〜プロローグ〜
これは
とある世界
とある国の 不思議なお姫様の物語
その少女は透き通るような白銀の髪を肩まで伸ばし
暗く深い赤紫色の瞳で夜空に輝く満月を見つめていた。
月の光が薄暗い部屋の小窓から入るとベッドに座っている少女を照らした。
まだ小さく幼い体で、夜空に輝くまるい大きな月に手を伸ばした。
その手は届くはずもなく、虚しく空を切りゆっくりと、少女の元へと戻っていった。
ハァと、その小さな口からため息が漏れる。すると、後ろから、クゥ?と動物の様な可愛らしい声が聞こえてきた。
少女はその声のした方へ視線を向けると、月の光が指しその姿を照らした。そこには小さな小さな竜がいた。
夜空のように薄暗い藍色の鱗に、月のように黄色く鋭い瞳、そして二つの翼に二本の角、まさしく幻想上の生物 竜。
少女は怯えるそぶりもなく、その小さな竜へと手を伸ばす。
竜もまた、その手を警戒することなく受け入れ、頭を撫でられていた。それが気持ち良いのか嬉しそうにクゥクゥと鳴く。
「そろそろ、寝ようか。」
その姿を見て少女は微笑みながら竜に話しかける。竜はその言葉が通じたのか、キュウ!と可愛い返事をし、ベッドで少女と一緒に横たわった。
「おやすみ……」
その言葉を最後に少女と小さな竜はゆっくりと目を瞑った。