ほっとして
12月25日。私たちにとっての幸せ記念日の2日前にサムのアルバムが発売された。そのお祝いに自宅でパーティーを開くらしい。サムは私を気遣って、私が顔見知りの人だけを招待するんだって。事前に電話をくれたけれど料理を用意する必要はないと言われた。掃除もするなって言われた。
ピンポーン
ガチャ・・・
私『おかえりー。』
佐村『ただいま・・・。』
仲谷『お邪魔しまーす。』
堀『綺麗な家じゃないか。』
麻里『料理持ってきたよ!!』
私『サム、どうしたの?なんか、朝と比べて元気がないみたいだけど。』
仲谷『ちょっと、色々あってね・・・。』
佐村『あいつ、あんな奴だったかな・・・もっと、友達思いで・・・』
仲谷『人見に振られたの。今日は用事があるみたいで・・・そりゃそうだよね。クリスマスだもん。みんながみんなフリーって訳じゃないから。』
私『そうなんだ。しょうがないよね。』
佐村『あいつ、妊娠だけが幸せだと思うなよって言ったんだよ。』
私『えっ・・・。』
堀『それで、佐村、人見を殴っちゃってさ。人見が殴り返さなかったから良かったものの・・・。』
私『何してんのよ・・・暴行罪に問われたら言い訳出来ないじゃない・・・。』
佐村『あっちは侮辱罪じゃねえか!!』
麻里『人見も我慢してくれたからさ・・・もう、終わったこと・・・。』
佐村『終わったことって、どういう意味だよ!!我慢してくれたって、どういう意味だよ!!』
私『もう・・・携帯貸して、人見に謝罪の電話入れるから。』
佐村『いらねえよ。』
私『いる。』
佐村『いらねえって!!』
私『いるって!!貸して!!』
佐村『何してんだよ!!これは俺の携帯だろ!!』
麻里『夫婦喧嘩は私たちが帰ってからにしてよ・・・あっ。』
ガチャ!!
私『寝室に逃げたよ。はあ・・・人見の番号教えて。』
仲谷さんが人見の番号を教えてくれた。
プルルルル・・・プルルルル・・・
私『出ない・・・。』
プルルルル・・・プルルルル・・・
ピッ
私『あ、出た。』
人見『色葉?』
私『そうだよ。ごめんね、うちのサムが・・・。』
人見『いや・・・あれは俺も悪かったんだ。もう原因は聞いたんだろ?あれは、お前を傷つけるために言ったんじゃなくて・・・と、言っても傷ついたよな。ごめん。』
私『いや、サムが殴っちゃったから、こっちが全部悪いんだよ。もしかして、人見の言葉の前にサムが何か言っちゃった?』
人見『・・・俺のことはいい。もう少しで出産だろうから、頑張れよ。』
ピッ
私『あ、切れた。』
俺のことはいい・・・やっぱり、サムが人見に酷いこと言っちゃったんだ。
麻里『人見どうだった?』
私『何ともないみたい。サムと違って人見は精神的に強いね。出産頑張れよ、だって。』
麻里『・・・。』
私『どうかしたの?』
仲谷『人見、あの娘の面倒見ているみたいなの。』
私『あの娘?』
麻里『・・・佳奈。』
私『まだ、付き合ってたんだ・・・そういえば・・・。』
仲谷『その娘が順調に回復してるって、人見が明かしてくれたんだけど、佐村にとって、その娘は自分の人生を狂わせようとした女じゃない?だから、口論になっちゃったの。』
私『それがヒートアップして・・・。』
仲谷『そうそう。佐村に聞こえてるかな。ちょっと起こしてきたら?』
私『寝室に逃げ込んじゃったら、本気で怒ってるからやめたほうがいい。』
麻里『でも、主役がいないと・・・堀さん、お酒ばかり飲んでないで、色葉と一緒に佐村を起こしてきてよ。』
堀『俺が?ハーレム状態も悪くないんだけどな・・・。』
麻里『ハーレム状態でも男らしいとこ見せないとモテナイよ。』
堀『そっちもだろ。』
ガチャ・・・
麻里『女らしさってなんだろ・・・。』
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私は堀さんとサムを起こしに来た。顔があっちを向いてるよ・・・近寄りたくないよ・・・。
ゆっさ、ゆっさ。
私『サム・・・今日の主役でしょ・・・。』
佐村『・・・。』
私『何で、妊娠したら子供っぽくなっちゃったの・・・嫉妬?』
佐村『嫉妬してる男がお前を守ろうとするか?』
私『暴力で守られても嬉しくない。大体、思考が単純過ぎるの。昔はそんな男じゃなかったのに。』
佐村『愛想尽かしたなら出て行けよ。ここは俺の家だ。』
私『だから、そんな単純な思考回路なの!!2人の家を建てようって約束したじゃない!!』
佐村『アルバムが当たったらだろ。』
私『キャバクラ通いにお金を使わなければ!!』
佐村『ぐっ・・・。』
私『キャバクラ!!キャバクラ!!キャバクラ!!キャバクラ!!』
佐村『ぐわっ!!』
ガチャ・・・
仲谷『あれ?佐村と色葉ちゃんは?』
堀『かかあ天下は素晴らしいな。』
仲谷『はあ?』
ガチャ・・・
私『ほら、こたつに入る!!そして、謝る!!』
佐村『お、お騒がせして申し訳ありませんでした・・・。』
仲谷『ホントだ。麻里が何か作ってるみたいだけど・・・。』
私『あっ・・・待って麻里、味見させて。』
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佳奈『ごめん、待ったやろ?』
人見『いや・・・似合うじゃないか。』
佳奈『この色、心配やったんやけど、人見ってセンスもあるんやね。』
人見『経験は豊富だからな。』
佳奈『・・・。』
人見『あっ、ごめん、そういう意味じゃ・・・。』
佳奈『私はそういう意味で経験豊富なんよ(笑)』
人見『(危ね・・・。)本当にそれで良かったのか?バッグとかの方が良かったような気がするんだけど。』
佳奈『バッグなんか必要ないやん。』
人見『これから必要になるかもしれないぞ。』
佳奈『必要になるやろか?』
人見『必要になるように頑張ってるんだろ。今のバッグは何年使ってるんだ?』
佳奈『10代のときに買ってから、一度も買い換えてない。』
人見『欲しくないか?』
佳奈『そんなに言われたら欲しくなってきたような・・・なに、にやにやしとんの?』
人見『こっちが本物のクリスマスプレゼントだ。』
ドサッ
佳奈『・・・。』
人見『何、キョロキョロしてんだよ(笑)怪しいものじゃないぞ。』
佳奈『わ、わかってるけど・・・こんなところで開けても大丈夫?』
人見『わかった、お前が不安なら、家で開けよう。』
家に帰宅し佳奈が袋を開けると、ブランド物のバッグが入っていた。その価値はわからないけれど、佳奈は喜んでくれた。人見は一人、ほっとした。




