2つの夜
ピンポーン
私『来た。』
ガチャ・・・。
公子『久しぶり、元気?』
私『ちょっと体調は優れないけど、しょうがないよね。』
公子は優ちゃんを連れてきていた。結婚式で会ったときは4歳くらいだったかな。あれから一年で、こんなに変わるんだ・・・可愛くなってる。これは将来、男前になるんじゃないか?
公子『優。あいさつは?』
優ちゃん『こ、こんにちは!!』
私『こんにちは。覚えてる?お姉さんのこと。』
公子『お姉さんだって(笑)』
優ちゃん『・・・おばさん。』
私『ちょ、ちょっと公子!!私のこと、おばさんって教えたの!?まだ三十路なのに・・・。』
公子『ごめん(笑)なんとなく、おばさんって教えてた。麻里は?』
私『もう少しで来るんじゃないかな。サムは関西だし、公子はシングルだし、麻里はフリーだから時間はたっぷりあるじゃない。・・・ところで、再婚はしないの?』
公子『再婚ね・・・。』
私『支えてくれている人はいるんでしょ?』
公子『それがなくなってしまうのが、怖いじゃない。』
私『なるほど。』
一度逃した幸せを、もう一度、隣に置くことは難しいんだな。もっとも、逃した幸せの重さは人によって違うんだろうけど。
ピンポーン
ガチャ・・・。
麻里『よいしょ。』
ドサッ
私『なんか、高校生みたいだね。ジュースとお菓子がいっぱい。』
麻里『夏だから尚更だね。夏休みみたい。』
公子『でも、麻里は高校生の時には煙草もお酒も何から何まで経験済みだったでしょ?』
麻里『何から何までってクスリはやってないよ。』
私『はは・・・ははは・・・。』
こうして三十路の女たちの会が始まった。みんなそれぞれ悩みを共有して、励ましあうのだ。サムは今頃何してるんだろ。
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人見『久しぶりだろ?飲み歩くなんて。』
堀『飲み歩くだけでいいのかぁ、佐村ぁ。』
佐村『そんな千鳥足で、どこに行くって言うんだよ。』
堀『気持ち良〜くしてくれるところだよ〜ん。』
佐村『寄るな、寄るな。』
人見『ん・・・佐村、あれ見てみろよ。』
佐村『ん?』
???『絶対に嫌や!!』
男『ヤらせろ〜わいは、元高校球児で・・・ひっく・・・溜まっとるんや・・・ひっく、ひっく・・・』
人見『どうする?』
佐村『どうするって、関わらない方が無難だろ。俺たち顔知られてるんだから。』
人見『それもそうか。・・・あれ、堀は?』
堀『なあにしてんだよ同類。俺と飲みに行こうぜ。』
男『な、なんや、同類って・・・ひっく・・・ナイフで刺したろかぁ〜。』
人見『ちっ、あのバカ!!』
佐村『お、おい人見・・・俺は女の子を逃がすぞ。』
???『きゃっ。』
佐村『今の内に逃げるぞ。』
???『はあ?』
佐村『人見!!俺は先にホテルに帰ってるからな!!そんな、酔っぱらいの相手なんかしてないで、堀を連れて帰ってこいよ!!』
???『あ・・・もしかして・・・。』
佐村『・・・。』
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麻里『人見となんて絶対にありえないから!!すぐに頭に血がのぼるし!!』
私『お互い様なんじゃない?』
麻里『うぎゃあああ!!』
公子『でも、なんでモテないんだろうね。美人でスタイルもいいのに。』
麻里『紹介してよ・・・紹介してくれないと泣いちゃうよ。』
私『堀さんは?』
麻里『堀さんは酔うと腑抜けになっちゃうから、一緒に飲みたくない。佐村を射止めた色葉が本当に羨ましいよ。』
私『なんで、泣いてるの・・・って麻里が飲んでるの酎ハイじゃない!!』
公子『私もそうだよ。』
私『まあ、しょうがないか・・・だから麻里がいちいちジュース配ってたの・・・。』
公子『ジュースでも飲み過ぎちゃダメだよ。』
私『はいはい。公子の特製サラダを食べますよ。』
公子『おばさん、すねちゃった。』
優ちゃん『おばさん、すねちゃった。』
私『優ちゃん、お姉さんって言って。』
優ちゃん『お姉さん。うん、おねえさん?いや!!おばさん!!』
私『とほほ・・・。』
麻里『優ちゃん、私は?』
優ちゃん『うーん、お嬢さん!!』
麻里『よし!!』
私『でも、現在フリーなお嬢さん。』
麻里『うぎゃあああ!!』
もう夜遅いから皆、変なテンションになってる。優ちゃんは眠たくないのだろうか。というか、私は夜更かししてもいいのだろうか。たまにはいいか。
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佐村『はあ、はあ、はあ。なんで絡まれてたんだよ。』
???『わからへん。』
佐村『わからない・・・?』
???『・・・。』
佐村『・・・。』
???『そんなに見つめんで・・・佐村義一やろ?』
佐村『えっ・・・。』
???『・・・。』
佐村『やっぱり、バレちゃったか・・・俺に腕を引っ張られたなんて、週刊誌に漏らすなよ。歪曲して書かれるから。』
???『歪曲って、どんなん?』
佐村『わかるだろ。』
???『教えてぇな。私、佳奈って言うんよ。奥さん妊娠中やから冷たい時期やろ?』
佐村『・・・。』
佳奈『私、温かいよ。』
佐村『・・・。』
佳奈『なあ。』
佐村『・・・帰れって。』
佳奈『帰れって、連れてきたんは、そっちやないの。』
佐村『反対方角に走ってきたのか・・・タクシー代渡すから帰ってくれよ。』
佳奈『・・・まあ、くれるんなら、貰うけど。』
佐村『ちょっと待て、渡すんだから帰れよ。』
佳奈『わかった、わかった、オモロない男・・・。』
佐村『面白くなくて悪かったな。そういう売り方はしてないんだ。』
佳奈『やっぱ、オモロない。アホ。』
佐村『うるせぇよ、バカ。』
佳奈『・・・。』
佐村『あ・・・いや・・・その・・・。』
佳奈『私、弱味握ったんやない?電話番号くらい交換しようや、そしたら許したるよ。』
佐村『はあ・・・ほら。』
佳奈『有名人の番号ゲット!!タクシー代はどうしたん?』
佐村『ほら・・・気をつけて帰れよ。』
佳奈『オモロないけど、優しいやん!!じゃ、バイバイ!!』
佐村『なんやねん・・・じゃなくて・・・なんなんだよ・・・あれは・・・。』
プルルルル・・・プルルルル・・・
佐村『あっ、こんな時間にか?』
ピッ
佐村『なんだよ、こんな時間に。』
私『愛してるっ!!』
ブチッ
佐村『なんなんだよ・・・。』
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ギャハハハハ!!
麻里『愛してるだって!!ギャハハハハ!!』
私『くそ!!次、麻里が負けたら、罰ゲームをもっと恥ずかしいやつにしてやる!!』
公子『なになに(笑)』
私『4、5年前の麻里が音楽について語っている雑誌のインタビューの朗読』
麻里『ああ!!それだけはやめて!!』
優ちゃん『ZZZ...おばさん・・・お嬢さん・・・お母さん・・・。』