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辺境領リネルメ興隆記  作者: 常世神命
七章 大戦勃発 ~ザルバル戦役~
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三話 ザルバル戦役

ベリアル「いつもありがとうございます・・・ねぇセフェラは?」


リル「夏の暑さでヘバッてるわよ」


ベリアル「・・・まぁいいや」


リル「!いいのね!?」


ベリアル「それより、台風ラッシュだねぇ」


リル「そうねぇ。本来そこに在るべき物が無いから起きているのだけど・・・」


ベリアル「ああ、太平洋高気圧が日本の南方に無く東方に在るね」


リル「そう、今台風7号(16'8/15現在)がいる場所に太平洋高気圧が無いのよねぇ。あたしはその辺の事は知らないけど、エルニーニョみたいな地球規模の気象現象が原因なんでしょうねぇ」


ベリアル「だろうねぇ。話し変わるけど、今回はどんな話しなの?」


リル「今回は、あたしがラナバルラント国内に逆侵攻したお話しよ」


ベリアル「リルってば国王陛下になったもんね」


リル「そうよ。ザルヘルバ王国で一番偉くなったんだから、もっと敬いなさい」


ベリアル「・・・いやー・・・ねぇ。それより、言ってて恥ずくない?」


リル「恥ずかしいに決まってるでしょ!・・・こんなネタ振ったセフェラは後でぶっ飛ばすんだから!」


ベリアル ガクブル「そ、それでは本編をどうぞ」








5月28日  ラナバルラント国バテルク州レストリア村


あたしは今、ラナバルラント南部の州ふたつを制圧して、エルベリアとの国境の村である、レストリアに到着した。


()()と一言で言っても実際は、戦闘らしい戦闘は殆ど無く、この村に来る途中に在る、ダートスという城塞都市・・・と言っても人口三千人ほどしか居ないが。


ダートスには凡そ三千人の住民のほかに、当然兵士が居る。

数は二千。

装備品は槍や弓で、銃は当然無いし、あたしの軍が使用するまで、その存在自体知らなかった様だ。


これは、とりもなおさずラナバルラント中央政府が、地方に関心があるのが税だけで、まともな統治をしていない事の証左だ。


その為、ダートスの攻城戦は僅か半刻も経たず、ダートス側が開城した事に因り終了した。

まぁ、分捕って来た山砲150門の内、5門で砲撃した事もあるけどね。








24日にダートスに入城すると、城内は凄惨な状態であった・・・それは、王都ラグザーブルグよりも・・・







「ラセル・・・」


「ハイ・・・」


目の前に広がる光景は、言葉にする事も憚られる位酷い物であった。


あたしは、本隊師団の無線中隊の野営地・・・と言っても、本部の隣なのだが、そこに行き、その場で待機している士官に尋ねる。 


「通信機は使えるかしら?」


「あ、ハイ。問題ありません陛下」


「それなら、ザールラントに合わせて貰えるかしら?」


「了解しました。宰相閣下と連絡を取るのですね?」


「そうよ。お願いするわ」


「しばしお待ち下さい」


暫くすると、向こう側と合ったのかその士官は、あたしに向こうと繋がった事を知らせる。


「ありがとう・・・こちらラナバルラント南部侵攻部隊司令官のリルーエットだけど、ザールラント本部応答出来ますか?」


『こちら、ザールラント本部オペレーターのタシャウスです。司令官閣下。ご用件をお願い致します』


「タシャウスさん。早急に宰相であるメアラと、内務のサラを呼んで貰えるかしら?」


『了解致しました。暫くそのままでお待ち下さい』


暫くすると、あちらから発信がある。


『こちら、ザールラント本部より、ラナバルラント南部侵攻部隊応答出来ますか?』


メアラの声だ。


「とれるわよメアラ」


『リル様。いかがなさいましたか?』


「予備費はいくら残ってたかしら?」


『あと11億ズゼです陛下』


あたしが聞くと、サラがそう答える。


「サラ。それなら残り全てを使ってでもラナバルラントを盗るわよ」


『えー!!いくら何でも無茶苦茶ですよ・・・リル様。必要なのですね?』


サラとの交信に、メアラが割って入る。


「絶対に。是が非でもよ」


『・・・分かりました。直ぐにでも補正予算を組んでラナバルラントの民衆を圧政から解放しましょう。サラさん。そういう事だからお願いするわね。規模は・・・35億ズゼ。兵員は5万。木炭車を大増産させなさい。スナイドル銃の生産も急がせなさい。そういう事ですね?リル陛下』


メアラは一時(いっとき)の沈黙の後、矢継ぎ早に指示を出す。

どうやらあたしの思惑を理解してくれた様だ。


「・・・ありがとうメアラ。そうよ。もう我慢の限界だわ。同じ人なのに、どうしてああも虐げる事が・・・出来るの・・・ホントに・・・ホントに・・・」


あたしは、嗚咽混じりの声で訴える。


『陛下・・・やってやりましょう。このサラも非才の身では有りますが、粉骨砕身務めさせて頂きます。削れる所は1ズゼでも多く削って戦費に充てます。それに併せて戦時国債も100億ズゼ発行すれば、推測で160億ズゼ(約3,200億円)位は戦費に充てられると思います』


・・・嬉しいけどずいぶん無茶するわねぇ。

今年、322年の予算は凡そ191億ズゼだから、サラが集め様としている金額は、実に八割強に当たるわ。

・・・普段は、タレザの様なそういう素振(そぶ)りを見せないけど、根っこは同じなのねぇ・・・・・・め、メアラは大丈夫・・・よね?


「ありがとうサラ。戦費の方はお願いするわね。サラ。メアラに代わってくれるかしら?」


『ハイ。メアラさん。リル様が代わる様にと・・・リル様。代わりましたわ。それで、あと何か有りますか?』


「兵を集める・・・と言っても、指揮官が居ないのではないのかしら?」


あたしの記憶が確かなら、指揮官が出来るのは、あたし、タレザ、クレインの三人な筈よね?

えーと、ベリアルはタレザのストッパーとして一緒じゃないといけないし、メアラはザールラントを離れられなくて、ティアとサラは元々不得手だから論外。

ほら、やっぱり三人しか居ないわ。

・・・どうするつもりかしら?


『それについては、伝が有りますのでご心配にはおよびません』


そう、メアラは自信げに言った。







6月17日  ラナバルラント王国ロブロイ州ダソイ村


あれから、レストリア村に三千の守備兵を置き、そこから西回りに弧を画く様に進軍して来た。


この村は、アジェラル州との国境の村で、ラナバルラントに進駐して一番最初に占領した場所であり、ここで、新たに歩兵五個師団と合流する事になっている。


「・・・そろそろかしら?」


「どうでしょうか・・・」


あたしとラセルは、今日来るという、これからラナバルラント南西部への侵攻を担当する人物を、今日迄に完成した庁舎のあたし専用の執務室で待って居た。







日が高くなり、そろそろ六つ刻となりそうになった時、その人物はやって来た。


「失礼します。閣下に面会したいと言った者が来ておりますが」


あたし付きの従卒くんがそう言って来た。


ようやく到着した様ね・・・・・・昼時を狙った確信犯か!?


「リル様。声に出ていますよ」


!!

・・・

思考が言葉になっている事をラセルに指摘されてしまった。


「と、兎に角、入って貰って頂戴」


「承知致しました」


従卒くんが扉を開けると、ひとりの男性が入って来て、ラセルはその男性を冷ややかな目で見ているのが分かる。


その男性は、身長は1セル(約2m)はあろうかと思う位の高身長で、緑色の髪を短くまとめ、ガッチリとしていて、あれ?ひょっとしないでも脳筋?という位の見事な体型をしていた。


「はじめまして。オレ・・・いや、私は、今度こちらに配属になった、バルストック大佐です。以後、お見知り置きください」


「よろしくね大佐殿。あと、敬語は無理して使わなくても構わないわよ」


「え?そうですかい?そりゃ、堅苦しいの苦手なんで助かりますぜ大将」


そうあたしとバルストックが話していると、ラセルがその間に割って入り、再度バルストックを睨み付ける。


「おわ!ちょ、ラセル。何でお前がこんな所に居るんだよ」


どうやら、ラセルとバルストックは知り合いらしいわね。


「まぁ、いろいろ有ってね・・・それより・・・まぁ、察したわ」


そうラセルは言うと、目を逸らせ溜め息を吐く。

どうやら、ふたりだけではなくメアラを含めた三人は知り合いの様だ。







「それじゃ、今後の方針よ」


あたしは、各々の進軍ルートが書かれている地図を広げる。


「・・・そうすると、オレはラナバルラントの南西部から国境沿いに北進するんだな?」


「そうね。攻撃して来たのだけ相手して頂戴」


「まぁ、それはいいんだが、問題はこれだよ」


そう、バルストックが指したのは、ラナバルラント中西部に広がる広大な沙漠である。


その広さは凡そ350万平方km有り、日本の面積の約9倍、サハラ沙漠の約40%程も有る沙漠で、この度の異常気象に因り更に拡がったらしく、聞いた所に拠ると幾つもの村が沙漠に飲み込まれ、離村を余儀なくされた様だ。


北にはラナバルラント第二の都市ハレフ(人口約400万人)が在る為にその沙漠を、バルストックは歩兵を一個師団凡そ9,500人を引き連れて越えねばならない。

因みに、ラナバルラントの総人口は約6,800万人で、首都の人口は凡そ650万人程みらしい。


ザルヘルバの約五倍(保守派の地域を含む)程の総人口なので、潜在的には銃を殆ど所持していなくても、こちらに鎧袖一触で蹴散らされる事はそうそうあり得ないのだ。


「沙漠越えしなけりゃならないのか?このインフラのイの字も無い場所を越えるのは、自殺行為にも等しい・・・何とか別案は無いのか?」


「やっぱりそうなるのねぇ・・・わたしとしては、その()を作りながら進軍して欲しいのだけどね」


「成る程・・・道理で工兵が半分を占めている訳だ」


そう。

あたしとしては、バルストックにはラナバルラント軍の防衛の薄い西側に、鉄道を敷設しながら北へ進軍させる計画だ。


良くも悪くも、ラナバルラントの現政権は、内政を疎かにして軍拡に傾注していたので、ウチの地方以上にインフラが劣悪だった


道は至るところに窪みが有り均されておらず、川に架かる橋は木造の上老朽化が酷く、木炭車どころか馬車すら通れない。当然、急遽整備して木炭車が通行出来る様にさせる。


現時点では、アジェラルからこの村まで最低限の整備は終わっていて、そこから、バルストックは道を整備造成しながら沙漠を縦断北進し、あたしは先に首都に向け侵攻して街道の整備は、その後から追っかけて来る感じだ。







7月1日 ラナバルラント王国ドレフェイケ州ミヘーゼ沙漠南縁


「早くバラストを持って来い」


「枕木が足らんぞ。早急に手配しろ」


カンカン


バルストックの師団は本人の独断で4,500の護衛連隊を2,000にまで減らし、総勢7,500の工兵を三交代で昼夜問わず作業させ、ミヘーゼ沙漠縦断鉄道の敷設に腐心していた。


「しかし、あの嬢ちゃんもメアラと同じ位無茶言うな。2、3年は掛かる所を一年で上げろとか」


バルストックは苦笑しながらそう呟く。







7月5日 ラナバルラント首都ガレッゼレル近郊


「ようやく首都が見えて来たわね」


あたし達は今、首都からほどよく離れていて、尚且つ首都を一望出来る小高い丘に来ている。


「いつでも首都に砲撃する準備は出来ております」


そうラセルは言う。

ここから首都までは凡そ2,000セル(約4km)あり、今日明日にでも首都を砲撃しようかという最中、それはやって来た。






ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします・・・やあ、久し振りだね」


バルストック「まぁ、久し振りとも言えなくも無いか。でさぁ、大将知らないか?」


ベリアル「え?知らないよ。メアラに聞いたら?」


バルストック「・・・いやぁ・・・それは一寸・・・」


ベリアル「戦場無双のバルでも恐い者は有るんだね」


バルストック「・・・。でさぁ、オレってば、リルっちに侵攻しながらインフラ整備した上に、北の都市をこの一万弱で攻めろとか言われたんだけど」


ベリアル「そこまでは言ってなかったよ。取り合えずは南西部の地方都市(約40万人)を占領して、沙漠を縦断する鉄道を敷設しろ。とは言ってたけど・・・メアラぁ。一寸いi・・・」


バルストック「メアラは呼ばなくていいから・・・」


メアラ「ベリアル。何か有りましたか?・・・バル。あなたも居たのねぇ・・・・・・バル。この作戦考えたの私ですけど、何か有ります?」


バルストック「何もありません。粉骨砕身頑張らせて頂きます。それでは・・・」


ベリアル「・・・逃げたねぇ」


メアラ「・・・えー、男キャラが少ないという話しが有りましたのでの登場ですが、いかがですか?まぁ、戦後mobキャラに降格しそうですがw」


ベリアル「それでは、今後とも辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」


メアラ「次回は、閑話 エミル・ハーハ2になります」





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