疑惑の写真
女たちの愚痴の言い合いは尽きない。でも、眠気はやってくる。優ちゃんはともかく、酒の入った麻里が最初に力尽き、次に公子、最後に私が力尽きた。夢は子供と遊んでいる湯・・・私の顔に油性ペンでらくがき・・・ZZZ...
私『うう・・・朝か・・・。』
私は一番最後に寝たはずなのに一番最初に起きた。でも、夜更かししたから、さすがにまだ眠たい。カーテンくらい開けよう。
私『ん?』
カーテンを開けて窓ガラスに映った顔は・・・らくがきされた私の顔。
私『昨日、こんなにはしゃいだっけ。まあ、いいや、立ったんだから、顔も洗おう。』
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ガチャ・・・
佐村『なんだ。』
堀『昨日、俺なにしてた・・・?身体中が筋肉痛なんだけど・・・。』
佐村『気持ちいい事でもしてたんだろ。荷物はまとめたか?』
堀『お化粧タイムだ。』
佐村『なるほど。』
プルルルル・・・プルルルル・・・
堀『携帯鳴ってるぞ。』
佐村『・・・先に降りててくれないか。』
堀『あいつらのお化粧タイムが終わるまでには、お前も降りてこいよ。』
佐村『ああ。』
ガチャ・・・。
プルルルル・・・
ピッ
佐村『なんだよ、こんな朝早くに・・・。』
佳奈『うわ、ほんまに繋がった。嘘の番号やなかったんやね。』
佐村『ああ。』
佳奈『妊娠中の奥さんがいるのに、おもろいことしてくれるやないの。』
佐村『勘違いするなよ。あくまで保身のために教えただけだからな。』
佳奈『下心やろ?』
佐村『そう思うなら勝手に思ってろ。・・・俺に引っ張られて怪我はなかったか?』
佳奈『は?だ、大丈夫やけど・・・。』
佐村『それなら良かった。切るぞ。』
ピッ
佐村『・・・。』
人見『佐村ー?』
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真夏の馬鹿騒ぎから数日が経った。私は外出を控えるようになっていた。やせ我慢も通用しないほど辛くなってきたのだ。この時期を過ぎれば安定期に入れる・・・はずだったのに・・・。麻里が週刊誌を持ってやってきた。
麻里『ま、まあ、佐村も結婚したから、記者もなにか掴んでやろうって必死なのよ・・・週刊誌なんていちいち信じていたら疲れちゃうよ。』
私『でも、これ・・・どう見たって、サムじゃない・・・。』
麻里『ほ、ほら、ライブで行ったんだから、ファンと握手しているだけかもしれないし。』
私『ファンに手を出したってこと・・・うう・・・。』
麻里『はあ・・・。』
ガチャ・・・。
佐村『ただいま・・・って、なんで暗いんだ?』
私『サム・・・。』
麻里『・・・。』
佐村『麻里もどうしたんだよ。』
麻里『本当に知らないのか、知らばっくれているのか。』
私『うう・・・。』
佐村義一、ライブの夜に密会!?カメラが捉えたドロ沼スキャンダル!!
佐村『う、嘘だろ!?な、なんで・・・。』
麻里『身に覚えがおありのようで。』
佐村『ま、待てって、麻里ならわかるだろ!?こういう記事のいい加減さが!!』
麻里『説得するのは私じゃないでしょ?』
私『うう・・・。』
佐村『な、なあ色葉、お前が妊娠中に俺が浮気すると思うか?この写真の男は俺だけど・・・その・・・談笑しているだけだ。』
私『・・・口説いてたんじゃなく?』
佐村『そうだ!!だから、信じてくれ!!』
私『じゃあ、証明してみせて。』
佐村『・・・証明?』
私『浮気してないってことを証明して見せてよ。信じてたのに・・・。』
佐村『証明・・・証明・・・あっ。人見が事の一部始終を知っているんだよ。』
麻里『人見・・・電話かけてみようか。』
プルルルル・・・プルルルル・・・
ピッ
人見『なんだ?』
麻里『あっ、人見。麻里なんだけど、関西でのライブのあと何してた?』
人見『ライブのあと?・・・飲み歩いただけだけど。』
麻里『佐村も?』
人見『酔っぱらいに絡まれてる女の子がいたから、俺は酔っぱらいの相手を、佐村は女の子を・・・。』
麻里『ふんふん。佐村は女の子を・・・。』
佐村『ちょっと待て!!人見!!お前、あのあとのこと知らないだろ!!俺はいつかのお前みたいに人助けを・・・。』
私『人助けされると虜になっちゃうんだよね・・・女の子って・・・。』
佐村『あ!!あのあと、すぐに合流したろ!!』
麻里『佐村と人見はすぐに合流したの?』
人見『ホテルに帰ったのは俺の方があとだった。堀が酔い潰れてたから。』
麻里『そうなんだ。でも、部屋は別々に取ったんでしょう?』
人見『ああ。佐村だけ。』
麻里『ほほう、佐村だけ部屋は別々に取ったと・・・。』
佐村『俺が一人が好きな奴だってことは知ってるだろ!!それに空き部屋と人数の問題で一人になるのはしょうがなかったんだよ!!』
私『うう・・・。』
人見『そういえば佐村は、チェックアウトのとき仲谷たちの化粧より遅かったな・・・。』
麻里『女より支度が長い男って珍しいね。』
佐村『電話してたんだよ!!』
麻里『じゃあ、人見ありがとうね。』
ピッ
私『・・・。』
佐村『・・・。』
長い沈黙のあと、麻里が口を開いた。
麻里『まあ、ミュージシャンと結婚したんだから、こんなこともたまにはあるよ。』
私『他人事だからって・・・。』
麻里『私たちって、日々監視されているような毎日だから、変装とかするんだよ。この写真変装してないじゃない。だから、本当に飲み歩いただけで、これは偶然が重なって2ショットになった瞬間をカシャっと撮られたんでしょ。』
佐村『麻里・・・庇ってくれるのか・・・。』
麻里『(色葉は妊娠中なんだから心配させるわけにはいかないじゃない。後日、たっぷり話を聞かせてもらうから。)』
麻里は私を慰めてくれているけれど、私にとって気掛かりなのは、その電話の相手。男なのか、女なのか。女だったら・・・うう・・・。