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辺境領リネルメ興隆記  作者: 常世神命
七章 大戦勃発 ~ザルバル戦役~
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九話 進軍出来ませんでした

アシュタロス「いつもありがとうございます・・・ねぇベリアル。カクヨムの方に出ているわたしがこっちに出ていいのかしら?」


ベリアル「いいんじゃないの?アシュタロスってセフェラに言われたから、こっちに来たんでしょ?なら大丈夫だよ」


アシュタロス「でさぁ、前回アスモが出たってホント?」


ベリアル「ホントだよ」


アシュタロス「さてさて()身内話()はこの()位にし()て、今回はどんな話しかしら?」


ベリアル「サブタイ通り」


アシュタロス「・・・もう少し説明して欲しいわねぇ」


ベリアル「セフェラが嫌って言ってからね」


アシュタロス「・・・セフェラにはあとで問い詰めなきゃ」


ベリアル「程々にしといてあげてね。それではどうぞ」








11月26日 ミヘーゼ沙漠南端 軍駐屯地


「え?まだ精製施設どころか、輸送手段も無いから採掘はストップですって?」


『そうなりますリル様。早急にタンクローリーを仕立てていますので、それまでお待ち下さい』


 あたしは今、メアラと電話で話している。

 折角、原油を生産出来る体制は出来たけど、アジェラルにある精製施設までの輸送手段が全く無いのだ。

 ええ、バレルだけに文字通り樽に詰めてたけど、二樽目で断念したわ。

 当然、原油を汲み上げるポンプは全て停止・・・と言っても二基しか設置していないのだけどね。

 ・・・やっぱり輸送手段かぁ。

 エルベリアの方は、今のところ日産1米バレルしか生産していないから、輸送手段に苦慮する必要は無い。


「分かったわ。一応二樽有るから、ティアをこちらに寄越してちょうだい」


『ん?という事は、今は油田の方は、わたくしが言うまでもなく稼働していないのですか?』


「そう言う事。十樽持って行ったけど、待つのが面倒だから二樽詰めた段階で停止させたわ」


『分かりました。それではティアをそちらに向かわせますね?』


「ええ。お願いするわね。あと、私も駐屯地に一旦戻るわ」


『承知致しました』


 




12月2日 ガレッゼレル市 ザルヘルバ王国大使館


 ミヘーゼ沙漠南端の駐屯地で、ティアに原油の詰まった樽を渡して、ティアは一路アジェラルに在る原油精製の試験施設へ、一方あたしは、この大使館に鉄道を乗り継ぎ戻って来た。

 ティアには悪いけど、ティア便便利よね。


「メアラ。こっちハンコ押し終わったわよ」


「でしたらこちらの分の決算もお願いします」


「分かったわ」


 ウン。まだ兵站に問題があるので、整うまでこの大使館でデスクワークをやっているわ。

 専らハンコ押しだけど・・・







12月22日 ミヘーゼ油田内 軍駐屯地


 あたしは、絶賛操業停止中のミヘーゼ油田に来ている。

 あれから南端の基地から鉄道沿いに道路を敷設し、井戸を掘り、宿舎を建て、電話線を引き、千人程が駐留出来る基地を、この油田に整備した。


「・・・ようやくかしら?」


「まだ難しいッスね」


「まだなの?」


「まだッスよ。少なくともミヘーゼ沙漠線の複線化が終らないと、現状では兵站がキツくて精々3個師団しか向かわせられないッスよ。さすがにその程度じゃ、100万とも言える軍政局軍を、いくら装備の面で圧倒的優位があっても相手に出来ませんゼ。少なくとも、歩兵15個師団、騎兵2個師団、砲兵4個師団の計21個師団20万余りは居ないと話しにならないッスよ」


「という事は?」


「来年2月に予定していた侵攻計画はご破算ッス」


 今、あたしと話して居るのは、二等参謀官のアレル・マグルス中佐で、歩兵師団で通信支援中隊で隊長をしていたのを、メアラにその才を買われ、中尉だったのを裏技を使って中佐まで特進させ、二等参謀官に抜擢した。

 ・・・兵站に難があるのは薄々感じてはいたけど、マグルス中佐の話しを聞く限りは、一旦戻る事になりそうね。


「やっぱりダメかぁ・・・という事で後は任せた」


「ちょ!!マジ待って下さいよ。俺っちは一応貴女付きの参謀官なんスから、置いてかれたら参謀長に絞められちゃいますよ」


 あたしの丸投げ発言に中佐は焦る。


「なら、この基地の後任をサッサと決めちゃいなさい。1日待つわ」


「りょ、了解ッス」


 中佐はげんなりする。







王国暦323年 1月6日 ガレッゼレル市 ザルヘルバ王国大使館


「ハァ・・・中々進まないわね」


「仕方ありません。国内はこの最中好況に沸いていますから、建設資材が不足しています。改善するための政策は打ち出しましたが、効果が出てくるのは、早くとも半年先になります」


 現在ザルヘルバ王国では、戦争特需と建設ブームに沸いている。

 サラに聞いた話しだと、旧首都であるラグザーブルグでは、建設ブームが顕著にあらわれ、混乱期前、最大50万人の人口を誇った時もあったのだが、現在は、混乱期のどさくさに紛れて敷設した、市内鉄道の効果も有り、ラグザーブルグの人口は100万

人を超えたらしい。

 だが、急激な発展にも関わらず、王宮(現市庁舎)を中心に放射状に整然とした発展をしている。

 まぁ、メアラが主体で計画立案をしていたので、ある意味当然な結果ではあるが、都市計画に於いてもそのチートぶりをいかんなく発揮している。


 ()()()()・・・


 兎も角、この戦争特需に起因する好況のせいで、建設資材、特に鉄鋼の調達が思う様に行かず、その為、ミヘーゼ沙漠線の複線化が遅れているので、兵站の問題が改善されず、未だ軍政局の勢力下への侵攻の時期の見通しが、あのメアラをもってしても立っていない。


「・・・やっぱりある程度統制した方がいいのかしら?」


「今の好況に冷や水を浴びせかねないので、あまりやりたくはありませんね」


 今の好況は自由経済であるがために、この戦争特需で国内の物流が活発になり、それに伴い雇用が創出され、個人消費が伸び、内需が拡大の一途を遂げているのだ。

 現在、【お金の流れてが太く勢いが良い状態】と言っていい。

 これを、政府で統制しようとすると、この好況の歯車が狂う可能性がある。


 生産した品物を国内(主に軍事関係)で回させる為に、国内に輸出に回していた分が溢れ、内需はそんなに増加しないので物価が急落し、デフレーションが発生する。


 失業率が増加し、デフレが更に進行する。


 しかし、物価の下落は一時的な物で、軍需物資に引っ張られる形で物資が上昇に転じる。


 だが、失業率はすぐには改善しない為に、内需は冷え込んだまま。


 結果、スタグフレーション(不況下のインフレ)に陥るとメアラは見ていた。


 当然、そうならない様にはしたいが、戦時中であり、兵站の改善の為に建設資材を戦争に振り向けるには、相当な経済統制を敷く必要があるので、前述の様なシナリオになる可能性は、かなり高いらしい。

 ただ、経済恐慌にまでに陥らないと想定しているのには、銀行がザールラント中央銀行だけで、日本みたいに都市銀行や地方銀行が無い事に起因する。

 それでも、一度狂った歯車を元の状態に戻すには、現状での我が国の財政は相当の無理を強いられ、継戦能力が削がれ、一時的な撤兵を余儀なくされる。

 軍政局軍は未だ健在であり、我が軍が撤兵しよう物なら反攻作戦にうって出るだろう。

 そうなると、ラナバルラント国に割譲させた地域及び、ラナバルラント国の大部分は、軍政局側に盗られてしまう可能性が出て来る。


 なので、現状では、このラナバルラント内戦は長期化する見通しではあるが、今は小康状態を維持出来ており、今、(いたずら)に経済を混乱させたく無いのは、あたしも同じだ。


 だが、長期化するという事は、諸外国に付け入る隙を見せる事にもなるので、可能ならば、出来るだけ早期終結を図りたい。

 早期終結はしたいが、それには経済統制が必要ではあるが、そうすると、国内の景気は冷え込むので、経済統制はしたくないが、そうすると軍事局軍との戦争の早期終結は望め無い。

 というジレンマに陥る。


「・・・是非もなしねぇ」







アシュタロス「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします。ぜんぜんダメじゃない。メアラが居るのにどういう事よ」


ベリアル「アシュタロス。メアラがチート過ぎるから忘れちゃうのは仕方ないけど、メアラはボク達とは違って人間だからね」


アシュタロス「そうねぇ忘れてたわ」


ベリアル「だから、無から作り出せる訳は無いから、現状で遣り繰りするしかないんだよ」


アシュタロス「そうよねぇ・・・貴女から聞いた話しで推測すれば、現状の経済状態で好況とかあり得ない話しだから、やっぱりメアラって事かしら?」


ベリアル「そう言う事だね。えーそれでは今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」


アシュタロス「また出演したいわね」




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