ありがとう
ユミ『も〜佐村さん、奥さんいるんでしょ?番号はダメだって〜。』
佐村『ダメか?長く通ってるじゃないか。指名も、いつもユミちゅわんだし(笑)』
堀『ユミちゃん、佐村には教えなくていいぞ。俺は独身だから、教えてよ〜ん(笑)』
ユミ『(あーくっさ。近づくなよ、酒臭いんだから。)そういえば、人見さんは?ミズキちゃんも、最近見てないんだって。』
佐村『ああ、あいつ?不貞腐れて出て行ったんだよ。音楽性の違いとか言って、格好つけるんだろ。』
プルルルル・・・プルルルル・・・
佐村『あー、今日は早いな。もう、門限か。』
ユミ『さ、お会計を・・・。』
佐村『えっ・・・わ、わかった。すぐに行く。』
ピッ
佐村『ごめん、全部、堀に請求して。今日は金ないんだよ。』
堀『お、おい!!』
佐村『じゃ。』
ユキ『あらら・・・堀さん、お願いね。』
堀『いくら・・・うわ・・・。』
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佐村は麻里から色葉が夕方頃に産気づいたということを聞いた。
佐村『なんで、もっと早く連絡してくれなかったんだよ!!マジで金ないんだぞ!!タクシーにも乗れないし、車もバイクも駐車場代節約と運動のために家に置きっ放しだぞ!!』
麻里『小遣いのことを私に言われても・・・と、とにかく、色葉が頑張ってるから、早く来てあげて!!』
佐村『そんなことはわかってる!!病院ってキャバ・・・いや、えーっと・・・。』
麻里『キャバクラ!?今、繁華街なの!?ばっかじゃないの!!そこからだと、走っても結構かかるんじゃないの!?』
佐村『そうだよな・・・間に合うかな・・・。』
麻里『そうだ!!人見をタクシー代わりに・・・。』
佐村『あいつは、もう部外者だ。』
麻里『そんなこと言ってる暇じゃないでしょ!!病院の外で喋ってるんだけど・・・夜だから大声出させないで。』
佐村『勝手に大声出してるんだろ。大丈夫だ、全力で走る。』
麻里『お酒が入ってるだろうから車には気を付けてね。でも、色葉が早く会いたいって言ってたよ。』
佐村『・・・俺も早く色葉に会いたいから、やっぱり全力で走る。』
麻里『赤ちゃんが産声を上げるまでに着いたらいいね。8ミリ持ってる?』
佐村『常時、鞄に入れてる。見直したろ?』
麻里『なんで?家にもあったよ。』
佐村『あわよくば、ユキちゃん・・・どうでもいいだろ!!いや、この日のためだ!!』
麻里『ふーん。じゃあ、お気をつけて。なんか良くわかんないけど、まだ出産の準備段階らしいから。』
ピッ
佐村『・・・準備段階?。』
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私『うう・・・気持ち悪い・・・また・・・ふー。』
ガチャ・・・
麻里『私が大袈裟に言ったから、佐村、慌ててたよ(笑)冷静に考えたら、あそこからでも十分間に合うし、出産にも段階っていうのがあるのにね。』
私『あそこから・・・?あー!!待って待って待って待って・・・ふー。』
麻里『今、どんな感じ?』
私『開いてる・・・お腹の下辺りが徐々にパカーって・・・信じられないくらい・・・あー来てる来てる・・・あー・・・ふー・・・。』
麻里『そろそろ、私も側に居られなくなるよ。』
私『うん・・・この痛みに耐えられるのは女だけだって、歌があったよね・・・私は女だから大丈夫だよ・・・うう・・・ふー・・・。』
麻里『うん、色葉ならきっと大丈夫。って、私は経験ないし、旦那さんでもないから、白々しく聞こえるかもしれないけど(笑)』
私『いや・・・麻里が言うなら耐えられる気がする・・・ふ・・・ふー。』
ガチャ・・・
麻里『あー、色葉は大変なんだろうけど、なんか羨ましかったなー。強引にでも、いい人を捕まえようかな。』
麻里が外に出ると妙な気配がした。誰かに見られているような、すごく不思議な感覚・・・。
麻里『・・・あっ、人見、来てたんだ・・・って、あれ?』
人見のような人影は逃げるように角を曲がった。麻里はそれを追いかけた。
麻里『人見じゃないの?でも、時間も時間だし・・・知り合いの人見くらいしか来ないよね。見間違いかな・・・。』
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佐村『準備段階ってなんだ・・・?妊娠中の過ごし方の本しか鞄に入れてない・・・準備段階ってなんだ・・・心配かけんなよ・・・ったく・・・ん、人見?』
人見のような人影はベンチに腰掛けていた。
佐村『お互い、気づき、気づかれたところで気まずいしな・・・。』
若者A『あれ、もしかして、new FACEの佐村じゃね?』
若者B『ホントだ!!私、ファンなの!!すいませーん!!』
佐村『しっ・・・なに?』
若者B『握手して貰っていいですか?』
佐村『ああ・・・握手くらいなら・・・。』
若者A『俺もいいですか?』
佐村『いいよ。』
若者B『このTシャツでもいいので、サインを・・・。』
佐村『ごめん、ちょっと急ぎの用事があるんだよ。嫁が産気づいたみたいで・・・。』
若者B『奥さんが!!ちょっと自転車貸してあげなよ。』
佐村『いいのか?』
若者A『いいですよ。握手してもらったし。』
佐村『ありがとう。この紙に書いてある産婦人科に来てもらえば自転車を返すから。』
若者B『あ、ちょっと・・・行っちゃった・・・。』
若者A『これ、赤ちゃんの名前がたくさん書いてあるけど、いいのかな・・・。』
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私は遂に分娩室に入った。
助産師『ゆっくりでいいですよ。そっと、腰掛けてください。』
私『はい・・・。』
助産師『力を抜いて、リズムに合わせて先程の呼吸をしますので・・・どうかされました?』
私『い、いや・・・お願いします。(人見?絶対に人見だよね、あれ・・・なんで・・・もしかして・・・。)』
人見のような人影は色葉には、しっかり人見に見えた。微笑みかけていた。
色葉『(人見・・・だよね・・・?)』
人見『・・・。』
色葉『(生き霊だよね・・・そんなはずないもんね・・・あまりにもキツイから、私が幻覚を見ているだけかも知れないか・・・。)』
人見『・・・。』
私『(そういえば、私が幸せを掴めたのは、いつも、人見が私をピンチから救ってくれたからだよね・・・正直、サム以上に人見には助けてもらってた。)』
人見『・・・。』
私『(なんでだろ・・・涙が溢れてくる・・・今まで、私を救ってくれて、ありがとう・・・あ・・・。』
人見が消えた。現実に戻ったかのように、あの痛みが走り、助産師さんの声が聞こえる。
助産師『力み過ぎると、赤ちゃんに負担がかかるので、リラックスしてください。』




