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ぴよぴよ

私はジャケット撮影の詳細を知るためにサムと一緒に現場へと向かった。


ガチャ・・・。


佐村『よう。』


私『うわあ・・・。』


スタジオに入ると煙草の匂いが鼻につんときた。


私『いらいら・・・くらくら・・・ぴよぴよ・・・。』


佐村『ちょっと堀呼んできて。』


堀?その人が撮ってくれるの?堀さんはすぐに来た。


堀『話はどうだった・・・って奥さん?』


佐村『ああ。』


私『妻の色葉(いろは)です。』


堀『佐村の仕事仲間の堀拓巳(ほりたくみ)です。佐村のアルバムのジャケットデザインは基本的に俺が関わってるんですよ。』


私『へえー。』


佐村『ジャケットの詳細を説明して欲しいんだよ。イラストは描いたんだろ?』


堀『8枚くらい描いたけど・・・。』


佐村『見せてくれよ。』


堀『わかった、隣の部屋に行こう。ここは居心地が悪いだろうし。』


私たちは隣の部屋に移動した。


堀『深夜に酒を飲みながら描いたんだ。』


佐村『・・・おい!!半分はエロ絵じゃないか!!』


堀『そうじゃない半分から検討してくれよ。まさか、奥さんが来るとは思っていなかったから。』


私は残りの4枚を見比べた。1枚目は立っている妊婦さんがお腹に手を当てながら目を閉じている絵。2枚目は立っている妊婦さんがお腹に手を当てているけれど笑っている絵。3枚目は座っている妊婦さんがこれまたお腹に手を当てて目を閉じている絵。4枚目は男の人・・・サムのイメージだろう。男の人が妊婦さんのお腹に耳を当てている絵。


佐村『ありきたりだな。』


堀『5枚目の妊婦さんがだっちゅーのってのは斬新だろ?』


佐村『流行りものを取り入れても、すぐ廃れるしな・・・。何より、こんなポーズ、俺が許さないぞ。』


私『・・・4枚目が気になるんだけど。』


堀『これ?』


私『この男の人はサム?』


堀『一応は。』


私『私も顔を下げて、お腹とサムと私でスリーショットには出来ないのかな?』


堀『あ、それいいじゃないか!!』


佐村『お前が頭を下げるとお腹に負担がかからないか・・・?』


堀『まあ、撮影で試してみてだな・・・なんか・・・奥さん、気分悪そうじゃないか?』


私『・・・ちょっと煙草の匂いが辛くなってきたかな・・・うう・・・。』


堀『最近やめた佐村以外、みんな吸ってるもんな。・・・佐村、俺、臭いか?』


佐村『いや、色葉が敏感な時期だからな。それ以外にもトラウマみたいなもので煙が苦手みたいなんだ。』


堀『煙がトラウマ?』


私『・・・ごめんなさい。とりあえず撮影の構図は決めたから、私帰るね。』


佐村『やっぱりきついか。』


私『うん。堀さん、サムをよろしくお願いします。』


堀『浮気しないように?(笑)』


私『意外とそういうとこは信じてるから、打ち上げの後の飲み過ぎとか、食べ過ぎを・・・。』


佐村『ああ!!わかった、わかった!!俺が送るから、帰ろう。』


私『太ったらダメだよ。私も産後太っちゃうかもしれないんだから。』


私は芸能人じゃないから太ってもいいんだけど、サムの場合、それに減滅しちゃうファンもいるかもしれないから。・・・いや、やっぱり私も太りたくはない。産後、自然に痩せればいいけど。


私『今年の夏フェスはどこでするの?』


佐村『去年と同じイベントに呼ばれてるんだ。』


私『また、美味しいものがたくさんあるじゃない。』


佐村『まあな。着いたぞ。』


私『今日はどのくらいで切り上げてくるの?』


佐村『ちょっとな・・・ああいうジャケットになったから数曲ボツにしようと思ってるんだ。』


私『・・・遅くなりそう?』


佐村『わからないって。サラリーマンじゃないんだから。』


私『なんか時間かかり過ぎてない?去年の夏からやってるじゃん。』


佐村『そんなもんなんだよ。安静にしてろよ。』


行っちゃった。ライブもあるのに、ほぼ完成しているアルバムの中の数曲をボツにするなんて・・バカ・・・。あれ?


先日見かけた帽子を深く被った男がいた。


私『郵便受けを探っている・・・?』


男が郵便受けを開けようとしたとき・・・。


女『あ・・・。』


男『・・・。』


女『こ、来ないでって言ってるじゃない!!警察呼ぶわよ!!』


私『(あらら・・・。)』


男『ちっ・・・。どけよ!!』


私『痛っ!?』


男は私を突き飛ばした。


女『大丈夫ですか!?』


私『だ、大丈夫です・・・うう・・・。』


女『・・・もしかして、妊婦さん?』


私『えっ?』


女『私、ナースしてたんです。でも、結婚して妊娠したから今は主婦なんですけど。』


女の人は、さっきの男は元夫だと言う。離婚して養育費を振り込んで貰っていたらしいけれど、いつの間にか、それがなくなってしまい、それを咎めたところ、ストーカーのようになってしまったらしい。


私『引越しとか考えていないんですか?』


女『昨年、ここに引越して来たんです。ちょっと家賃が高いけれど、まさか私がここに引越すなんて思わないだろうから、両親の手助けもあって、ここに来たんですけど、何故かバレちゃったみたいで・・・。』


結婚して妊娠して子供を産んでも幸せが保証されるとは限らないんだ。いつの日か、その幸せが不幸に変化するなんてことは珍しくないのだろう。私は彼女と別れて自分の部屋に帰った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


プルルルル・・・プルルルル・・・


麻里『なに?』


私『なんか不安になって来ちゃった。』


麻里『どうしたの。また、愚痴でも聞いてあげようか?』


私『あんなにしっかりした公子でさえ出産した後、離婚しちゃってるし・・・。』


麻里『まだまだ先の問題じゃない。佐村に伝えにくいことがあるの?私が伝えてあげようか。』


私『いや、サムは今思い返せば、すごくよくやってくれてると思うよ。煙草も止めてくれたし。』


麻里『じゃあ、いいじゃない。』


私『不安なのは出産後よ。』


麻里『今度、公子を呼んでみる?そろそろ夏フェスの時期だから、1人で寂しいでしょ。私も行くから。』


私『ありがとう。・・・仕事減ってるんだ。』


麻里『よ、余計なお世話じゃない!!・・・とりあえず、そういうことだから。』


私『はーい。』


うう・・・ちょっとひと眠りしよう・・・。

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