程も言ったように私は王族としての教育は全て終了しずっとこの書庫に入り浸っていた。そのせいか全ての本の場所を覚えてしまった。普通なら三万冊も覚えるなんて不可能だろう。どこかの10万3000冊の本を覚えた少女には敵わないけど、この体になってから物覚えが良くなった。子供だからだろうか?


 けれど、この姉と言ったら半端ない。幼少期から才能を見いだし、王族である故の礼儀作法は完璧。さらに言語学、数学、国学、経済学は普通の年代の子を上回り、飛び級。今は魔法・魔術学に力を入れてるらしいがその専属の先生からは凄いと言われている。この国きっての天才。そこは姉として誇れるんだけどな。



「あ、もう1つ忘れてた。また夜更かしたって聞たわよ? 控えないとこのぷにぷにの肌に悪いわよ。」


「わ、分かった……ありがとう、お姉ちゃん。」


「ッ!!! くうぅ~可愛いやつめ~」


「グフゥッ!」



 やばい……息が…………

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