二話 戦火が拡がりました
ベリアル「いつもありがとうございます。何とか今月中に上げれたね」
クレイン「かと言っても、セフェラ本人は出れんけどねぇ」
ベリアル「まぁ、馬車馬の様に・・・と言った所かな?」
クレイン「メアラとラセルのふたりで監視しているから逃げれんとは思うけど・・・」
ベリアル「それではどうぞ」
「はい。お初にお目に掛かります、メゼリエ王国第一王女ラセル=メゼリエにございます。以後お見知り置きください」
そうラセルはあたしに言った。
・・・仕方ない。何の運命のイタズラか分からないけど、上手くやればラセルを首班とした傀儡政権を、ザルヘルバの西に建てる事が出来るから、ここはラセルの思惑に乗っておこう。
「ありがとう。わたしはこの国の女王を務めている、リルーエット=リネルメよ。こちらこそよろしくお願いするわね」
あたしがそう言うと、ラセルの表情が僅かに強張るのが偶然だがわかった。
ん?
あ・れ?
ひ・ょ・っ・と・し・な・い・で・も・あ・の・お・バ・カ・は・何・も・話・し・て・無・い・なぁ。
タレザの方を見ると、やっぱりというか目が泳いでいた。
・・・まったく。タレザには後でO・H・A・N・A・S・Iが必要の様ね。
「よ、よろしくお願いします」
「よろしくラセルさん」
あたしが握手のために手を出すと、ラセルは若干戸惑いながらもあたしと交わした。
・・・傀儡政権もいいけど、このザルヘルバに亡命政権を建てるのが先かしら。
ラセルは、マチルダに歓待させ、あたし達は今後について話しあった。
「さて、これからどうしましょうか?」
「そうですね。今、確認させていますが、現時点では亡命政権を建てるのは具合が悪いですね」
「・・・やはり、人気かしら?」
「いえ、ラセル女史の人気自体は低くはありませんが、メゼリエ王家の人気は全くありません・・・というより、シンパは粛清対象ですね」
「ファシズムメゼリエでも?」
「はい」
うーん。思ったより状況が悪いわねぇ。
「・・・ラナバルラントは現状維持。クレインには出張って貰ってディエッセルで防衛戦、タレザに国内の平定して貰う・・・と言った所かしら?」
「・・・そうですね。現状ではそれしかありませんね。タレザ殿の平定が終わり次第、ラナバルラントに侵攻して貰って、現地に親ザルヘルバ派による傀儡政権を樹立させてから、タレザ殿には取って返す刀で共産メゼリエに逆侵攻して貰う・・・と言った所でしょうか」
まぁそうよねぇ。
兵器の更新は行われているけど、まだ半年じゃ済まないらしいし、兵員も二方面作戦・・・内戦の処理があるから三方面へ兵が割けるほど居ないし、元改革派の領地であった州のインフラ整備(主に街道と鉄道)が必要だし・・・お金がいくら有っても足りないわねぇ。
「サラ。予備費は・・・」
「出来るだけ来年に繰越したいですよね?」
「公共事業費は・・・」
「削れると思っているのですか?」
「増・・・」
「したら、王国経済は逼迫してしまいますね」
「それなら貨・・・」
「メアラさんに聞きましたけど、インフレ?でしたっけ?急激な物価上昇に因り、王国経済が大混乱しますね。ドンカッター商会の会頭さんはどう思うのでしょうかね?」
クッ。取り付く島も無いとはこの事か。
とは言え、サラの言う事も分かるのよね。
どの国もこの世界的な天候不順で懐が寒そうだし、手っ取り早く解決するには他国に攻めるしかない。
タレザには国内平定
クレインには共産メゼリエからの防衛戦
・・・本来なら今すべきではない、ラナバルラントへの侵攻しか無い・・・のかなぁ。
因みに、ドンカッター商会は、前会頭が健康上の理由で退任し、後任には商会内で功が一番のドルトンに決めたらしい。
ドルトンがドンカッター商会の新会頭様だ・・・似合わないなぁ。
それで最近支店の方に居ない日が多いのね。
あたしはメアラをじっと見る。
「・・・・・・・・・ハァ。仕方ありませんわね・・・サラさん。予備費からいくら戦費に回せますか?」
「えっ!?よろしいのですか?」
「仕方ありません。後手に回る訳にはいきませんので、ラナバルラントへの侵攻を陛下にやって頂きます」
「!!分かりました。今年の予備費は15億ズゼ。そこから戦費に回せ分は、今のところ最大で8億ズゼでしょうか」
「タレザさん。陛下に兵員はいくら回せますか?」
「兵員でしたらいくらで・・・」
タレザがいくらでもとバカな事を言おうとすると、メアラはタレザを冷たい目差しで見る。
「い、いえ、いい所三万位です」
タレザは慌てて訂正する。
・・・しかし、三万かぁ。ちょっと心許ないわねぇ。
「タレザ。ちょっと少ないけど、これをエルベリアへ接続するために限定したら?」
「・・・・・・ラナバルラントの平定と言わず、そう言う事でしたら十分過ぎる位です」
タレザは、あたしの問い掛けに、少し考えるもそう答える。
「ともすれば、それなら戦費の圧縮も出来ますので、4億ズゼで戦費の編成が可能です」
タレザの答えに、サラはそう続ける。
「しかし、アジェラルからラナバルラント南部へ侵攻して、エルベリアへ行くのは良いとして、どの様にしてリネルメの大森林以上に広大な森林を抜ける。というのですか?」
そこでメアラがそう問い掛けて来る。
それもそのはず、エルベリアの面積は四国程の大きさながら、ラナバルラント南部の国境から、エルベリアの首都レバオラの近郊の間にはその国土の半分を占める・・・と揶揄される位広大な森林が横たわる。
そこをそのまま進軍しよう物なら、平原を同様の距離歩いたのとは比べ物にならない位時間が掛かるのは当然と言えよう。
しかし、どうして進軍に困難なのに、エルベリアに侵攻するかと言えば、エルベリアに送った諜報員に依り、エルベリアには様々な鉱物資源が在るらしいという報告が有ったからだ。
らしいとは言え、鉄鉱石と石炭の有望な鉱脈は、手付かずの状態のが確認されているし、銅に関しては、細々ながら採掘されていて、技術的な面に難が有る為に、細々となっているが、ザルヘルバ王国の全てを合わせても足元にも及ばない位の埋蔵量が有るらしいという事があるので、ほかの鉱物についても可能性が有る。
という報告が有った為だ。
しかし、当然と言うか、あの森がネックになって来る。
あの森を三万で進軍するのは無茶があるのだが、エルベリアの総人口自体は一万足らずなので、一割の三千も居れば容易く占領出来るだろう。
それで居残りは遊ばせておく訳にもいかないので、一万はラナバルラントからの反撃(と言っても、その頃にはタレザが平定しているだろうから、こちらに来る敵は小数になるのが予想され、その一万の半分五千でラナバルラントの首都に向け進軍・・・という事も出来なくも無いが、任せられる人が居ないのだ)に備え、残りは森を切り開きエルベリアの首都レバオラまでの道をつくる作業に従事して貰う事になる。
「大した抵抗は見られませんねぇ」
そう、あれから一週間準備に費やし、5月10日三つ刻半に出発する事が出来た。
今日は14日。
12日に越境し、ラナバルラントに侵入したが、この二日間抵抗らしい抵抗は無く、寧ろ大半の町や村では歓迎ムードな為、とある町の責任者に問い質した所、七割というバカげた税を掛けられた上に、若い男性は例外無く徴兵され、須くどこも青息吐息だった。
でだ。今発言したのはラセルで、ラセルは何の因果か王家再興は断念して、あたしに仕えると言って来た。
・・・とは言うもの、いきなり役付きになるのは厳しいので、あたしの部隊で兵站の責任者に抜擢する事にした。
「そうねぇ。それよりも町や村の疲弊具合が深刻だわね」
「そうですね。いままで良く保ったものですよ。今、緊急に物資を輸送していますが、行き渡るまでには今暫く掛かりますね」
どこも、国の悪政に因り住民は痩せ衰え、皆塗炭の苦しみを味わっていた。
ラセルは、あたしが言うよりも早く、メアラに連絡して輸送部隊だけを五千と相当量の援助物資の手配を済ませていた。
・・・ん?
・・・あれ?
あたし要らなくない?
4月20日ファシズムメゼリエ、エーベレンス東部へ侵攻。
この知らせがあたし達の元に入るのは、ファシズムメゼリエがエーベレンス東部を併合した後更に半月経ってからになるのであった。
ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします。さて、共産メゼリエがこちらに攻めて来る10日ほど前に、ファシズムメゼリエはエーベレンス王国に宣戦布告、即日侵攻して、リルがラナバルラント南部の攻略している時分はどういう感じかな?」
クレイン「国内外の諜報を任されている身として言い難いんだが・・・分からん!・・・と言っても本来は第二計画発効後、一週間以内だから、エーベレンス国内にウチの諜報員が入国するのはまだ先なんだよな」
ベリアル「ああ、第二計画自体まだ出した所だもんね」
クレイン「そうなんだよな。メゼリエ革命に因って早急に諸外国に諜報員をバラまく事が決定して、第一計画はラナバルラントと共産メゼリエにファシズムメゼリエ。これが発効したのが5月6日だ」
ベリアル「ああ、今月の下旬位にならないと、それなりな情報が得られない訳か・・・それより今更なんだけど、ガチでネタバレしてない?」
クレイン「・・・そ、それでは今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」
ベリアル「あと、ガルダフェリナ年代記と異世界に飛ばされたんだが、何とかやってみるか略して異世界飛何もよろしくお願いします♪」




