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久々のTV出演

サムのアルバムから先行シングルが発売された。それの宣伝でサムが久々のテレビ生出演をするんだ。


ピッ


私はテレビのチャンネルを変えた。サムの出番は中盤らしく、それまでに夕食を盛り付けた。


Tさん『続いては佐村義一くんとMARIちゃん。』


私『えっ、麻里も出たの?』


Tさん『4年ぶりだって。』

佐村『バンド組んでた時に出演した以来かな。』

Tさん『その時の曲ってなんだっけ?』

佐村『多分BUBBLEGUMですね。』

麻里『可愛かったね、あの曲。』


私『サムが二度と演奏したくないって言ってた曲だ。』


Tさん『今度のアルバムにはMARIちゃんも参加してるんだってね。』

麻里『最後の曲のボーカルを・・・。』

佐村『その曲のメインはうちの嫁です。』

麻里『ちょ、ちょっと!?』

Tさん『あれ、妊娠中じゃなかったけ?』

佐村『妊娠中だからこそ、お腹に力を入れずに優しい歌声が録れるかなーと思ったんです。今日演るのは、その曲じゃないんですけれど。』

Tさん『妊娠中の奥さんはテレビ見てるかな?』

佐村『多分、見てると思いますよ。』

Tさん『じゃあ、奥さんに一言いってみようか。』

佐村『えっ?』


私『えっ?』


Tさん『ほら、3...2...1!!』

佐村『い、色葉見てるか?・・・妊娠中にも関わらず、毎日、美味しい料理を作ってくれて、ありがとう。それから・・・このくらいでいいっすか・・・?』

Tさん『締めの言葉を言って曲に行こうか。』

佐村『締めの言葉?』

麻里『あい・・・。』

佐村『あ、愛してるぞーっ!!』


シーン・・・


Tさん『それじゃ、演奏をお願いします(笑)』


佳奈『ああ、もう!!そんなシーンいらんやろ!!はやく、人見を映してや!!』


演奏が始まった。


私『あれ?ドラム、人見じゃん。なんでトークに出て来なかったんだろ。』


佳奈『佐村なんか、映さんでええってば!!』


私『普段はどこか抜けてるところがあるけれど、やっぱり歌って、ギター弾く姿はかっこいいなあ・・・。』


佳奈『もう、ええわ!!』


ピッ


佳奈『はあ、早く帰って来んかなあ・・・寂しいなあ・・・お腹空いたなあ・・・。』


ガサガサ・・・ガサガサ・・・


佳奈『・・・飴ちゃんしかない。』


ガチャ・・・。


佳奈『帰ってきた!!・・・また、気のせいや・・・。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガチャ・・・。


人見『・・・あれ、寝てるのか。』


人見は佳奈を揺さぶった。


佳奈『・・・んん。』


人見『ほら、腹減っただろ?』


佳奈『うん・・・全然、テレビに映らへんやったよ。』


人見『俺はあくまでも佐村のサポートメンバーだから・・・。』


佳奈『そんなんでええの?私、めっちゃ悔しかった。』


人見『・・・。』


佳奈『また、睨んで・・・えっ。』


人見は佳奈を抱き締めた。


人見『俺だって悔しいんだよ!!一度は曲が採用されたのに、ミニアルバムに追いやられるしよ!!ドラムは仲谷で十分だって言われるしよ!!』


佳奈『ずっと我慢してたん・・・?』


人見『いや・・・ごめん。女に心配される男なんて、みっともないよな。』


佳奈『そんなことない。人見は、こんなにしょうもない私に、いつも優しく接してくれてるやん。』


人見『佳奈・・・。』


佳奈『そろそろ私にも恩返しさせてえや・・・。』


人見『お前はまだリハビリ中だろ(笑)・・・ありがとう。』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ガチャ・・・


そーっと・・・


私『遅かったね(怒)』


佐村『あ、まだ起きてたか・・・はは、ははは。』


私『0時0分ジャスト。まだ、寝ずに待てる時間帯だよ(怒)』


佐村『ご、ごめんってば。だから、そーっと帰ってきただろ?』


私『そのそーっとは、私の耳にハッキリと聞こえてましたけど(怒)何してたの?』


佐村『夕食はいらないから勘弁してくれよ・・・。』


私『そんなこと、わかってるよ!!『今日は遅くなるから、夕食はいらないから。』の電話を入れてくれてたなら、私も何も言わないよ!!何をしてたのかを聞いてんの(怒)』


佐村『ヤラシイことじゃないから許してくれよ・・・。』


私『だから、何をしてたんだよ(怒)』


佐村『怒るなよ?(もう相当キテるけど。)』


私『白状して(怒)』


佐村『数人でタクシーに乗ったら寝ちゃってさ、気づいたら繁華街の真ん中で、どうせなら飲んで帰ろうとなって『おっ、もう11時か。色葉が待ってるから、今日はもう帰るよ、ユミ・・・』じゃなくて、マスター・・・えっーと・・・。おわっ!?』


私『ユミ!?ユミって言った!?というか、誤魔化そうとして説明下手過ぎでしょ!!ユミって、いつかのキャバクラの名刺の娘でしょ!!』


佐村『か、勘違いするなよ!!キャバクラって言うのは、お客さんとお話をしながら、お酒を飲むだけのところであって、決して、いかがわしい店じゃないからな!!』


私『その名刺が化粧室に落ちてたとき、ホストクラブの男の人ヴァージョンだって麻里に説明されたから、いかがわしい店じゃないってことはわかってるよ(怒)謝らなくちゃいけないのは、そこじゃないっしょ(怒)』


佐村『えっーと・・・タクシーのくだり、嘘をついてごめん。』


私『だ・か・ら(怒)こんな時間まで心配させて、ごめんなさいでしょ!!』


佐村『すいませんでした・・・次からは必ず電話します・・・。』


8ヶ月のお腹が動いてる。パパを叱ってママって言ってた。私もミュージシャンと結婚したのだから、ある程度は覚悟している。キャバクラ程度なら、まあ許す。でも、妊娠中ともなると話が変わってくるのだ。妊婦さんを心配させないで。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


佳奈『はあ、出来るやろか・・・出来ないやろうな・・・。』


人見『思い込みもあるんじゃないか。それにシラフで抱かれたのって、久しぶりだろ?』


佳奈『実はシラフで人見に抱かれたのも初めてやって・・・。』


人見『わかってたよ。明らかに反応が違ったじゃないか。』


佳奈『初めての人やないのに、ちょっと震えてたやろ・・・?』


人見『震えてた、震えてた(笑)その方が、女の子って可愛いよ。』


佳奈『可愛い・・・。』


佳奈に子供は出来なかった。それは、佳奈のせいではない。人見のせいでもない。佳奈に、どうすることも出来ない不平等を押し付けた神さまのせいなのだ。そんな自分をさらに陥れた佳奈は自分を責める。そんな佳奈を人見は何度も慰める。でも、子供は出来ない。佳奈は幸せ記念日にも雪の舞う街で涙を流す。

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