十一話 北伐行
ベリアル「皆様。いつもありがとうございます・・・えー、約1ヵ月ぶりになってしまいましたが、何とかお届け出来て幸いです」
ベルゼブル「あのー、こちらにセフェラ様がおられると聞いたので・・・・・・ベリアル」
ベリアル「ん!ベルゼブブ様どうしたの?」
ベルゼブル「セフェラ様に会いに来たのですけど知りません?」
ベリアル「アレ?さっきまでそこでベビースタ〇食べてたんだけど」
ベルゼブル「・・・仕方ありません。それで今回はどう言った話しなのかしら?」
ベリアル「今回は、未だラナバルラント北部に残る軍政局勢力圏に侵攻するお話しだよ」
ベルゼブル「それではどうぞ」
王国暦324年5月2日 ミヘーゼ沙漠北端ネトバ要塞
「ようやくここまで来たわね」
「そうッスね。これで軍政局勢力に侵攻出来ますね」
兵站が万全になり、部隊の移動が開始され、ようやくこのネトバ要塞に歩兵、騎兵、砲兵の各師団合計32個師団を揃える事が出来た。
「どころでバル。何時攻めるの?」
「んー・・・あとひと月欲しいッスね」
「やっぱり前倒しは出来なそう?」
「今すぐには出来ないッスね」
「何の問題が有るの?」
「後続の師団の兵士の疲労ですね。ただ、いつまでもって訳にもいきませんので、最低一週間は欲しいッスね」
「ああ、疲労かぁ・・・これ以上先伸ばしにしたくないけど、これは致し方ないわね。今すぐって事になったら士気に影響するわ」
軍政局勢力圏 ゾラスタングラード市
「おっかぁ。腹へったよぉ」
「坊や。今日は朝食べたあれだけしかないのよ・・・ゴメンね、ゴメン・・・ね・・・ウゥゥ」
朝食べた物も、鍋一杯にマメを数粒挽いた物を入れただけのスープと呼べぬ代物を食べていた。
「オギャァオギャァ」
「おーよしよし。泣かないで・・・どうして・・・どうしてこんな事になったのだろう・・・・・・誰か助けて・・・」
満足に食べる事の出来ない母親から母乳が出る事は無く、赤ん坊が腹を空かして泣き叫び、母親は途方に暮れる。
軍政局勢力圏内では、先年発生した飢饉にも関わらず、ザルヘルバ王国軍との度重なる戦闘に因り、幾度となく税が課され、その重税に次ぐ重税に民衆は塗炭の苦しみを強いられていて、餓死者もかなりの数が出ていた。
5月3日 ネトバ要塞
「バル。軍政局側から、毎晩夜陰に乗じて、難民が多数流入している様ね」
「え!何で知ってるんスか!?メアラに言われて意図的に・・・あ!いっけね」
あたしが軍政局側から流入して来ている難民の事を問い質すと、バルストックは、メアラに口止めされているのを忘れうっかり口を滑らせる。
「ははーん・・・いいのよわたしは。わたしはわたしで楓ちゃんに潜って貰ってるから、じきにあちらの情報が入るわね。ただ、やっぱり場の雰囲気と言うか、何か・・・こう・・・上手く言葉では言い表せないけど違うのよね・・・悪い方向でね。そう、あの時の王都に似ているわね」
「お嬢ってば、どんだけ感性と言うか、その感覚が鋭いんスか・・・ああ、あのメアラをもってしても、お嬢のこの感覚は知り得なかったか」
あたしが現状に気付いた一因である情報元や、あたし自身が肌身で感じているこの場の空気とかを伝えると、バルは天を仰ぎ見る。
「・・・苦しんでるのよ」
「え?」
「今も不当に虐げられ、不当に飢え、不当に苦しんでいる民衆があの向こうに3千万人以上も居るのよ。これを、ただ条件が揃わないってだけで傍観出来る程、わたしは人間できてないわよ」
あたしはそれに怒気を含ませる。
「ええ、お嬢の気持ちは十分察しますが、ここは堪えて下さい」
「無理・・・もう限界・・・メニヒダで出るわよ」
「いや、ちょっ、待って下さい」
「一日」
「え?」
「準備に一日あげるわ。だから明日中に支度なさい。後続部隊は直ぐには無理だけど、先発で来ている部隊は休養は十分でしょ」
無理を言っているだろう。というのは分かっているけど、ごく普通の一般市民であった前世とは違う。
今は、弱者を助ける力も手段もあるのに、それを行使しないのは、あたし自身が堪えられない。
偽善と言われ様と、あたしは行使するわ。
「・・・分かりました。歩兵6個師団、騎兵1個師団、砲兵2個師団、早急に出立準備します」
「お願いするわね」
5月7日 軍政局勢力圏内 イザルラント州マフダナ平原
「どう?」
「リル様。どうと言われましても、双眼鏡でご覧になられたままだと思いますよ」
あたしたちは、軍政局勢力圏内のマフダナ平原まで進軍して来た。
ここから一番近い軍政局側の拠点はソーラダッケルという都市で、人口は約190万人、都市圏で約370万人誇るイザルラント州の中核都市であり、この場所からそこまでは、更に凡そ20千セルもある。
騎兵だけなら数日位、歩兵も行軍するので、普通なら二週間は掛かるのだが、歩兵師団や砲兵師団の自動車化が進み、ここまで六日程で到着した。
「ウーン、居るわねぇ」
「当然居るでしょう」
あたしは、メニヒダに搭乗している。
搭乗員は、あたし、楓ちゃん、セリサ少佐で、セリサ少佐が操縦、楓ちゃんは装填手兼通信手、あたしは指揮及び観測の役回りだ。
マフダナ平原のほぼ中央に幅1,000セル程の河川が在り、更にその1,000セル程先に軍政局軍が陣地を構築していて、ここからだと、凡そ3,000セル程離れている。
「・・・結構持っているわね」
「持ってますか」
「そうですね。私が潜入していた時もマスケットなら結構見掛けましたね」
「という事は、どこからか支援を受けている可能性は高いですね」
「そうねぇ。軍政局軍は銃自体無かったから、共産メゼリエか、ファシストメゼリエからレンドリースを受けているでしょうね」
「敵の敵は味方理論で言えば、現在進行形で敵対している共産メゼリエからが濃厚ですか・・・」
「恐らく軍事顧問も居ると思いますよ。それらしい者を見掛けました」
・・・やっぱりそう易々とは行かないわね。
前面装甲が20mmあるとは言え、マスケットだろうと集中砲火を受ければ無事では済まないわね。
・・・失敗したわ。あと5両はメニヒダを作らせて置くんだったと、後悔しても後の祭りよね。
「楓ちゃん。ちょっと無線貸して」
「ハイ。リル様」
「あー、あー、こちらメニヒダ第1小隊隊長のライヒ少佐だけど、司令部応答願います」
『・・・ハイ。こちら司令部ですが、ライヒ少佐いかがなさいましたか?』
「至急、バルストック少将を呼んで貰えるかしら?」
『・・・承知致しました』
しばらく待つと、向こうから送信がある。
『あー、こちらミヘーベ方面軍司令部司令官のバルストック少将だ。メニヒダ第1小隊隊長のライヒ少佐は応答されたし』
「取れるわ。少将閣下に意見具申したいのだけどいいかしら?」
『承知した。だが、私のできる範囲で便宜を図るが、当然内容にも因るぞ』
「それだったら、砲兵師団を1個師団わたしの所まで回してくれないかしら?」
『え!?お嬢n・・・少佐の所にまで回すのか?』
まったくバルのヤツ、あたしは国王として居るんじゃないんだから空気読め。
「そうよ。可能かしら?」
『・・・ああ、可能だが、参謀局の者を1人付ける事が条件だ』
「お目付け役ね・・・了解したわ。それでは頼むわよ」
5月9日 同地
「ライヒ少佐。今日からお世話になる、参謀局のベラルド=ドンカスターです。以後お見知り置き下さい」
司令部に砲兵師団の増員の要請をした日から数えて3日後の今日。司令部から移動配備される砲兵師団に先立って、ひとりの女性がやって来た。
「よろしく。ドンカスターさん。それで、閣下は何か言っていたかしら?」
「いえ。何も言ってませんでしたね」
「(で、実際の所どうなのよ)」
「(さぁ。兎も角頑張ろうねリル)」
あたしは途中から小声でドンカスターと話すが、なにを隠そうベラルド=ドンカスターとは世を忍ぶ仮の姿。
その実体は、べリアルが架空の人物をでっち上げ、その人物になりすましているのだ。
「ドンカスターさんの軍での階級はどうかしら?」
「私ですか?私は大佐を拝命しております」
「(ちょっとぉ、わたしより階級が上ってどういう事よべリアル)」
「(そんな事知らないよ。そこはバルに聞いてよ。ボクだって困ってんだから。リルより階級上ってどんな罰ゲームだよ)」
「(それどういう事よ)」
「(言葉通りだけど何かある?)」
「(ぐぬぬ・・・ま、まぁいいわ)それでは、私より階級は上、という事ですね」
「そう言う事になりますが、閣下からは貴女の下で奮戦する様にと仰せつかっております(バルには何か意趣返しが必要だよね)」
「そうですか。頼りにしていますよドンカスター殿(異議なし)」
ただ、楓ちゃんは苦笑しており、セリサ少佐は顔を引き攣っていたが・・・
ベルゼブル「ここまでありがとうございます。誤字・脱字などございましたらお気軽に感想欄にてご連絡ください・・・それで、何なのですか?」
ベリアル「ああ・・・ベルゼブブ様。そこはスルーしてくれると嬉しいな」
ガチャ
リル「ベリアル。ヘボ作者は居る?」
ベリアル「居ないし、知らないよ」
リル「あいつは・・・と、ベリアル、こちらの美人さんは?」
ベリアル「ああ、アッチでのボクの上司に当たるベルゼブブ様だよ」
ベルゼブル「はじめましてリルーエット嬢。貴女もセフェラ様に会いに?」
リル「様って・・・」
ベリアル「あ、リル。ベルゼブブ様は、コッチでは一応ヘボ作者の下僕、という設定だから」
リル「設定ってw・・・それより微妙な所で終わってるわね」
ベリアル「ヘボ作者の腕じゃ、北伐が一話で終われる様に纏めれる訳ないジャン」
リル「それもそうね・・・そう言えば、サラが険しい顔してたけど」
ベリアル「ああ、アレね戦時国債の発行額が1000億ズゼを突破して、尚も刷らないと破綻しかねないからだね」
リル「えっ!!先日ラナバルラント開発国債を追加で50億ズゼ発行したばかりじゃない」
ベリアル「ウン。ザルヘルバの国家財政を一般の会社に例えると、8倍強の債務超過だね」
リル「普通ならとっくに倒産してるじゃない」
ベリアル「323年の予算が人口が増えた事に因る税収の増加で300億ズゼ弱に拡大したにも関わらずだからね。尤も、ラナバルラント開発国債の内40億ズゼ程は、ラナバルラント鉄道㈱に対する無利子と低利子が半々で融資してるから、戦時国債みたいにほとんどリターンが無い物と違い、額面以上には戻って来るからね」
リル「ああ、だからこれだけの額をポンと出したのね」
ベルゼブル「二人とも、会話中失礼するが、この場で言って良い内容なのかしら?」
リル、ベリアル「「!?」」
ベリアル「セフェラに怒られる・・・」
リル「アーウー・・・」
ベルゼブル「アハハ(汗)。そ、それでは今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」
ベリアル「ブクマや評価貰えたら嬉しいな」




