第14話 〜似た者同士〜
「その話、勝手にしてもいいんですか?」
「ミーアちゃんには知っておいて欲しい……そんな気がするのですよ〜。もちろんあとでフミちゃんには言いますけど〜。」
シスター、事後じゃ遅いですよ。
「邪神教に村が襲われた時フミちゃんはお兄ちゃんに連れられて逃げてこれたらしいのですが、バド……“バド”というのは前に話した知り合いの商隊の人でですね~?
その人が丁度二人を保護したからよかったもののフミちゃんが住んでいた村は壊滅だったそうです……そしてあの子の“失声症”はどうやら目の前でお友達が攫われたようでして、その時のトラウマが原因だそうです……」
その話を聞いていてミーシャは自身とフミを重ねていた。目の前で誰かを失う出来事、それも……同じ邪神教の手によって。今でもミーシャは邪神教の名前を聞くだけであの時の光景を思い出してしまい身体が震え出していた。
「大丈夫ですかぁ〜?」
私の異常に気づいたのかシスターが気にかけてくれた。私は心配させまいと大丈夫と答える。実際はかなりキツイ。冷静さを装って入るものの心が怯えていた。
「すみません、早めに休ませてもらいます。」
「いえ〜ゆっくり休んでくださ〜い。子供たちの事ありがとうございました。」
私は浴場で軽く身体を拭き自分の部屋に戻る。すると廊下にフミちゃんが座り込んでいた。
「フミちゃん……?」
(……ハッ!)
カクンと頭が傾きその反動で目が覚めたようだ。
「どうしたの?」
ミーアの疑問に答えようとしたもののどう伝えればいいのか分からない様子のフミ。その姿にミーアは頭を回転させて予測してみる。
「シスターから話を聞いたの?」
(コクンッ)
フミの昔話をしたことをシスターから聞いたのだろう、そして彼女がここに居る理由は恐らく私の話も少なからずフミちゃんに話したのだろうと思う。シスター、お口軽すぎです……
「とりあえず、部屋入る?」
――――――
二人でベッドの上に横並びに座る。
…………
………………
……………………気まずい。
私はそこまで口達者じゃない、フミちゃんは言うまでもない。あぁ、フミちゃん俯いちゃった。ここは私が話題をふらなければ…………
「あっ……えと、聞いたと思うけど私も邪神教徒に襲われたの。それで……大事な………人達を失った。私の帰る場所も大切な家族も居る。けどまたあいつらに襲われたらって…………」
(ギュウッ……)
情けなくも年下の女の子の前で弱音を吐く。するとフミちゃんがギュウッと私にしがみついた。
「あれ、こんなこと話すつもり無かったのにな……ごめんね…………ごめんね。」
その言葉は、誰に対して言ったのか自分でもよく分からなかった。
それから私が“はい”か“いいえ”で答えられる質問をフミちゃんに繰り返し聞いた。いつの間にかウトウトしてるフミちゃんを私のベッドに寝かせ布団をかける。
私はと言うと机に座ると《影収納》からロウソクとマッチを取りだし火をつける。ここに来る時にあった本棚から数冊、同じく《影収納》に入れて置いたのも取りだし本を読み始めた。
私の能力『影の聖女』は自身の影を自在に操る事ができる。この能力は自身の影と認識できるものを魔力を消費することによって物質化・具現化したりかなりかってが良い。しかし、影と認識できない・光源がなかったりすると使えなくなってしまう。
先程のような《影収納》は『影の聖女』の能力の一部、他にも《影移動》なんてものもある。
そもそも『影の聖女』自体がよく分からない。ステータス画面が出てくるわけでも頭の中に浮かび上がるわけでもないけれど、確かに私の中にある“力”と認識できる。それに、稀に勝手に動いてしまう……防衛本能、のような別の意志というべきか。
そんな事を思考しながらミーアは本を読み、眠れない夜を過ごした。
あの事件以降、ミーアの身体にはある現象が起きていた。
寝ようとする度に“あの光景”がフラッシュバックしてしまうようになっていた。そのせいで眠れなく、『不眠症』の症状になってしまったのだった。日に日に濃くなるクマを見てシスターも心配していた。
しかし、そのまま眠れない夜が続きその日がやってきた。
【第14話】あとがき
――能力――
影収納
自身の影の中にものを入れることが出来るがその質量、重さは直接 体にかかる為、大きいものは入れられない。
影移動
影の中に入って移動でき、壁や天井でも可能とする。しかし影が無い場所では魔力を消費するし、影のみが見えるから明らかに異質。