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正義は悪魔の名のもとに  作者: 鬼崎祐佑
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第3話 開かれる扉







「・・・ここまで来ればいいかな」



黒山羊の女は十数分飛行すると、適当な所で地に足をつけた。



「おわっ!」



ドサッと音を立てて地面に落とされた駿夜は苦悶の声を上げた。頭を振り、周囲を見渡す。

周囲は住宅街から外れているようで、閑散としていた。駿夜は記憶を頼りに自身の頭の中の地図と周囲を照らし合わせるが、自分がどこにいるかわからなかった。どうやら、駿夜が普段足を運ばない郊外に居るようだ。


駿夜は改めて自分をここまで連れてきた存在を見る。


すると、その視線に気付いたのか、黒山羊の女は被り物を取った。



「なんて顔してんのよ」


「・・・は?」



被り物を取った後に見えた顔は紛れもなく自身の隣席の主だった。



「加賀谷?」


「そうだけど・・・?」



余りの出来事に駿夜は口を開けたまま固まる。それはそうだろう、クラスメイトが背中から羽を生やし、自らを抱え上空大移動を繰り広げたのだから。


今だ整理しきれていない頭をフル回転させて状況を理解しようとする駿夜。



「天使と名乗る入学生がいて、その女子にいきなり襲われて、次は同級生から助けられて、その同級生の背中から翼が生えて抱きかかえられながら飛んで・・・」


「理解が追い付かないのはわかる。だから落ち着いて」


「・・・まさか、夢?」


「・・・」


「いたっ!?」


「・・・夢から醒めた?」


半ば現実逃避し始めた駿夜に、夏目は蹴りを入れた。


その蹴りで駿夜は夢では無いと自覚する。



「じゃあ、今までの出来事も全部現実・・・なのか?」


「そうよ」



自身が身を持って体験した、手品やCGではなく、現実として。

しかし、現実だと気付いてもなお、否定しようとする自分がいた。



「・・・はぁ」



夏目はため息を一つ漏らすと、先ほどと同じように漆黒の羽を背中に生やす。

そして、それが作り物ではない事を証明するように、ゆっくりと羽を動かした。

その光景に、駿夜は思わず息をのむ。



「・・・ここまでしてあげてんのよ。まだ夢とか言いくさるようなら」



そこで夏目は言葉を止め、次の瞬間、夏目の拳が駿夜のすぐ目の前で寸止めされる。



「うわっ!?」


「夢であってくれた方が良かったって、そう思えるほどタコ殴りにしてあげてもいいけど」


「い、いや、加賀谷の言う事を信じるよ」



駿夜はすぐさま首を縦に振る。その仕草に夏目は「なんだ・・・」と小さく呟いて拳を引っ込める。その反応が本当に残念そうで、こいつ、殴りたかったのか・・・。と駿夜は顔を引きつらせた。

話したことさえ今日が初めてで、駿夜の中で空欄が多い夏目のプロフィールには大きくドS、と書き加えられた。



「・・・なぁ、加賀谷。あいつは、なんで僕を・・・?」



天野から襲われた理由がいまいち理解出来ていない駿夜は夏目に尋ねる。が、夏目は答えるでもなく駿夜を一瞥すると踵を返して歩き出した。尻もちをついたままの状態だった駿夜はあわてて立ち上がると、夏目の後ろをついていく。



「加賀谷」



夏目の後ろを歩きながら、再度同じ質問をぶつけようとした駿夜だが、それに夏目がかぶせるように言う。



「・・・後で説明する、それでいい?」



文面で見れば、お願いしているようにも取れる夏目のセリフだが、振り返り様に駿夜を見た目は鋭い光を発しており、“今は静かに黙ってついてこい”という言外の意図が含まれていた。それに萎縮した駿夜ははい、と返事をしたっきり静かに後をついて行った。




# # # # # # # # # # # # # 




「ここは・・・」



駿夜が夏目に連れてこられた先にあったのは教会だった。



「な、なぁ加賀谷。ここは教会だけど・・・。大丈夫なのか?」



先ほどまで自称神の使いに襲われていた駿夜は、加賀谷の後を着いていくのが躊躇われた。



「大丈夫よ。まぁ、そこまで心配ならここで待っててもいいけど。でも次は助けないよ」


「・・・分かった」



わざわざ自分を助けてくれた夏目を信じ、駿夜は後に続いた。夏目はその重々しい教会の扉を開ける。古びた扉からは期待通りの音が鳴り、ゆっくりと扉が開いた。



「・・・ただいま」



夏目はそう呟き、教会の扉をくぐる。


駿夜は中に入ると、思わず息を飲んだ。



明るい月明かりがステンドガラスから中に入り、幻想的な雰囲気を醸し出していた。



「やぁ、おかえり、夏目」


「うん。(いつき)さん、何もなかった?」



樹と呼ばれた男は苦笑した。



「ああ。夏目が上手く追っ手を撒いてくれたからね。この場所はばれてないよ」



一通り、夏目との会話を終えた樹は駿夜に向き直る。



「君が、榮守 駿夜くんだね?」


「は、はい」


「いきなり襲われて、ここに連れてこられて。大変だったね。でも、君を助けるにはこうするしかなかったんだ。すまなかった」



樹はそういって、目を伏せたまま謝罪した。



「・・・いえ、助けて頂いてありがとうございます」


「・・・君はいい子だね。えっと、どこから話そうか」



樹はそう言い一瞬視線を外すと、少し考えてから、再度駿夜の方を見た。



「そうだね、まずは君の両親の話から始めようか」


「・・・え?」



樹の口から放たれた言葉に、駿夜は驚きに目を見開く。


なぜここで両親が出てくるのか。



そして、樹はゆっくりと口を開いた。



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