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同類

人見にあの女のことを尋ねた。でも、中々教えてくれない。


佐村『一体、何を隠してるんだよ!!俺も不安だし、色葉だって妊娠中で不安なんだよ!!』


人見『お前らが勝手に不安に思ってるだけだろ!!人の女にケチ付けんなよ!!』


私『うるさい・・・。』


2人が携帯電話越しに怒鳴り合いを始めたから、私は洗濯物の処理をしよう。


佐村『そもそも、何人目だよ!!今、横に何人並んでんだ!!』


人見『一人だ。』


佐村『嘘つくなよ!!なんとか子の話を最近、数パターン聞いたぞ!!』


私『(なんとか子の話なんかどうでもいいよ・・・。)』


人見『それ、不細工な風俗嬢の話だろ?写真と実物が詐欺レベルの違いだったって話。』


佐村『そうだ!!あのときは俺も一緒だったよな!!店から出て、お前だけ不満をぶちまけて・・・。』


私『何が一緒だったの?店って何屋さん?』


佐村『・・・。』


私『もう、携帯貸して。無駄話が多すぎるよ・・・あ、人見?色葉なんだけど、一つだけ教えて。あの女はこっちに住んでるの?』


人見『・・・。』


私『お願いだから教えて・・・知らないなら知らないと言ってくれてもいいから。』


長い沈黙のあと、人見が口を開いた。


人見『答えられない。』


ブチッ


私『あ、あれ・・・切れちゃった。』


佐村『携帯取り上げといて、それはないだろ・・・どうすんだよ・・・。』


私『そっちが無駄話ばっかりしてるからじゃない!!仕事上の都合もあるかもしれないけれど、毎月の通話料金も馬鹿にならないんだから!!』


佐村『なんで通話料金の話になるんだよ!!切られたのはお前だろ!!』


私『切られたのは私だけど、切ったのは私じゃない!!さっきの店ってなんなの!?人見だけ不満だったとか、どうせ、いかがわしい店でしょ!!』


佐村『ば、バッティングセンターだ。』


私『目が泳いでる。私が今、こんなだから仕方なく人見たちに付き合ったんでしょ?』


佐村『い、いや・・・その・・・。』


私『なに?怒らないから。』


佐村『じゃ、じゃあ、お前が産むまでは通っていいってことか?』


私『ライブのあとはやっぱりそういうとこ行ってたの!?当然、お小遣いは減らすからね!!』


佐村『なんでライブのあとだと決めつけるんだよ!!』


私『私、女としての魅力なくなってきてる?だから、通ってるんでしょ・・・私がいるのに通ってるってそもそもなによ!!』


収拾がつかないや・・・こういうときはちょっとだけ賢い方が引かないと収まらない。ちょっと目を潤ませてみようかな。いや、無言の圧力だ。私は洗濯物を無言でたたみ始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


佳奈『もっとええ情報はないん?』


人見『もう、これ以上は洒落にならない・・・。』


佳奈『洒落にならないって?』


人見『俺の立場だよ!!ぐっ!?』


佳奈『覆い被さった女を男が突き飛ばしたら怪我するやろうね。』


人見『・・・。』


佳奈『えっ!?』


人見『いい加減にしろよ。普通の力だと傷ついてしまうことなんか、大抵の男はわかっている。思春期に過ちを犯しながら学び、大人になるんだ。だから、普通の大人なら手加減ぐらい出来る。』


佳奈『でも、ちょっと怖かったんやけど・・・。』


人見『怪我しないで良かったな・・・なんで、こんな生活をしてるんだ?』


佳奈『気づかないんや・・・。』


人見『・・・。』


佳奈『自分が私にやってきたことを思い出してみて。』


人見『俺がお前にやってきたこと・・・俺はお前を抱いたことしか・・・。』


佳奈『それや・・・情報をくれる代わりに何も着けずに中で果てたやろ・・・3回くらい・・・。』


人見『ああ。でも、お前が言い出したことじゃないか。』


佳奈『なんで、ミュージシャンって鈍感なんやろ。私、子供が出来にくい体なんよ。』


人見『・・・それは診断されたのか?』


佳奈『ちゃんと医者から言われた。あなたは子供が出来にくい体ですって、決して子供が出来ない体とは言われんやった。でも、当時の彼にそのことを伝えたら、もう別れようって言われて・・・収入をどうしようって悩んだら、私、中卒やし・・・年齢的にも・・・それに女やし・・・。』


人見『わかった、わかった、俺、涙は嫌いなんだよ。でも、なんで佐村を?』


佳奈『・・・奥さん、私と同類やったんやろ・・・勝手に思ってたんやけど、こういうことする人間は心に傷を負ってるか、私みたいに体におかしい所がある人ばかりやと思ってた・・・。』


人見『・・・。』


佳奈『・・・ミュージシャンと結婚して・・・子供も出来て・・・あんたから、奥さんの過去を聞かなければ、こんなに深追いをするつもりはなかったんやけど・・・手紙を送るつもりも・・・。』


人見『・・・ちょっと待て、手紙?』


佳奈『あ、いや・・・歌詞作りに苦労してるって教えてくれたやろ?』


人見『どういう歌詞なんだよ。』


佳奈『・・・わからへん。』


人見『・・・。』


佳奈『なんで、男の人って睨むん・・・怖いやん・・・。』


人見『・・・ごめん。』


佳奈『・・・もう、驚かんよね。私、クスリや草に頼ることがあるんよ。寂しいから。』


佳奈は注射器と吸引器具を鞄から取り出した。


人見『腕の傷か。』


佳奈『そう・・・本当に驚かんね。ミュージシャンやし、経験済み?』


人見『俺は高校時代のシンナー遊び止まりだ。その草に詳しいやつは知ってるけどな。』


佳奈『だれ?やっぱミュージシャン?』


人見『佐村の奥さんだよ。詳しくなりたくてなったわけじゃないみたいだけどな。』


佳奈『それ、今夜の情報?』


人見『・・・あいつは心に傷があるんだよ。その傷を癒そう、無くそうと、現在を必死に生きてるんだ。去年まではある出来事のせいで、子作りも怖いと思ってしまうほど傷心していてな。結婚する前の1年間はそれなりの事があったらしいんだけど、結婚してから急に処女みたいになったって、佐村は飲み会で愚痴ってた。』


佳奈『・・・。』


人見『それが今は子供を身籠って、のびのびと毎日を謳歌している。産まれてくる日が待ち遠しいみたいだ。MARIって知ってるだろ?あいつからの情報なんだけどな。・・・お前が、そんなあいつらの幸せを邪魔して何になる?』


佳奈『・・・何にもならへんよ・・・でも、じゃあ私どうすればいい!?一生、子供が産めない体やから、肉体労働に戻れって!?関西に帰れって!?』


人見『俺の所でリハビリするか?』


佳奈『なんや!?こいつなら、いくら出しても身篭らんから安心や!!そんな風なこと思っとるんやろ!!』


人見『ほら、重症じゃねぇか。禁断症状が出てんだよ。さっきから、髪掻きむしってるし、いきなりキレ始めるし。その様子だと、お前、俺の家でも注射か吸引してたろ?』


佳奈『・・・。』


人見『改心させたことはないけれど、お前みたいな知り合いは沢山いるんだ。あくまで知り合いなだけだけどな(笑)』


佳奈『・・・私にまともに接してくれるん?』


人見『ちょっと人間不信も入ってるか。酔っ払いに絡まれてたときはなんで必死に断ってたんだ?』


佳奈『・・・子供が出来ないからと言うても、あんな酒臭いおっさんに抱かれるなんて嫌やったからや。』


人見『それもそうか(笑)悪いな、嫌なこと思い出させて、じゃあ・・・。』


人見は佳奈に喋りかけ続けた。夜が明けるころ、ベッドの上で丸くなっていたのは佳奈。人見はソファでいびきをかいていた。

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