六話 準備をしました(仮)
リル「いつもありがとうございます・・・って何よタイトルの(仮)って」
ベリアル「ああ、何かしっくりこないから、今後変更する予定」
リル「は未定。決定ではなく」
ベリアル「しばし変更有りだね。でさぁ、南関東のK市に居たんだけど、午後から雪が結構降って来たよね」
リル「散発的だけど勢いは有ったわね」
ベリアル「で、セフェラに積もるんじゃないって聞いたら「まさか。明日まで降る訳じゃないしこれ位じゃ未舗装の場所に多少積もる位で、大騒ぎする程じゃないよ」って言ってたよ」
リル「天気予報信じてエラい目に遭っていたのによく言うわね」
ベリアル「アハハ」
リル「それではどうぞ」
7月16日 ガレッゼレル市内ザルヘルバ王国大使館
「フウ・・・一息着いたわね」
「まだ軍政局の勢力が残っていますけどね」
あたし達は、条約に拠り新たに開設されたザルヘルバ王国の大使館に居た。
まぁ、開設と言っても、王宮に近い場所の良さげな建物を相場価格で買い取り、リフォームしただけどね。
それで、この大使館をしばらくの拠点にして、ラナバルラント北部に撤退した軍政局軍を殲滅する準備をする事になる。
7日20日 ガレッゼレル市内中央市場
「戦争の混乱は落ち着いて来たわね」
「そうですね」
「それに、活気があるわ」
「それもそうでしょう。軍政局の締め付けが無くなった事に付け加え、こちらが軍需物資を買い漁っていますから、今なら濡れ手に粟状態ですよ」
あたしとラセルはガレッゼレル市で一番大きいとされる中央市場に、物価や市民の様子を調べに来ている。
「ラセル。何か値段が少し高い気がするのだけど」
「仕方ありませんよ。今まで軍政局が絞り取ってたから、色々と不足気味なんですよ」
そう、軍政局が相当税として色々搾取していたので、色々足りない品薄な事は分かるのだけど、パン一斤の(四人家族で1食分位)が350ラデュールする。
ザルヘルバ王国では、保守派の領域を組み込んだから多少値段は上がったけど、それでも倍の量で小銅貨1枚で事足りるのを考えると、パンひとつ取っても凡そ10倍の値段がする。
そうそう、今まで国交が有った訳じゃ無いのだけど、第三国経由での交易は有ったから、所謂、商人用の為替レートって物は在るのよ。
で、今は1ズゼが7ラデュールで交換されているけど、7ラデュールで20円位の価値というかと言えば・・・16円10銭程度の価値なのかな?
そのため、徐々にズゼ高ラデュール安になって来ているらしいわね。
ついついねぇ・・・
あっ、市場にひやかしに来たんじゃないからね。
市場調査よ市場調査。
大事な事だから二回言ったわよ。
だから勘違いしないでよね。
『リル様。美味しそうな串焼きが売っていますよ』
・・・レフィーナはああ言ったけど、市場調査なんだからね。
「・・・1本73ラデュールみたいね」
『10本買って730ラデュールですから・・・凡そ104ズゼですか?結構しますね。これでは現地調達するより、本国から輸送した方がよっぽど安く済みますね』
そうなのだ。
今、レフィーナが言ったけど、主に軍政局のせいで色々な物が不足している為に、ラナバルラント国全体の物価が高く、軍需物資を現地調達に頼ろうとすると、戦費がとんでもない事になるのよ。
だから、軍需物資はザルヘルバからの陸送に頼るしか無く、この様な兵站の問題が有るために、ラナバルラント北部に侵攻する事が出来ないでいるのよ。
現在、ガレッゼレルに駐屯しているザルヘルバ王国軍は、歩兵、機動歩兵、騎兵に砲兵が合わせて24個師団凡そ23万人居る。
楓ちゃんの報告に拠れば、軍政局軍の人員は推定92個師団凡そ98万人という事だから、軍政局軍が銃を持っていない・・・という事は考えない方がいいわね。
メゼリエがマスケットを所持していたから、軍政局軍もマスケット位はある程度配備しているという想定でいた方がいいわね。
これでは、数師団の増員が必要になって来るから、今居る部隊を本国に戻して、必要な物資の節約を図る事が出来ないわね。
ああ、楓ちゃんはクレイン直属の諜報員で、色々頑張って貰っている。
普段、任務が何もない時は、メイドの格好をしてあたしの給仕兼護衛をして貰っている。
「ラセル。少なくとも鉄道を早い段階で、広軌で複線化しないと儘ならないわよ」
「そうですね。戦費は有限ですから、そうせざるを得ないですね・・・分かりました。その辺手配しておきます。何、我が軍に若干二名暇人が居りますので、こき使っても問題ありません」
・・・若干二名ってタレザとバルストックの事ね。
こき使ってストレスを発散させるのも手よね。
7月28日 ラナバルラント国ガレッゼレル市近郊 ヨツヨベ村
あたし、ラセル、レフィーナ、楓の四人は、何の変哲も無いヨツヨベという村に来ている。
そんな村に何をしに来たかと言うと、この何の変哲も無いヨツヨベ村は、交通の要所として機能する可能性があるので、重要な拠点とも言える。
しかし、ガレッゼレル市やヨツヨベ村を含むこの地域は、条約外の州なので、当然ウチの領土ではない。
領土ではないので、勝手に鉄道を引く事も、街道を整備する事も農業改革をして食料を増産させる事も出来ない。
人員とお金の関係で併合出来なかったツケが表面化した感じになる。
「・・・リル様。手持ちはいくら有りますか?」
「即金で10万ズゼ、為替使ってなら1,000万ズゼ迄ならいけるわよ・・・そう言う事ね」
「そうです。リル様のお手持ちの資金でこの村の必要と思われる土地を購入しましょう」
「それしかなさそうねぇ。申請とかはどうするの?」
「私の部下にやらせます」
ラセルの指示でヨツヨベ村の指定の不動産が購入される。
凡そ6,000平米を5,500万ラデュールだから・・・えーとレートが確か今はインフレ気味だから、1ズゼが7.5ラデュールの筈だから・・・って1ヵ月も経って無いのにインフレ率高いわね・・・それで電卓有ると便利なんだけど・・・筆算でーと・・・んー約733万ズゼね。
10万位未満を手持ちの現金で支払って、残りの730万ズゼは為替ね。
尤も、この730万ズゼ分は、後日あたしの所から740万ズゼを足して、ラナバルラント国と共同でラナバルラント鉄道株式会社を立ち上げる事になっているから、あたしの所から出ていかないのだけどね。
このラナバルラント鉄道は主にラナバルラントの鉱物資源をウチに輸出する事で、ラナバルラント国に外貨を稼いで貰って、疲弊している国内の開発をして貰う為の物だけど、その為の資材の内木材はラナバルラント国内にもそれなりの物は有るけど、これからは国内の開発に新技術、つまりはセメントや鋼材を使った構造物が作られて行くのだけど、将来的にはと言っても、今現在ラナバルラントにそんな物を生産する工場は何もないのでそれら全てはウチからの輸入になり、この鉄道会社が正式稼働すれば、ウチとラナバルラント国との経済的な結び付きが強くなる。
これで、今の経済が混乱した事に因るインフレではなくて、いい意味でのインフレになってくれればと思うわね。
ラナバルラント国は軍政局の勢力圏とウチに割譲した州を除いても凡そ3,200万の人口を誇り、ポテンシャル的にはウチ以上と言っても過言ではなく、ウチが入ってラナバルラントの政情が一部安定した事に因り、ウチの国の資産家の投資が増える物と予想され、軍政局のせいで冬の時代が長かったラナバルラントにとってはこれから空前絶後の好況が訪れる事になる。
8月6日 ヨツヨベ村
「リル様。みそ煮込みうどんです」
7月末にメアラがエルベリアのディベロップメントを一旦終え、こちらにやって来た。
・・・この夏に煮込みとか、ラナバルラントってザルヘルバより標高が低く(ガレッゼレル市の標高は426m)てザールラントより暑い(8月の平均で6℃余り高い)から、いくら暑い時には熱い物を食べて新陳代謝を活発にして夏バテ予防とか言ったって食べれたもんじゃないわよ・・・・・・メアラが作った物だから食べるけどね。
「ご馳走さまメアラ」
「お粗末様です。リル様。こちらをどうぞ。取り合えずは流し読みして下さい」
メアラはそう言うと、一冊の冊子をあたしに渡す。
一通り見終えると、それを机に置く。
「石油、見付かったんだ」
「左様にございます」
「という事は、エンジンの開発が始まる訳ね」
「ええ、ガソリンエンジンよりディーゼルエンジン方の開発をしていきます。それと、石油の精製施設の建設、石油等の採掘技術の研究を進める予定です」
「木炭車はどうするの?」
「半数をディーゼルエンジンに積み替えて、残り半数はそのまま国内の輸送に使用する計画です」
そう、木炭車はガソリンエンジン若しくはディーゼルエンジンに改装し易い様に、初めから改装前提で作られてている。
木炭車は確か月産300台程度で、現時点の保有台数は・・・1,500台程だったかしら?
「スペックはどうだったかしら?」
「性能は木炭車と比べると、平均速度で約2倍、一回の補給での連続走行時間で約9倍走れて、最大乗員数でも7人増えます。只、多少の補強が必要になる事が判明しましたが、想定の範囲内です」
「将来的には戦車とか作らないとならなくなるかしら?」
「いえ、現時点でも補強して40mm山砲を改造した物を
搭載させれば、自走砲位は作れますよ。でも、先の事を考えたらディーゼルに改装した後にした方が手間が減ります」
「・・・技術の蓄積って事で5台造ってちょうだい」
「そう言う事でしたら造った方がいいですね」
「どれくらい掛かるのかしら?」
「試作機ですので、凡そ3ヵ月位は掛かるものかと思われます」
「その程度で出来るの?」
「ええ、設計図自体には起こしてありますし、何しろここは地球ではありませんので、色々手法は有りますので、わたくしとしましては寧ろ少し余計に掛かる感じがしますね」
・・・普通、兵器にしろ、何にしろ新たに0に近い状態から始めようとすると、年単位の時間が掛かるのは当たり前なのに、それが設計図だけは有るとは言え3ヵ月程度で済むのに、それでもまだ掛かり過ぎとか・・・メアラ自身が動くチートだしこれは考えたら負けの世界よね。
ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします・・・石油見付かったんだ」
リル「そうらしいわね」
ベリアル「でも、精製施設はまだなんだよね?」
リル「研究程度の代物なら在るみたいだけど、実用的・・・商業的な物はまだこれかららしいわね」
ベリアル「・・・という事は、木炭エンジンの自走砲を作るって事?」
リル「そう言う事よ」
ベリアル「・・・大丈夫なの?」
リル「あのメアラが失敗すると思う」
ベリアル「・・・絶対無いね」
リル「でしょ?という事で、出来たらあたしも乗ります」
ベリアル「えっ!?危ないよリル・・・他の搭乗者が」
リル「そっちかい!」
ベリアル「・・・」
リル「・・・ネタが無いわね」
ベリアル「あんまり喋るとネタバレが凄い事になるし」
リル「おひらきね」
ベリアル「だね。それでは今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」
リル「あー、出来るだけ早く更新出来る様セフェラの尻を引っ張たきます・・・・・・ベリアルが」
ベリアル「ボクかい!」




