十一柱目・裏 狂騒の世と愛想の二人
クリスティア・ミステアです、夏が来ました。
この世界でもやはり四季の概念があり、暑い時は非常に暑いですが、それでも道場で杖術の鍛錬を怠ることはありません。
とはいえさすがに熱いので、長かった銀髪はばっさりと切ってしまいました。
周囲の人からは非常に勿体無いと嘆かれましたが、私の髪はレクトのものです。が、今は傍に居ないので私のものです。
出来ることなら、この髪が再び伸びきる前に再会したいのですが。
「クリスティア様、そろそろお時間となります」
「ええ、ハムズ。今行きます」
振り回す杖を止め、ハムズに杖を手渡し、真っ白なタオルを受け取る。
「怖ろしい才ですな。もしや私めよりお強いのでは」
「ただの鍛錬と実戦では勝手が違うと思いますが」
「仰るとおりです」
さて、これからの予定は確か……
「特に何もありませんね、予定」
「はい。夏休みの宿題も既に終わらせ、残る時間を全て鍛錬と研究に費やして……そういえば、寮で勉強会をするとエリザベス様が仰っていた覚えがあります」
「……参加したほうが良いと?」
「人脈というのはやはり必要です。親密度を高めるのも重要なことかと」
親密度。レクトが女の子の親密度を上げるゲームを遊んでいたのを思い出しますね。
ハムズの言うことも一理ありますね。少し参加してみましょうか。
石造りの通路、自室の扉の前に立つと、既に中から騒がしい声が聞こえてきます。
ここは女子寮なのでさすがにハムズは入室できません。ということは、私は単身であの騒乱へと身を投じなければならないのです。
「なかなか、憂鬱ですね」
いえ、これもレクトへと出会うための試練。乗り越えるのです。
乗り、越えるのです。いざ。
扉を開けると、一斉に中に人間がこちらに意識を向けるのが分かります。
一つだけ、かなり友好的な雰囲気を向けていますが。
靴を脱ぎ、揃え、狭い玄関を四歩進むと、フローリング、ピンク色の絨毯、四角い卓を囲うのは、三人の聖女。
「リスティ!」
「っ!」
そのうちの一人が獣の如き瞬発力で突進を繰り出し、私はそれを受け止めます。
「くっ、まだ馬力が足りませんわね」
「ベス、急に突進するのはやめてください」
「ザベスとお呼びなさい! それにしても、ようやく私のお誘いを受ける気になったのですわね?」
前々から夏休みの勉強を一緒にしようと言われていましたが、何せ私は調べ物と鍛錬で忙しいので、遠慮していたのです。
「それにしてもエリザ、こちらの方々は?」
「あ、そうでしたわね。紹介いたしますわ! お友達のシェンファとシーニーですわ」
すると卓で向かい合う二人の聖女が立ち上がる。
片方は赤髪、大きな瞳はより赤く、滾るマグマのよう。
「始めましてクリスティア・ミステア。私はシェンファ。神通力は聖火焼却。よろしく頼む」
神通力。それは聖女が与えられし奇跡の一つ。
戦う聖女の役割は二つ。
一つは加護。加護を付与された体は魔への抵抗力を持ち、武器は魔の肉体に刃を通し、魔法は悪を取り除かれ純度を増し、研ぎ澄まされた技巧に神威を宿らせ神技と成す。
もう一つがシェンファという聖女が口にした神通力です。
神通力はいわゆる各聖女が有する固有の能力。神より賜る奇跡によって、聖火、聖水、神風、金剛、聖歌、その他多種多様の神通力が存在します。
「私は、シーニー・スヴェトラーナ。よろしく」
雪原の世界の只中、しんとそこにある泉の、薄氷のような薄い水色の髪。
冷めた瞳をこちらに向ける少女も、やはり聖女のようです。
「シェンファ、シーニー。こちらがあの天才聖女と呼ばれた白銀神童、クリスティア・ミステアですわ」
「初めまして、クリスティア・ミステアです。どうぞ、よろしくお願いします」
相手が誰であれ、一応の礼節を持って相対するべきです。
とはいえ、この空気……
「さすがは白銀の聖女様、一切の怖気ない手慣れた挨拶、噂に違わぬ神聖……なるほど神気あらたか」
「……お褒め頂けて光栄です、こちらこそ、東方の聖火の巫女様、北方の氷衣結晶様にお目見え叶うとは思いませんでした。お二方のお噂はこの国にも轟き響いております」
聖火の巫女。東方の国で御霊を清め鎮める役目を負った家系、巫女と呼ばれる彼女達は、時に聖女として招かれると聞いたことがあります。
聖女であり巫女である者が放つ聖火は、魔を尽く屠る業火となると。
そして氷衣結晶。それは氷の女王とも呼ばれ、永遠に解けることの無い魔性の氷結を治める者。
魔性の氷結はその地を雪原と氷原て閉ざし、外部からの侵入を決して許さない。迷い込んだものは、獣、魔物、雪女に喰われる。
そんな聖女二人と友人だとは、これが人脈の力というわけですね。
「と、いうわけで、みんなでお茶会をしますわよ!」
「私は勉強会と聞いていたのですが、皆さんはもう宿題は終えられたのですか」
「いや、まだだ」
「私は……半分くらい」
どうやら聖女だからといって勤勉というわけではないようです。
まあ、私の原動力はすべてレクトへの愛ゆえに。動機はすべてレクトと再会するためと、動機は聖女らしからぬものですが。
「せっかくの夏休みなのですから、聖女から乙女にクラスチェンジするべきですわ!」
まさかこれが聖女の実状だというのですか。
そんな、まるで女子高生へのイメージみたいなことになっています。私はレクトの妄想の産物なので、今まで理想どおりの行動をしてきましたが……。
「あの、急用をを思い出したので、私はこれで失礼しま……」
「まあお待ちなさいな。せっかく初めてのご対面なのですから、もっと親睦を深めないとですわ!」
「は、離し……力つよっ!?」
「さあさあ、こちらへこちらへ」
あぁ、申し訳ありませんレクト。貴方の妄想である私は堕ちた聖女によって穢されてしまいます。
しかしこの体と心がどれだけ辱められ、穢れようとも、この愛だけはレクト以外の何者にも譲りはしません。
愛しのレクト、どうか私を、愛してください。
「というわけで、私の念願のお友達とのお茶会が叶いましたわ! 乾杯!」
「いやそれもうお茶会で言うことじゃないだろ。宴会だろそれ」
「そこの、ジャム取って」
「…………」
エリザ、シェンファ、シーニー。ここに居る誰もが自然体。
何の違和感もなく茶菓子を頬張り、お茶を飲み、好き勝手に喋っています。
この光景、どこかで見たことがあるような……確か、レクトが視聴していた日常系アニメとかいわれる。
「どうかしたか、白銀の聖女。不慣れなお茶会に怖気づいてしまったか」
「いえ……」
シェンファの顔は勝ち誇ったような笑みに染まっています。
確かに、今のところ私は一人取り残され、三人のやり取りについていけていません。
「そんなに硬くならなくてもいいのに。私と会話している時みたいに気楽でいいんですのよ?」
「それはエリザの方から一方的に話しかけてくるからで」
「ならばこちらから話しかければいいわけだな。では問うぞ。お前の神通力はなんだ?」
日常系アニメ、ではないようですね。
少なくともこんな空気は日常系アニメにはなかったはずです。
「私の神通力は……強化です。自分の体、自分の体に触れているもの、触れたものを強化する」
「なるほど。だが聖女ならそんなことは誰でも出来る。加護という形で」
「私の出来る強化はそれとは別物です。重ねがけをすることでより大きな強化を……」
「ちなみに私の力は王金号令。私の声には神威が宿り、言葉の通りに事象を捻じ曲げますわ!」
初めて聞きました。かなり強力そうな力ですね。
しかしエリザらしい力だと思います。確かエリザは王族の長女ですから、傲岸不遜な性格とよく似合っています。
「なんかすごく失礼なことを思われたような気がしますわ……」
「エリザだっておかしいと思わないか? こんな才覚を持つ聖女の能力が自身や触れた相手を強化するなんて力しかないなんて」
「そうかしら。むしろそこでバランスとっているような気がしますけど、そうでなければ流石に恵まれすぎててドン引きですわ」
エリザの言うとおり、私の加護は過去に例を見ないほど強力なものらしく、また刃などない杖で丸太を切断するほどの強化は規格外だと評されました。
いえ、加護はともかく、杖は私の純粋な技巧なのですが。
「その上、基礎学力までトップクラスだなんて、もはや聖女というより完璧超人って感じだ」
「お褒め頂いて光栄です」
「本当にそう思うなら、お前の力がなんなのか教えてくれてもいいだろ? あのアダマスに目をかけられるほどの力がなんなのかを」
もうこれ以上隠し通すのは無理のようです。
不用意に情報を漏らすようなことはしたくなかったのですが、仕方ありません。
「私の神通力は……神権代行。あらゆる神通力を模倣する力です」
「……はぁ?」
「神通力の模倣です」
「そんなの、ある程度なら誰だって出来るさ」
神通力は各人ごとに違い、その強弱も様々。
しかし、ある程度ならばそれを真似ることが出来ます。
「私にはオリジナルと何一つ遜色なく扱えます。そして一度習得したものはいつでも扱うことが出来る」
「ひゃ、百パーセントのクオリティってことか?」
「その通りです。お疑いでしたら、エリザに聞いてみたらよろしいかと」
人を使うようなマネをするのは気が引けます。
聖女らしからぬ行いに、私は罪悪感を抱えながチラりと窺う。
しかしエリザは、本当に嬉しそうな表情で、いつもより声を張って言い放つ。
「ええ! 私が真似したホーリーフレアを完全に模倣していましたもの!」
「ホーリーフレアって……私のじゃないか!」
ホーリーフレア。いつぞやにエリザに見せてもらった神通力です。
彼女の入部した業火部は、火属性の神通力を持つ聖女の集まりらしく……そういえばそのときにシェンファの名前を聞いた気がしますね。
エリザのホーリーフレアを真似ようとしたら、エリザのものより高火力な炎が出てしまい、危うく学園の中庭で小火を起こすところでした。
「あれは貴方の神通力だったのですね」
「いやぁ、あの火力は間違いなくオリジナルに匹敵するものでしたわ。私の目に狂いはありませんわ!」
「まさか……」
信じられないのも無理はありません。私自身、そんな大それた力がこの身に宿っていようなどと、思いもしませんでしたから。
しかし、これほどの力があれば、レクトを探し出すのもなんとかなってくる気がします。
いえ、むしろこれは私のレクトへの愛想がもたらした奇跡。言わば愛の力なのでは?
そして、どこかでレクトが私を想ってくれていることの証明です。きっと。
「な、なるほど。それほどの力なら、アダマスが目をつけるのも分かる」
「でしょう? こんなにも素敵なライバルに恵まれて、私たちは幸せですわね!」
相変わらずのエリザに、私はつい口が軽くなってしまい、咄嗟に言葉を紡いでしまいました。
「エリザはいつでも幸せそうですね」
「エリザはいつでも幸せそうだがな」
思わずシェンファの緋色の瞳と視線が合ってしまいました。
一瞬の気まずさの後、不思議と笑みがこぼれ、向こうも同じように微笑みます。
「エリザという聖女は本当に物怖じしないだろう。これが王族の器というやつかな」
「そうですね。ただそのおかげで彼女が私の初めての友人です」
「なるほど、色々と納得した」
「えっ、なんですの?」
するとエリザは不思議そうな顔をして私とシェンファを何度も見比べる。
そして一息吐いて微笑む。
「まあいいですわ。お茶を入れなおしましょうか?」
「手伝います」
私とエリザが立ち上がると、シェンファがカップを持ち上げ、シーニーはスッとカップを突き出して言いました。
「あっ、じゃあお願いする」
「感謝」
お茶を入れなおして、お茶会は再開します。
おかわり以外、長く沈黙を貫いていたシーニーが。
「なら、あの勇者に注意して」
「ああ、そうだな。アレには気をつけたほうがいい」
「あの勇者?」
聖女が勇者をアレ呼ばわりなんて、きっとこの空間でしか許されないでしょう。
外で口にすれば聖女への信用が揺らぎ、自国への評価が落ちるとか。
それにしても、聖女からそんな呼ばれ方をする勇者がいると聞いたことが無いのは、ハムズから指摘されたとおり、友好関係の軽視が原因なのでしょう。反省です。
「アルス・ティラノレクス。最強最悪の勇者」
「アルス、どこかで……いえ、思い出しました。一騎打ちでは常勝無敗の勇者様ですね」
私に声をかけた勇者アダマスは、集団戦闘で最終的に勝利するものの、一騎打ちではアルスには勝てなかいというのは私ですら知っているほど勇名です。
「ティラノレクスという名の通り、その性格と素行は暴君そのもの。自ら勇者王を名乗る。あぶない」
「噂では聖女を全員ハーレム要員にしようとしていたりとか、悪魔を滅ぼした暁には自分が魔王として君臨しようとか、神に反旗を翻そうとしているとか」
随分とひどい噂が流れているようです。
しかし、魔王や神への反旗はともかくとして、聖女を全員ハーレム要員にというのは少し怖いですね。
いえ、愛するレクトに寝取られの苦痛など与えるつもりは在りません。
「別に強引に襲われるわけではないのでしょう?」
「半ば強引。他の勇者から聖女を寝取ったとか、決闘で奪ったとか、魅了の聖女を使ったとか」
聖女に人間の魔法は通じません。ということは、聖女の力を借りたと考えるのが自然なのでしょう。
それにしても、寝取ったという言葉が軽く出てしまう辺り、よほど素行の悪さが目立っているようです。
「確かに気をつけたほうが良さそうですわね。アルスはアダマスをライバル視しているみたいですし、アダマスと関わったリスティアに迫るかも……」
「エリザまで。私は絶対に男性と不貞を働くようなことは……そもそも、好きでもない相手に純潔を捧げたりはしません」
これだけははっきりと言っておかなければ。私のレクトへの愛の誓いを込めて。
これを破ったときは、きっと私は、私を許さないでしょう。殺してしまうほどに。
「リスティア、顔が怖いですわ」
「……あっ、失礼しました」
「その感じ、もしかしてクリスティアにはもう想い人がいるのか?」
シェンファの問いに、エリザとシーニーの視線が私に集中します。
確かに居るのですが、まさか前世の恋人などと言って信じてもらえるとは思えません。ここは……
「もしかして、村に恋人が?」
「いえそれは……そうですね、そんなところです」
「こ、これは、まさか暫定トップの聖女でも色恋沙汰を抱えていたなんて」
「暫定て」
まだ見つかっていない人間が好き、だなんてことも言えないので、エリザの妄想に便乗させてもらうことにしました。
「まっ、安心なさいな。いざとなったら私たちが守りますわ!」
レクトの見ていた薄い本で似たような展開を見た気がします。確かテニサーの彼女がどうとか。
内容は詳しく知りませんが、あれを見てしまったせいで一週間は寝込んだのです。レクトは優しくて繊細な人ですから。
「それで、想い人はどういった方ですの?」
「えっ、それは……」
まずい。このままでは……いえ、むしろこれは、レクトを探してもらえるよう頼める好機では。
どうにか言い方を考えて、レクトを……いえダメです。レクトが私の知っている容姿のままこの世界に来ているとは限りません。それを言い出したらその辺りに飛んでいる虫かもしれないと言うレベルの話ですが。
いいえ、ここは前向きに考えるべきでしょう。そうでなくては。
外見はともかく、性格くらいなら参考になるはず。
「分かりました。ですが、性格面だけでよろしいですか。外見で特定されると少々……」
「ああ、プライバシーですものね。分かりましたわ。そこで妥協しましょう。今は」
今は、という言葉に強い不安を覚えましたが、とりあえず了承してもらえたようです。
では、いきます。
「彼は、人間嫌いな人です」
「に、人間が嫌い?」
各人の反応は一様にして同じ、微妙な苦笑が混じる。
きっと彼は、誰からもこういう反応をされるでしょう。
それでも、いえだからこそ、私は彼を愛しています。私が愛するに足る理由です。
「彼にとっては、全ての人間が嫌われるべき人間なのです。嫌うに必要のある存在なのです」
「どうしてそこまで、人間を嫌っている?」
「……もう少し正確に言うならば、彼が尊敬する人間というのが存在しなかったのです。それこそが彼が人間を嫌う、一番の理由かもしれませんね」
彼が尊敬出来る人間なんて、誰一人として存在しなかった。それこそが、答え。
「子供は命を粗末にし、小さな虫さえ弄ぶ。大人は意地汚く、誇りも信念もなく操り人形のように自分を安売りする。生きるためではなく、活きるためでもなく、ただ生活するためだけに。生活を維持するためだけに、何もかもを求めず、望まず、不条理に目を瞑り、理不尽を撒き散らす」
両親は彼に育まなかった。法に捌かれない程度に育て、しかしそうでなければほぼ一切の恵みは与えられなかった。
友人は彼と親しくなかった。共に理想や野望を共有することなどできず、誰も彼もが彼を置き去りにして。
世間は彼に優しくなかった。ただ穏やかに生きたかった彼を生かさず、いっそ活きんとした彼を活かせず、死ぬことすら許さず、理想もなく現実を掲げ、醜くも辛うじて死なないことだけを強要した。
彼の貴重な人生を、両親が搾取で食いつぶし、社会が搾取で食いつぶし、それに抗うために団結する戦友すらおらず……
何度想いを挫かれた? 幾度諦めさせられた? どれほど傷付かれ、いかほどに死に損なった?
そんな彼が一人も殺さず、自らを隔離し、妄想に興じ、私と愛し合う。それだけで良かっただなんて
その報われない優しさこそが、その誰にも勝りながらも誰にすら勝てない強さこそ、私が愛するに相応しい。
私が愛することでしか、彼は報われません。
妄想の身である私こそが唯一、現実の存在が持たない彼の救いをもたらすことが出来ます。
そうやって私たちは生き永らえてきました。あの瞬間まで。これを奇跡と、愛の力と呼ばずしてなんと呼べばよいか。
「彼は私だけを愛していました。私の愛だけを欲していました。彼を愛せるのが私だけだから、彼だけが私を愛してくれるから、私も彼を愛します」
「じゃあ、その彼が貴方を愛さなくなったら……他に愛しいものができたら?」
「いいえ、それはありえません。なぜなら」
私は彼の妄想だから。長い時間をかけて、彼と二人きりで愛を育んできたから。
私はカップにそそがれた紅茶の水面に、彼の顔を想い描きながら言い放ちます。
「私が彼を一番愛していますから」
レクトは愛してくれる者を愛想と努力します。
ならば必然的に、彼を最も愛している私こそが、最も愛される。
「気分が変わりました。彼の良いところならいくらでも言えるみたいですね」
「あの、いえ、もう大丈夫」
「ああ、よく分かった。分かったから……」
「お茶が冷めてしまいましたね」
私は立ち上がり、三人を見て微笑みます。
「お茶を入れ直してきますね。その後に、また再開しましょう……お茶会を」
「「はっ……はい」」
「楽しみですわね!」




