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16機目 異世界でフォトグラファー

 

 

 

 首を捻っていたマキナは、ふとある事に思い至った。

 

 「もしかして……」


 『ステータス』画面の『飛行付属品収納』を選択すると、翼とゴーグルが消えた。飛行付属品が消えた事を確認したマキナは、今度は『飛行付属品装備』を選択する。

 すると、再度現れた飛行付属品は変化していた。


 「一度収納しないと装備は更新されないのか……」


 腰の翼が2枚から1枚に変化しており、頭のゴーグルもメガネ型からスノーゴーグル型へ変化していた。


 「単葉の金属翼でも、初期型の主翼断面設計が未熟な空気抵抗が大きい奴だな。一応、航続距離は伸びるかな?」 


 マキナは軽く翼を叩きながら、進化した飛行付属品を評価する。劇的な性能向上はしてい無いであろうが、使い勝手は向上するかと納得した。

 マキナは次に、変化した頭の上のゴーグルの機能を掛け調べる。


 「うーん、進化し過ぎてないか?ナイトビジョンとサーマルビジョンが複合した、デジタルビジョンは良い?として、望遠ビジョンは焦点を合わせ様としたら自動動作する視線認証式か?」


 翼の進化具合に対し、ゴーグルの急速な進化具合に引き気味になる。画像処理されているのか、ゴーグルを掛けた視界は昼間と大差無く、遠方の対象物を注視すると、瞬時に望遠画面が表示される。 

 ゴーグルを外し、動揺を抑える為に深呼吸をして息を整える


 「ま、まぁ、便利な事に違いは無いか。それに新しいスキルも付いたみたいだし、そっちを調べ様。うん」


 『ステータス』を開き、新スキル『スクリーンショット』を選択する。 

 『スクリーンショット』を起動すると、『撮影』『保管庫』『編集』『印刷』の4項目が表示された。


 「……デジカメか?」


 『スクリーンショット』スキルの充実振りに、マキナは言葉に詰まる。


 「試しに撮ってみるか」


 『撮影』を選択すると視界が一瞬暗転し瞬く。するとフォーカス枠は消え、撮影完了の文字が一瞬視界中央に浮かんで消えた。


 「どうやって撮影した奴を見るんだ?ああ、『保管庫』か」


 『スクリーンショット』を選択し『保管庫』を開くと、先程撮影した写真がナンバーを振られ保管されていた。写真に触れると画面が展開する。


 「中々高精細な写真だな。月明かりしか無いのに、肉眼と殆ど変わらない位バッチリ写ってる」


 月明かりに照らし出される岩場と言う、中々幻想的な一枚が映し出されていた。


 「この充実具合だと『編集』はっと。げっ!」


 『編集』を開くと、多数のプロ仕様と思われる画像編集ツールが表示される。


 「こんなの量のツール使い熟せる自信は無いぞ」


 マキナは試しに先程の写真を使い、編集操作を試してみる。適当に幾つかのツールで写真を弄って行くと、とあるツールの存在に気付いた。 


 「ん?エフェクト加工?……これって」


 エフェクト加工のツリーを展開すると、加工の一覧が表示された。幾つか画像を使って加工してみると、油絵風や水彩画風等の写真に変わった。


 「……これを売れば金策になるか?」


 加工された画像を眺めていたマキナの口からポツリと漏れる。一流の絵画作品からは程遠い出来ではあるが、インテリア作品としては十分通用すると思った。

 その為にも『編集』を一時中断し、『印刷』を開き検証を行う。


 「《印刷用紙を選択して下さい》か。『アイテムボックス』に入ってるのを指定出来るのかな?」


 マキナは試しに『アイテムボックス』内の紙を印刷用紙に指定してみるが、認証はされなかった。


 「と言う事は」


 『アイテムボックス』から紙を一枚取り出し、手に持ったまま印刷用紙指定をしてみると、すぐに認証された。印刷縮小倍率と縦横比を用紙合わせに指定し『印刷』を実行する。

 手に持っていた用紙が光を発し、紙の中央部分から絵が浮き出る様に転写され始めた。『印刷』は数秒で終了し、印刷終了の通知画面が表示される。


 「もう少し良質で大きな紙を使えば、絵画って言っても一応通じるかな?」


 出来上がった写真は紙質が粗い為、些か安物感が漂うが写真自体の出来はそこそこの物だとマキナは判断した。

 

 「よし、取り合えず次の街で売り出してみるか。上手く行けば、紙代だけで大儲け出来る」


 『印刷』した写真を月明かりに翳しながら眺め、マキナはひょんな事から手に入れた金策の手段を喜んだ。

 

 

 

 

 

 朝日が稜線から顔を出す。マキナは朝日が照らし出す光景を『スクリーンショット』で何枚も撮影する。

 

 「ふう。朝焼けの風景写真か、中々良いんじゃないか?」


 撮影した写真を確認しながらマキナは、被写体を求め岩場を後にし街道を目指す。写点の高さや角度を変え草原や木々、山並みを『スクリーンショット』で撮影しながら、前夜の様に一気に駆け抜ける事はせず、顔を忙しく動かしながらの練り歩く。 


 「視点を一つ変えるだけで、何とも感じなかった草原の様子が一変する物だな」


 精神的に余裕が無かったのも事実ではあるが、目に見える光景を草原と言うカテゴリーで見てしまっていた事をマキナは実感する。


 「こう遣って見てみると、旅路だからと駆け足で通り過ぎるのは勿体無いな」


 昨日モンスターの集団を大量殲滅したとは思えない程に、隣街までの旅路は穏やかな物で雲がゆっくり流れる様を観察しながら草原の中を歩く。

 時折『MAP』で方向を確認しながら穏やかな気持ちで草原を歩いていると、幅広く地面が踏み固められた街道が姿を現す。

 

 「良し、街道に出た」


 マキナは無事街道に到着した事に安堵し、両手を挙げながら体を伸ばしストレッチをする。


 「ふう。ああ、そうだ。ショルダーバックも出して置いた方が良いか」


 手ぶらで街道を歩く姿は流石に不審がられるだろうと思ったマキナは、『アイテムボックス』からショルダーバックを取り出し肩からかける。


 「よし、行くか」


 ジグバラの街とは反対方向に街道に沿って歩き出す。馬車の轍があり歩きづらくはあるが、注意して歩く問題ない。


 「村までは徒歩で3時間位ってケインさんが言ってたな。この位置だと1,2時間って所かな?」

 

 街道からジグバラの街の石壁が見えない以上、数キロは離れている筈とマキナは考えた。人の歩速を時速4kmとすると隣村までの距離は12kmと成り、残り7,8km前後となる。


 「まぁ、急ぐ訳でも無いしのんびり進むか。商売用の素材も集めないと行けないしな」


 暫く街道沿いに歩くと、轍に嵌り擱座している馬車を見つけた。持ち主らしき数人の人々が、何とか馬車を動かそうと力の限り押している。

 荷物を満載した大型馬車は自重で轍に深く食い込み、数人で馬車を押しても僅かに前後に動くだけで轍から抜け出せそうな気配はなかった。

 

 「あの、大丈夫ですか?」


 マキナが声を掛けると、馬車を押していた人々は顔を上げ直ぐに俯き溜息を漏らす。


 「……」

 「ああ、すまない」


 イキナリの溜息を突かれムッとした雰囲気を出すマキナに、馬車を押していた人の中の初老の男性が謝罪をする。


 「見ての通り馬車が轍に嵌ってしまってね。君が声を掛けた時、手助けしてくれる人が増えると思ったものだから、つい。いや、行き成り溜息を付いてしまって済まなかった、お嬢さん」

 「いえ」

 「しかし……流石に君に手伝って貰う訳にも、行かないか」


 マキナの姿を上から下にと一瞥した男性は、残念そうに再び溜息を漏らす。


 「馬車を押す手伝い位なら構いませんよ?」

 「いや、流石に君に手伝って貰っても無理だろう。仕方ない、一度馬車から荷物を下ろすぞ!」

 「ジークさん、その方法だと轍を抜けるのに何時間も掛かりますよ?」

 「では、他に馬車を動かす方法があるのか?あるなら採用するぞ?」

 「……ありません」

 「そうか、では早速始めるぞ。ああ、降ろす量は最小限にな」


 ジークと呼ばれた初老の男性は、馬車を押していた他の男性達に荷物を降ろす様に指示を出す。無視される形になったマキナは、溜息を一つ付いた後ジーク達の動きを無視し馬車の後ろに片手を当てる。


 「お嬢さん、今から荷下ろしをするので近づかれると危険」

 「よいしょっ、と」


 マキナがゆっくり手に力を加えながら馬車を押すと、ジーク達が数人掛りでビクともしなかった馬車が簡単に轍から脱出する。

 その現実離れした光景を見たジーク達は口を大きく開いて驚き、マキナは手についた埃を払う様に手を打ち合せていた。


 「動きましたよ?」

 「え、あ、う?」

 「どうしました?」

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 不思議そうに首を傾げるマキナに、ジークは片手を前方に掲げたまま深呼吸をして乱れた息を整え、一泊間を置いて質問を投げかけた。


 「い、今のはお嬢さんが?」

 「?はい、見ての通り馬車を押して轍から脱出させましたが?」

 「そうか、俄かには信じられんな」


 ジークは目頭を揉み馬車を見るが、確かに車輪は轍から抜け出していた。他の男性陣もジークと同じ様に、信じられないといった面持ちで馬車とマキナを見直す。


 「しかし、まぁ、何だ?お嬢さんの御陰で助かったよ」 

 「いえ、大した事はしていませんよ」

 「ははっ。大した事はない、か」


 ジークはマキナの物言いに、思わず苦笑を漏らす。大の男数人掛りで無理だった事を、大した事は無いと言うとはと。


 「充分大した事なんだがな。いや、兎も角ありがとう。御陰で時間を無駄にせず済んだ」

 「?何かお急ぎで?」

 「?お嬢さんもジグバラの街から来たのなら知っているだろ?モンスターの集団が数日中には街を襲うと言う話を。我々は隣街まで避難する旅商人さ」

 「ああ、成程」


 マキナは自分が街を出た理由を思い出し、ジーク達が何故先を急いでいるかを理解した。そして、既にモンスター集団を半壊させたマキナにとって、モンスター集団の襲撃は優先度の低い関心事である。 

 

 「昨日の夜、門が締まるギリギリに私達が最後に街を出たんだ。村で一晩明かした後、隣街まで行くつもりだったんだが、一斉に馬車が移動した為に街道が予想以上に荒れた様でね。私の馬車は轍に嵌ってしまい、立往生してしまった」

 「それは大変でしたね」

 「全くだ。急いで離れないと行けないと言うのに」

  

 ジークは眉間に皺を寄せながら、何度目に成るか分からない疲れた様に溜息を吐く。

 

 「まぁ、お嬢さんの御陰で助かったんだが。そう言えばお礼が未だだったな。私に出来る事なら何でも言ってくれ、出来る限りの事はさせて貰うつもりだ」

 「いえ。大した事もしていないのに、お礼なんて貰えませんよ」

 「いや、あのまま立ち往生をしていれば危なかったかも知れないんだ。言ってみればお嬢さんは、我々の命の恩人とも言える。是非お礼を受け取って貰いたい」


 お礼を遠慮するマキナに、ジークは一歩距離を詰め是非にと言い募る。ジークの熱意に根負けしたマキナは、ショルダーバックから或物を取り出す。


 「そう言えば、ジークさん?は商人でいらっしゃる様ですが、何を取り扱う商人なんですか?」

 「ああ、申し遅れました。私、ケルセの街で装飾品を扱う商人をしていますジークと申します」

 「マキナです。それでジークさんは、絵画を鑑定できますか?」

 「絵画ですか?ええ、一応」

 「では、これを鑑定して貰えませんか?ジグバラの街で手に入れたんですが、イマイチ価値が分からなくて」

 「お預かりします」


 マキナは水彩画風に加工した写真をジークに手渡す。朝日が稜線から顔を出した瞬間の写真を加工したものだ。写真を受け取ったジークは、真剣な眼差しで写真を品定めする。


 「私も初めて目にするタイプの絵画です。水彩画の様ですが何か違いますね。ですが、図案自体は大変見事です。若干使用されている紙の質が悪いのが気に成りますが」

 「幾ら位に成りますか?」

 「そうですね。作品自体は良い物ですが、初めて見る作風の絵画ですから。……銀貨10枚から25枚と言った所ですね、紙の質が良ければもう少し値は上がると思います。好事家の方が欲しがれば、数倍の値で取引される可能性もあります」

 「そんなに、ですか」


 予想外の高評価にマキナは驚く。何せ、原価で言えば銅貨1枚分程でしか無い。


 「買取りましょうか?」

 「良いんですか?」

 「ええ。好事家の方との伝手もありますし」


 ジークは写真を受け取り、色を付けた代金をマキナに手渡す。その額は銀貨50枚。


 「良いんですか?」

 「ええ、助けて頂いたお礼ですよ」

 「そうですか。ありがとう御座います」


 マキナとジークが話している間に、ジークの馬車は出発の準備が整った。


 「では、お嬢さん。本当に有難う御座いました」

 「いいえ。此方こそ、絵画を高く買い取って頂き助かりました」

 

 マキナはジークの馬車が出発するのを手を振りながら見送った。

 ジークの馬車が見えなく成った事を確認し、マキナはガッツポーズを取り喜ぶる。


 「よっしゃ!濡れ手で粟のボロ儲け!」 


 マキナは写真が元値の5000倍に膨れ上がった事を大いに喜ぶ。金策が成功し、定期的な収入源を確保出来る見通しが立ったからだ。


 「よし!このままフォトグラファーを目指すか!『スクリーンショット』を活用すれば、収入源に成りそうだしな!」


 マキナは前途明るくなり始めた異世界生活に心を躍らせた。

 

 

 

 

 

 名前:マキナ

 種族:機人 TYPE monoplane

 称号:フォトグラファー

 技能一覧

 ユニークスキル:メニュー(ステータス、アイテムBOX、MAP、LOG、設定)

 固有スキル:鉱物変換、飛行、武器生成、異世界文字言語、スクリーンショット

 

 

 

 

 

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