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ナイフ女

ああ・・・腰が痛いな・・・洗濯機の使い方も知らないくせに、サムは家事や炊事は控えろって言ってくれるけど、私の代わりにやってくれるってわけじゃないし。


私『よいしょ!!うっ・・・やっぱりキツイな・・・。』


最近、仕事が減っている麻里を家政婦として雇おうかな。でも、シャツがシワくちゃになりそう。


ガチャ・・・。


佐村『ただいま。』


私『えっ、帰ってくるときは電話してって言ってるじゃない。お弁当は?』


佐村『・・・忘れた。』


私『忘れたって・・・もう、作ってあげないよ。』


佐村『じゃあ、もう作るな。』


サムは寝室へ逃げてった。


私『・・・1週間分の洗濯物があるんだった。』


なんで、怒ってるんだろ。人見と喧嘩でもしたのかな。そのとき、私は違和感を感じた。


私『んっ!?』


くんくん・・・くんくん・・・いらいら・・・いらいら・・・。


ガチャ!!


私『サム!!なんで、煙草吸ってんの!!』


佐村『・・・。』


私『やめるって、約束したじゃない!!産後ならまだしも、まだ4ヶ月半なのよ!!』


佐村『やめてから、こっちもいらいらしてたんだよ。もう耐えられない。』


サムは私が部屋に入っても、煙草をプカプカ。


佐村『お前はこれよりヤバいものを吸ったり、商売に使ったりしてたんだろ?』


私『なんで、そんなこと言うの・・・そんな生活から抜け出したくて、私・・・。』


佐村『馬鹿な子供が産まれても俺のせいに・・・。』


バチンッ


私『・・・。』


ガチャ・・・。


佐村『・・・痛ぇ。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


医者『どうですか?5カ月ともなると、体調も、安定してきたでしょ。』


私『は、はい・・・まぁ、体調は・・・ははは。』


体調はかなり改善されてきたけれど、サムの機嫌がずっと悪い。私のせいなのかな・・・週刊誌の情報だけで疑っちゃったから・・・毎日、真面目に帰って来てくれてるのに。


医者『そろそろ、赤ちゃんの動きがわかるようになりますよ。』


私『本当ですか!!』


医者『はい。だから、出来るだけ笑顔を忘れないようにね。』


私『笑顔・・・。』


医者『精神論みたいですけど、赤ちゃんはお母さんの気持ちが分かりますから。』


私『夫との喧嘩とかは・・・?』


医者『感じちゃうでしょうね。赤ちゃんに気を遣わせないように、気をつけましょう。』


私『は、はい・・・。』


赤ちゃんに気を遣わせないようにか・・・どうしよ・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガチャ・・・。


佐村『・・・。』


私『お、おかえり。』


佐村『あっ、それ・・・。』


私『この間、買ってくれた服・・・お腹も張ってきたから・・・似合う?』


佐村『こっちは曲が出来なくて、絶不調なんだよ。』


私『ごめん・・・もう、家で曲書いたら?』


佐村『えっ?』


私『だって、最近帰ってきたら、眠りにつくまで機嫌が悪いじゃない。』


佐村『・・・ちょっと、タチの悪いストーカーに付きまとわれてるんだよ。』


私『なんで、黙ってたの!?』


佐村『お前を不安にさせるだけだろ。』


私『2週間も不機嫌だったことの方が不安だったよ・・・。』


佐村『そうか・・・ボツにした数曲でミニアルバムを作るから、時間的に余裕はあるんだ。』


私『私のために曲を書き直すんでしょ?一緒に考えようよ。』


サムはホッとしたような表情をした。悩みがあるなら相談してくれればいいのに。溜め込んじゃうのが男の悪い癖なのかな。下ネタじゃないよ。


プルルルル・・・プルルルル・・・


佐村『・・・。』


私『出なよ。』


ピッ


佐村『なんだ・・・。』


佳奈『歌詞を送ったんやけど届いた?それに、曲つけたら、ええやん。曲が出来たら、私の名前も入れてや。』


佐村『そうか。曲をつけることが出来たら、作詞に名前を使ってやる。じゃあな。』


ピッ


佐村『手紙来てたか?』


私『差出人がわからないのが5通・・・怖いから開けてないよ。』


手紙の封を開けると、猟奇的な詞と数年前に週刊誌に掲載された芸能人の遺体の写真が入っていた。


ー妊婦の腹を割いたら、人形が泣いていたー


私『・・・。』


佐村『まるで、脅迫みたいだな。』


私『ね、ねぇ・・・引っ越そうよ・・・住所もバレてるって・・・教えたの・・・?』


佐村『安易に教えるはずないだろ。こんなのが届いたら、もうお前を1人に出来ないな・・・2年前の件もあるし。』


私『はあ・・・せっかく安定期に入ったのに・・・警察に届けたら?』


佐村『有名税って言われるだけだ。』


サムはポケットの煙草を取り出して、火を点けようとした。


私『吸うの・・・?』


佐村『・・・預かってくれ。』


私『多分、二度と返さないよ。』


佐村『まあ、耐えられなくなったら、人見たちから借りればいい。』


私『私が言ってる意味わかってる?』


佐村『不必要になるように、耐えればいいんだろ。』


私『うん。成功しそうだったのに、また吸い始めちゃって、振り出しだから大変だろうけど。』


ピンポーン


私『はーい。』


佐村『ちょっと待て・・・穴から・・・。』


ドンドン!!ドンドン!!


麻里『色葉!!開けて!!色葉!!』


私『麻里?』


ガチャ!!


麻里『はあ・・・はあ・・・。』


佐村『一体、どうしたんだよ。』


麻里『こ、この近くのショップの前の道を歩いてたんだけど・・・女性とすれ違ったの・・・。』


私『息が切れてるじゃない。飲み物を・・・。』


麻里『ナイフを持っているように見えた・・・ちょっと笑っていたような気がする・・・。』


佐村『見間違いじゃないのか。』


麻里『う、うん・・・。』


もしも、麻里が見間違いをしていないのならば、すれ違ったのは、あの手紙を送ってきた女なのかもしれない・・・。


私『本当に見間違いじゃないの?』


麻里『見間違いのはずないじゃない!!だから、こんな時間に駆け込んできたの!!』


私『疑ってるわけじゃないよ。今日は泊まるでしょ。』


麻里『え・・・いいの?』


私『いいでしょ、サム。』


佐村『お前、仕事は?』


麻里『今週はスカスカ。』


佐村『そうか・・・大変だな。収入は大丈夫なのか?』


麻里『たまたま今週仕事がないだけで、来週や再来週こそは・・・多分・・・一つや二つくらい・・・。』


麻里は声を震わせた。芸能界というのは厳しい世界なのだろう。


佐村『戻ってくるか?』


麻里『えっ・・・。』


佐村『こっちの世界だよ。』


麻里は首を振った。実は弱いところを見せたくなかったのだろう。


麻里『そんなことよりナイフ女よ。』


佐村『実はな・・・。』


佐村はストーカーの話と送られてきた手紙の話をした。


麻里『そ、そんなこと言われたら・・・色葉、外に出られないし、1人で家に居ることも出来ないじゃない・・・。』


色葉『サムの曲作りの手伝いをするから、そこは心配してないんだけど。』


麻里『曲作り?色葉が?』


色葉『あくまでも、お手伝い。』


麻里『いいなぁ・・・。』


色葉『今、いいなぁって言った?』


麻里『い、言ってないよ!!ちょっと懐かしいなーって思っただけだよ。』


佐村『麻里もスケジュールがスカスカなら手伝うか?数曲足りないんだ。』


麻里は小さく頷いた。やっぱり強がりだったんだ。でも、ナイフ女の話・・・2年前のようになりませんように・・・奇跡はそう何度も起きてはくれないよ。

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