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傷心

私『人見がサポートをやめるって・・・なんで黙ってたの・・・ソロか新しいバンドを組むって言ってるらしいよ。』


佐村『そんなことより初登場16位だぞ!!テレビに出まくった甲斐があったな!!』


私『わ、わーい・・・素直に喜べないんだけど。』


佐村『一軒家に住めそうだな!!』


私『わーい、わーい、わーい・・・。』


人見がサムのサポートをやめた。ソロで行くか新しいバンドを組むか悩んでるって麻里が言ってた。私はそれがサムのせいじゃないかって思ってる。勝手に思ってる。勝手に罪悪感を膨らましてる。


佐村『出産は来月だよな!!』


私『予定ではね・・・でも、今月になるかもしれないよ。』


佐村『俺たちもうすぐで、ママとパパか!!待ち遠しいな!!』


私『ねー、長かったねー、待ち遠しいねー。ちょっと冷めてるの、気づかない?』


佐村『冷めてんの?』


私『人見が気にならないの・・・?』


佐村『別に。やめたい奴は勝手にやめればいいし。』


私『この前の喧嘩が引き金になったんじゃないかって、妻の私としては夫が人見に対して、すごく悪いことをしちゃったと思って、ずっと胸が痛いの。』


佐村『胸の張りのせいじゃないか?』


私『・・・産後、退院したら、人見の家に行こう。』


何故か人見のことが気になって仕方がない。当然、恋とかそういうことではない・・・すごく嫌な予感がする・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


岸谷『どうだ、リハビリは。』


人見『まだまだ。手が震えて物を落としたり・・・それでも、大分改善しているみたいだけど。』


岸谷『で、何度も言うが、売人をおびき出すのなら、佳奈を使うのが手っ取り早いんだけどな。』


人見『・・・。』


岸谷『・・・売人のことは、ほっといて、佳奈と幸せに暮らせばいいじゃないか。』


人見『佳奈だけじゃなく、多くの人間の人生を狂わせて金を稼いでる奴らだぜ、ほっとけないだろ?』


岸谷『その金を稼いでる奴らに群がる奴がいないと、稼業は成り立たないんだぞ。佳奈だけでも救えたならいいじゃないか。』


人見『佳奈も怯えてるんだよ。私が草を断ったから、探してるはずだって。』


岸谷『ん・・・草だったのか?』


人見『佳奈がこっちで手に入れたのは草だけだって、うちあけてくれた。嘘か本当かは・・・だけどな。』


岸谷『草に絞るなら心当たりがある。』


人見『本当か!!』


岸谷『俺もあいつは消したい。』


人見『消したい・・・?いや、俺はそういうつもりじゃ・・・マスターみたいに心を入れ替えてくれればいい。』


岸谷『いつか言ったろ、日比谷のこと。』


人見『ああ・・・色葉を目の敵にしてんだったな。』


岸谷『あいつは色葉の出産を許さないだろう。自分の娘殺しの手伝いをしたのは事実だからな。情報はいくらでも入手ルートがある。』


人見『ということは・・・再び、色葉に手をかける可能性があるということか・・・?』


岸谷『あくまでも可能性だぞ。・・・俺はあいつを消したい。』


プルルルル・・・プルルルル・・・


人見『佐村・・・?』


ピッ


人見『どうした?』


私『人見、私よ。』


人見『あ、色葉か。何か用か?』


私『サムから離れるって聞いたよ。』


人見『ああ。ソロか新バンドでいこうと思ってる。』


私『やっぱり、この前のサムの佳奈ちゃんに対する暴言が原因でしょ・・・。』


人見『気にするなって言ったろ。お前は出産を控えてるんだ。佐村と一緒に幸せを築き上げるんだろ?』


私『出産だけが幸せだと思うなって・・・。』


人見『”出産だけが”って言ったんだ。出産も幸せの一部だ。ただ、それが果たせない人にとっては、別の幸せもあるぞっていう意味だ。』


私『たとえば?』


人見『ずっと恋人同士でいられるとか。』


私『ちょっと羨ましいな・・・。』


人見『佳奈もお前が羨ましいと思っているはずだ。人間ってそんなもんだろ?』


私『そうなのかな・・・頑張ってね。』


人見『ああ。』


ピッ


岸谷『お前も佐村が羨ましいんだろ?』


人見『・・・。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


佳奈『あー・・・また、こぼしてもうた・・・もうずっと、私、このままなんかな・・・生肉にも3秒ルールOKやろか。』


ガチャ・・・


人見『・・・。』


佳奈『おかえり。どうしたん、辛気臭い顔して。』


人見『お前は俺が好きか?』


佳奈『そりゃ、私を守ってくれるから大好きやけど・・・なんで、そんなこと聞くん?』


人見『もしも、俺がいなくなったら、寂しいか?』


佳奈『寂しい・・・もしかして、おらんくなってしまうん・・・?』


人見『・・・そんなはずないだろ(笑)もし、そうなったら穂を頼るんだぞ。』


佳奈『穂ちゃん・・・。』


人見『あいつが俺の次に信用出来る人間なんだろ?』


佳奈『なんか・・・ほんまにおらんようなってしまいそう・・・。』


人見は日比谷の栽培場に行くことを話した。佳奈に嘘をつくことは出来なかった。耐えられなかった。


佳奈『私も連れてって。』


人見『そう言うと思った。・・・だけどダメだ。俺が好きなら俺の言うこと聞いてくれるだろ?』


佳奈『・・・アホの佐村みたいなこと言ってるやん。』


人見『そう聞こえるか(笑)それでも、大人しくここにいろ。わかったか?』


佳奈『なんか冷たい・・・もっと温かったやん・・・さっきの話も私と別れる口実やろ・・・私の介護に疲れたんやろ・・・。』


人見『介護じゃない、リハビリだ。それに俺はお前と接して疲れなんかしない。』


佳奈『リハビリ・・・ああ・・・これって、恋愛やなかったんや・・・リハビリを兼ねた恋愛ごっこやったんや・・・。』


人見『いや・・・ごっこなんかじゃ・・・おい!?』


佳奈『うっ・・・うう・・・。』


佳奈が手首を切った。人見の為に料理を作る練習をしていた包丁で手首を切った。


人見『何してんだよ!?このバカ!!』


佳奈『人見がアホなこと言うからや!!』


人見は室内に干してあった自分の服を引き裂いて佳奈の傷口を止血するために、それを佳奈の腕に締め付けた。


人見『・・・締めつけキツくないか?』


佳奈『胸が締めつけられて、めっちゃキツい・・・。』


人見『・・・。』

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