第1話 〜竜が飛ぶ空〜
―――――寒い。
身体に震えるような寒気を感じ、眼が覚める。まるで高速で空を飛んで移動しているような感覚………いや、実際に飛んでいた。
正確には、自分を乗せている生物が。
滑らかで規則正しく生えている藍色の鱗、バサッと大きな音を立てて風を掴む巨大な二つの翼。長い首の先に見える頭に生えた二本のツノ。そう、竜だ。
そして私はこのドラゴンを知っている。大きさがまったく違うが、なんとなく『ルー』だと分かった。
それから行動を起こすのに時間はかからなかった。私は無意識に“影”を使って自分とルーの体を固定させていたのを今度は自分の意思で固定させた。
「ッ!!――――――」
ルーの名前を叫ぶも風が強すぎて声がかき消されてしまった。
このままではまずい。風に当てられて体温が下がってきた、高度も高いせいか空気が薄い。手足の感覚が無くなってだんだん意識が遠くなる。
まるで、前世で死んだ時のような……
ふと、そんな事を思い出し歯を食いしばった。気持ちを高ぶらせると私は寒さでかじかむ口を無理やり開け、体の奥底から声を出した。
お願いッ……届いて!
「ルーーーッ!!!」
その瞬間、ルーの体がビクッと反応しスピードが一気に減速していった。
(届いた!)
そう、安堵するのも束の間。ルーは減速するどころか固まったかのように止まり、飛ぶのをやめてしまった。
私も限界がきた。体の力がガクンと抜けて固定していた“影”が解け空中に投げ出されてしまった。
風が顔に当たって目を開けるのも困難な中、無理やり下を見た。そして下に見えたのは緑に覆われた土地だった。近くに川などは流れておらず、ましてやクッションになる様なモノはあるはずも無かった。木の上だとしてもこの高さでは到底クッションにはならない。それより枝が槍のように体に刺さるだけだ。それまで、私の体は重力に従って落ちていくのみ。
どうすれば良いかパニックになりながら考えていると視界にルーが入ってきた。ルーはいつの間にか元の手のひらサイズに戻っていたが、意識を失っていた。
(ルーだけでも助けないと!!)
ルーだけでも守ろうと自分の袖の“影”の中にルーを入れた。
その作業だけでもう地がそこまで近づいていた。咄嗟に顔の前で両手を交差させ体を縮こませる。
バサッ、バキバキバキ――――ボチャン!
はじめまして霊王です。
この作品は、自分が作る最初の小説になります。間違い・アドバイス・感想等などございましたらコメント、是非よろぴくです。