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15機目 一方的な蹂躙


PV 10000突破しました!




 

 

 

 草原を走り街道から離れたマキナはある程度の所でスピードを緩め、岩場っぽく成って来た所で止まった。


 「よし、ここまでくれば大丈夫か」


 岩場に到着した時には日も大分陰り、後30分もしないで辺は闇に包まれるだろう。マキナは辺に転がる拳大の岩を拾う。崖から落ちてきたのか、手頃な大きさの岩が沢山散らばっていた。


 「爆弾替わりに成れば儲けもんだな」


 生成した弾薬だけでの機銃掃射では足りないだろうと考え、マキナは爆弾替わりに成る物として岩を拾っていた。

 マキナは黙々と、岩を次々『アイテムボックス』に収納していく。拾い続けていると日も落ち、手頃な大きさの岩があたりから無くなったのでマキナは岩拾いをやめた。


 「大小あわせて、大体200個って所かな?モンスターの密集地帯でバラ蒔けば、そこそこいけるか?」


 岩は通常の航空爆弾と違い、信管も何も無いので目標に直撃させる必要がある。やってみなければ分からないが、数少ない銃弾だけよりは気休めにはなるとマキナは思うことにした。


 「さて、と。ぶっつけ本番だけど、夜間飛行と洒落込みますか」


 攻撃準備が整ったマキナは、最大の難関に挑む事にした。只でさえ飛行経験が少ないのに、初の夜間飛行でモンスター集団への空襲任務だ。緊張でマキナは唾を呑む。

 『アイテムボックス』にショルダーバックを収納し、『ステータス』を開き『飛行付属品装備』を選択する。翼とゴーグルが出現し、準備が整う。ゴーグルを目に掛けると各計器が表示され、『飛行』スキルの使用承諾と共に『夜間飛行』機能への切り替え承諾を求める通知画面が表示される。

 

 「『夜間飛行』機能……暗視システムって事か?」


 『夜間飛行』通知画面のYESを選択すると、視界が一瞬で緑色のナイトビジョンに切り替わる。


 「『飛行付属品』を一々展開しないといけないのはネックだけど、夜間行動には便利極まりないな」


 先程まで月明かりだけの薄暗かった景色が一変した様を見、マキナは親切な機能に呆れ気味に感心する。

 暫し辺りを見渡し、マキナはナイトビジョンの調子を確かめていると別の機能を見付けた。ゴーグルの左側のレンズを弄っていると視界が切り替わりサーマルビジョンが表示され、右側のレンズを弄ると望遠ビジョンが表示された。 

 

 「……デジタルビジョンもあるんじゃないのか?」


 余りの親切具合が疑心暗鬼を生む。ゴーグルを更に調べてもそれ以上の機能は発見出来なかったが、進化次第では新たな機能が発生するんだろうなと棚上げしマキナは達観した。

 色々予想外の事は来たが、マキナは頭を振るって気持ちを切り替える。


 「行くか」


 マキナは意気込み、『飛行』スキルの使用承諾通知画面のYESを選択する。視界の中央にREADYの文字が一瞬表示され、胸のペンダントが輝きを増した。

 マキナは石拾いでそこそこ綺麗になった岩場を全力で走り出し、ある程度スピードが乗った所で大きく跳躍する。視界の出力計の数値が上昇し100%を示し、速度計や高度計も同じく数値が徐々に上昇して行く。


 「ふう、離陸は成功。それじゃあ、人に見付からない高度まで上がるかな」 


 マキナは出力を維持したまま空気を切り裂きながら高度を上げていく。3分程で高度1000mまで上昇したマキナは、出力を絞り水平飛行に移った。


 「こうやって見ると、人工の明かりが少ないな」


 マキナはナイトビジョンを切り、上空から異世界の夜景を眺めていた。自身が立てる風切り音が聞こえる以外、全く無音の世界。夜でも光り輝く日本の夜景と違い、月明かりに照らされるだけの異世界の夜を改めて実感する。眼下に広がるジグバラの街以外、これと言った明かりは見当たらない。

 そのジグバラの街にしても明かりは乏しく、明るいのはモンスター集団を迎撃する為の準備を行っている西門付近の外壁位で、壁に沿う様に配置されている松明が明々と辺りを照らしていた。


 「モンスター集団がいるのは、西門の向こうの森の中って言っていたよな」


 ナイトビジョンとサーマルビジョンを起動し直し、『MAP』で方向を確認した後マキナは森へ向けて飛んだ。

 

 

 

 

 

 暫く飛ぶと草原地帯を超え、森の上空へ到達した。


 「何処に居るんだ?集団で進行しているのなら、それなりの痕跡がある筈なんだけど」


 静かな森の様子にマキナは困惑し、焦り気味に痕跡を探す。SPの制限がある為、然程長い時間飛行し続ける訳には行かない。


 「居た!」


 サーマルビジョンに多数の熱源体が映った。見つけた熱源を中心に、上空から望遠ビジョンで対象の姿を確認。マキナは森の上空を旋回しながら、熱源反応があった他の集団の動向も確認を取る。

 結果、幾つかの集団がジグバラの街を目指し進行しており、目標のモンスター集団と斯くてして問題なさそうだった。


 「五百体前後の本体の他に、数十体から二百体前後の5つの集団が分かれて進行中、か。モンスター達の中に、統率者が居るみたいだな」


 偵察の結果、モンスター達の行動は単純な集団突撃では無く、稚拙ではある物の組織だった進軍行動であると判明。統率者の存在が浮かび上がってきた。

 マキナはモンスターの集団を飛行時間や弾薬に制約がある関係で、一人で倒す事は困難であると結論付け次善策を考査する。そして。


 「本体は街の連中に任せて、他の集団を狩った方が良いか。ケインさんも指揮官は戦バカだって言っていたし、正面からなら何とか成るか」 


 援軍との挟撃をと全力出撃を考えている指揮官がいる以上、伏兵を処理しておく方が良いとマキナは決めた。

 又、下手に本体を攻撃しモンスター集団が離散し撤退すれば統率者が居る以上、次回は今回以上の数を揃え進撃してくる事も考えられる。

 その為、今回のモンスター集団は出来るだけ今回で処理しておくべきとも考えた。


 「本体集団をAアルファとして、他の各集団をBブラボーCチャーリーDデルタEエコーFフォックスロットと識別呼称。A集団は放置、BCDEF集団を機銃掃射と岩石爆撃にて襲撃する。飛行限界時間を考慮し、作戦時間は一時間。作戦終了後は、速やかに撤退へ移行」


 緊張するマキナは深呼吸をした後、ゲーム風の行動予定を口に出しながらテンションを上げる。

 『アイテムボックス』からlMG08を取り出し初弾を装填、視界にはレティクルが表示された。


 「作戦開始!」


 外縁部の集団目掛けて、高度を落とし速度を上げながら突入を開始する。 

 

 

 

 

 

 初めに違和感を感じ取ったのは、聴覚の優れるラビット系モンスター達だった。彼らは遠くから聞こえる風切り音を聞き取り、一斉に上空へ顔を向ける。

 一体のラビットが上空で小さな光が明滅したと感じた瞬間、上空から彼ら目掛けて何かが降って来た。周囲に土埃が舞い上がり、彼と共に進軍していた仲間のモンスター達が一瞬で血霧に変わる。その姿を呆然と見ていた彼が血霧に変わる瞬間、雷の様な轟音が彼の耳に届いた。

 雷が去った後の彼らが居た森は直前の出来事が嘘の様に静寂に包まれていたが、ズタズタに薙ぎ払われた木々に僅かな肉片と凄惨な血化粧が施されている光景が夢幻では無い証明だった。

 

 「D集団排除完了。B集団へ移動を開始する」


 D集団の上空を旋回しながら戦果を確認し、マキナは淡々とした口調で現状報告をしながらlMG08の弾倉を手早く交換する。交換終了後、機銃掃射の為に下げていた高度を再び上げた。


 「B集団を捕捉。上空を一度旋回後、攻撃に映る」


 B集団の上空を旋回しながら観察すると、豚の様なモンスターだけで構成された200体程の集団だった。大きな剣を持った豚が先頭を歩き、若干乱れてはいるが獣道を隊列を組みながら進軍していた。 


 「あれって、オークか?まぁ、何でも良いか。取り合えずアレも殲滅対象だ。隊列を組んでいるなら、かえって殲滅し易い」


 マキナは旋回しながら、B集団の隊列後方に周り込む。後方に回り込むと同時に、降下を開始し機銃掃射の準備を整える。

 十分に高度を落とし、射程に入った瞬間マキナは引き金を引いた。lMG08は轟音を立てながら、嵐の様に銃弾を吐き出し続ける。隊列後方からの奇襲に、B集団は混乱しマトモな対応は出来なかった。

 マキナは混乱するB集団に容赦無く銃弾を打ち込み続け、銃弾が無くなると同時に上昇し戦域を離脱する。


 「銃弾の消費が激し過ぎる。ホンの数十秒で、1帯使い切ったぞ」


 マキナはlMG08の弾倉を交換しつつ、余りの弾薬消費量に思わず愚痴を漏らす。現状では補給の目処が立っていない鉱石を、湯水の如く消費する機関銃に軽く目眩がした。


 「砲身も冷却しないといけないから、次は岩石爆撃だな」


 湯気を上げ加熱した砲身を横目で見ながら、マキナは岩石爆撃の準備をする。 『アイテムボックス』を開いて収納した岩石を選択し、何時でも具現化可能な状態にする。


 「先頭の偉そうなオークは狙わなかったのは正解だったな。B集団は離散もせずにアレを中心に再集結中っと」


 マキナが先ほど襲撃したB集団を見ると、集結中の様子が見て取れる。マキナの狙い通り、敢えて初撃を外した指揮官格のオークが、再度の襲撃を恐れ密集隊形に残存モンスターを再編していた。


 「空爆には格好の的だな」


 マキナは旋回し、B集団から距離を空け助走距離を作った。程良い助走距離を作ると、出力を100%まで上げ加速を開始する。

 浅く角度を付け降下を開始し、B集団との距離が一定に達した瞬間『アイテムボックス』の岩石を実体化した。実体化した百数十の岩石は、マキナの飛行速度エネルギーを保持しており、落下の重力加速も受けながら更に速度を上げながらB集団目掛けて落下していく。タイミングをズラし連続実体化させられた岩石群は、クラスター爆弾の様に着弾範囲を広げていく。十数秒の自由落下の後、岩石群はB集団に落着した。 

 岩石が直撃した指揮官格のオークや周辺のオークは、頭や体の一部を粉砕され血潮を撒き散らしながら死亡し、直撃を免れたオークも砕けた岩石の破片が体に食い込み重傷を負う。僅か十数秒の出来事で、B集団はその戦力の殆どを失い壊滅した。

  

 「空爆成功。B集団の無力化したと認。F集団へ移動する」


 血の海に沈んだB集団の上空を一度旋回した後、マキナはF集団へ高度を上げながら目掛けて移動を開始した。

 その後は同じ様にF集団C集団E集団と順調に殲滅していき、マキナは作戦時間内に無事に全ての別集団を殲滅した。


 「ふぅ。作戦終了。これより当該空域を離脱、出撃地点へ帰還する」


 緊張で息苦しかった空気を吐き出したマキナは、心持ち軽やかになった気がした。『アイテムボックス』にlMG08を収納し、高度を1000mまで上げ『MAP』を開き飛び立った岩場の方向を確認し方向修正を行う。

 

 

 

 

 

 

 SP使用限度制限の警告通知が表示され少し経った頃、岩場が見えたマキナは着陸態勢を取る。徐々に速度を落とし、石拾いをして作った急増の滑走路目掛けて降下を開始した。2度目の着陸と有り、1度目ほど緊張はしなかったが地面が近づき生唾を飲む。  


 「残り2m……1m……接地!」


 岩場手足場は悪いが、マキナは上手い具合にバランスを取りながら徐々に慣性を打ち消していく。数メートル程歩いた所で慣性が消え足が止まった。


 「着地成功」


 マキナは大きく息を吐き安堵する。辺りを見渡し確認した後、近くの岩に腰を下ろす。


 「あれだけモンスター削っておけば、ジグバラの街も大丈夫かな?」


 モンスター集団の総数の半分を殲滅無いし行動不能にしたと、マキナは確信していた。ジグバラの街の戦力と援軍の数次第ではあるが、挟撃が上手く行けば殲滅無いし撃退は可能だと思われる。


 「これ以上の手助けは無理かな?鉱石の補給が無い状況で、これ以上の戦闘行為はチョットね」


 『アイテムボックス』を開き鉱石の残量を確認する。既に功績の残りは、初期値の半分に迫っていた。思わずマキナは溜息を付き『アイテムボックス』を閉じる。


 「早めに、何処かで鉱石を補給しないと。ああ、でもそうなると金策もしないと」


 強力ではあるがコストパフォーマンスの悪い装備に、マキナは天を仰いだ。 


 「機関銃担いで銃弾バラ撒く戦闘なんて、一個人がする様な行為じゃないよ。銃を主装備にする物語の主人公の資産状況って、ドンなんだよ?」


 余りの金食い虫な装備に、止めどない愚痴が漏れる。暫く愚痴を漏らし続けたマキナは最後に大きな溜息を付いた後、緩慢な動きで『LOG』を開く。

 そこには多数のモンスター討伐記録と、数度の『マキナの獲得経験値が一定に達した』と『飛行付属品が進化した』があり、『獲得経験値が規定ラインに達しました。飛行付属品がクラスチェンジします』と表記されていた。


 「『ステータス』も大分上がってるな。ふむ、初期値の大体3倍か。って、ん?」 


 『ステータス』を確認していると、オカシな表記を発見した。 


 名前:マキナ

 種族:機人 TYPE monoplane

 称号:未修得

 技能一覧

 ユニークスキル:メニュー(ステータス、アイテムBOX、MAP、LOG、設定)

 固有スキル:鉱物変換、飛行、武器生成、異世界文字言語、スクリーンショット

 

「TYPE monoplaneって、単葉機?」


 マキナが腰の翼を見るが、翼は2枚のまま変わっていない。首をかしげつつ再び『ステータス』画面を見直すが、TYPE monoplaneの文字に変化は無い。

 暫くの間、静寂に満ちた岩場でマキナは幾度と無く首を捻り続けた。 

 

 

 

 

 

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