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辺境領リネルメ興隆記  作者: 常世神命
七章 大戦勃発 ~ザルバル戦役~
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十話 ラナバルラント鉄道株式会社

ベリアル「いつもありがとうございます・・・ねぇセフェラ。そんな所に居ないでこっちに来なよ。何?ヤダ?・・・・・・ハァ」


リル「そんなのほっときなよ」


ベリアル「リルぅ。セフェラは一応ボクのご主人様なんだけど」


リル「でも、来たくないというのを無理に来させたって使い物になりゃしないわよ」


ベリアル「・・・それもそうだね」


リル「それではどうぞ」





王国暦323年12月6日 ガレッゼレル市内 ガレッゼレル中央駅前


 あたしは朝二つ刻半(凡そ午前5時)頃、侍女に叩き起こされ、朝食を軽く済ませ、アンチョコが書かれている紙を何度も読み返し、三つ刻三分半(凡そ午前7時半)に大使館を出た。


 この日は朝から晴れ渡り、絶好の式典日よりだ。

 五つ刻からラナバルラント鉄道株式会社の、本線全線開通の記念式典が催されるとあって、式典会場の周りには、市民が所狭しと詰め掛けていた。

 その数、実に凡そ50万人という人出があった。


 ラナバルラント鉄道はザルヘルバが60%、ラナバルラントが残りの40%を出資した合弁会社だ。

 人員については、ラナバルラントからの人材を多く雇用したいが、ラナバルラント側にそう言ったノウハウを持った人材が居ない事もあり、雑用を除いた運営等に関する部分は、どうしてもこちらから出向させて運営していかざるを得ない事になる。


 ラナバルラント鉄道本線は、ラナバルラントの首都ガレッゼレルを起点として、ミヘーゼ沙漠南端の基地が在る町ナルホベを通り、ラナバルラント南東に在る大都市イェメトバ(人口190万人)迄の、営業距離が凡そ170千セル(約340km)もあり、広軌(地球の広軌と違いこちらのは4分の3セル(約1,500mm))でしかも複々線で敷設されている。


 ラナバルラント鉄道本線の開業に伴い、その軌道上に在るザルヘルバ軍で敷設した物は、全てラナバルラント鉄道に譲渡する事になり、ガレッゼレル~アジェラル間の一部、ミヘーゼ沙漠線全線も併せて譲渡する事になって、ミヘーゼ沙漠線については、先頃複々線化が終わり、これで兵站を心配する事無く進軍する事が出来る様になった。





同日 ガレッゼレル市内 ザルヘルバ王国大使館


「ハァ・・・何とか式典も滞り無く終わったわね」


「ええ」


「これで北伐が出来るわね」


「そう言うだろうと思いまして、年末を目処に侵攻の計画案を練っています」


「へぇ、そうなの。という事は、大体の骨子は出来ているのね?」


「ええ。あとは細かい調整ですね。秋には1デルセル野戦砲も出来ましたし、石油の精製技術も向上しております。それに併せてタンクローリーの開発も終わり、2日に一台のペースですが生産もスタートしました」


「という事は、ディーゼルエンジン搭載の自走砲が出来るのね?」


「例の5台はディーゼルに改装しますが、新たに生産するのは差し控えます」


「どうしてなの?」


「先に輸送車をディーゼルに改装するのを優先する為ですね」


「どれくらい替えるのかしら?」


「予定通り、現在運行中の半数ですね。生産量の関係でこれ以上は改装出来ません」


「それなら、ある程度ガソリンエンジンにした方がいいんじゃないかしら?」


 軽油はディーゼルの燃料として、灯油は照明や冬季の暖房・工業燃料として利用される事になる予定なのだが、ガソリンについては現時点で利用方は無く、先日、一斗缶に加工出来る迄に金属加工レベルが上がったので、それを大量に生産して、ラゼリアラントの人里離れた場所に新設した保管所に輸送する事になっているが、このまま石油の精製量が増えれば一定量は廃棄しないといけなくなる。

 当然、もったいない処の話しではない故のガソリンエンジンの開発になる。


「・・・確かにそうですね。ガソリンエンジン自体は出来ているので、こちらも生産する様通達しておきます」


 ・・・一応、エンジン自体は出来ていたのね。

 さすがはメアラと言ったところかしらね・・・


「そう、という事は、残りの木炭車はガソリンエンジンに改装するのね?」


「そう言う事になります」


「とすれば、木炭車で使用していた木炭は丸々余剰になるから、量を調整して市場に流した方がいいのかしら?」


「そうですね・・・一応は必要であるかと思われますが、現時点でわたしが把握している商業的に木炭を生産している所はリル様のお持ちのリネルメ窯業だけですね。まぁ、面積がある程度以上の森林全てを国有林に指定しましたから、現在、大森林を所有しているリル様以外、国内に個人所有の森林が無い以上、当たり前と言えば当たり前の話しですね」


 あたしの所以外にも炭焼きをしている者は居るのだが、あたしの所みたいに営利目的で大々的に炭焼きしている者は皆無であるので、リネルメ窯業に不利益にならない程度に流す様調整すれば問題無いという事だ。

 まぁ、今のところ、一般的な家庭が使用する燃料代は、薪換算だと一日当たり5セル(約100円)だが、木炭は軍事利用していた事もあり、その価格が一日当たり70セル(約1,400円)もするので、木炭の価格が10セル位になる様には流通量を増やすつもりではあるが。


「ねぇメアラ。それにしても輸送路の改善は出来たけど、輸送力についてはどうなの?」


「ああ、お気付きになられてしまいまたね。ええ、確かに牽引する機関車に問題がありまして、来年2月を目処に新型の機関車が量産体制に入ります」


 そう。兵站の問題を解決するのには、輸送路だけではなく、その物資を牽引する車両の方にも問題があったのだ。


 現在の主力機関車の出力は560kw(約746馬力)で、最高速度は78千セル/刻(約時速78km)あるが、アジェラルからミヘーゼ沙漠南端の町ナルホベ迄は当然平坦ではなく、場所によっては勾配が26‰(1kmで26mの勾配)あるので、牽引している車両が多いと、当然、最高速度に出る迄の時間が掛かるし、その速度も低くなる。


 それで、新型の機関車というのが

 名称は323年式蒸気機関車、通称【アジテーター】、先導者と扇動者を掛けたらしい。

 出力は1,220kw(約1,626馬力)

 最高速度が106千セル/刻(約時速106km)

 出力が大幅に増加したので、この機関車が量産体制に入れば、兵站の問題も改善される。


「それでメアラ。ディーゼルエンジンを開発出来たのなら、ディーゼル機関車も開発しているのかしら?」


「ええ、と言いますか、客車用に開発していたのが先頃終わりまして、実際に5編成程運行しています」


 ・・・・・・あ、もう運用してるのね。


 名称は322年油式客車付き牽引車

 出力は280kw(約373馬力)

 最高速度80千セル/刻(約時速80km)

 定員51人

 2両固定編成


 出力は低いが、貨物ではないのでこれ位で丁度よい。


 それで、貨客両用に開発しようとしているのが。


 名称が324年式ディーゼル機関車

 出力が1,850kw(約2,466馬力)

 最高速度が148千セル/刻(約時速148km)

 最大200kgまで機関車に貨物を積める事が出来るが、郵便物等の軽い物に限る。


 開発が完了して製造に入ったら、ザールラント~ガレッゼレル間を5時間程で運行する事になる。

 うん、分かっていたつもりだけど、あたしの認識はかなり甘かったみたいだ。

 ディーゼル機関車が既に運用されているのには驚いたけど、現時点で100千セル/刻(約時速100km)超える乗り物とかあり得ないわ。

 5時間よ5時間。

 去年、ラナバルラント戦が一段落した後、あたしがガレッゼレルからザールラントに戻るのに、2日掛かったわ。

 それに、またガレッゼレルに来た時も、ザールラントを早朝三つ刻(凡そ午前6時)に出て、ガレッゼレルに到着したのが、とっぷり暮れた十つ刻(凡そ午後8時)よ。


 ホント、常識って何だろうなぁ・・・







ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします。ようやく軍政局勢力の地域に侵攻出来るね」


リル「ホント、インフラの整備に時間が掛かったわね」


ベリアル「・・・なんかこれ以上話したら、ネタバレしまくりそうなんだけど」


リル「・・・つぐんだ方がいいわね」


ベリアル「それでは今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」(汗)


リル「良かったら評価して貰えたら嬉しいわね」




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