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辺境領リネルメ興隆記  作者: 常世神命
六章 軍靴暗雲
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間話 革命

ベリアル「いつもありがとうございます・・・リルぅ。セフェラは?」


リル「・・・まぁ、いつも通りというか・・・」


ベリアル「エスケープしたか・・・気を取り直しまして、前回から数日でお届け出来ます事を誠に喜ばしく思います」


リル「いよいよ梅雨よねぇ。ザルヘルバには梅雨みたいなのは有るの?」


ベリアル「気候からすれば、ザルヘルバには梅雨みたいなというか、モンスーン気候自体は有るよ。だけど、王都から西はステップ気候で東は温暖湿潤冬季小雨気候が主だから、あまり気にしなくてもいいかな?」


リル「でも、ザールラントは夏は南西、冬は北寄りの風が吹くわよ。だから、モンスーンつまり季節風に因る気候に対しての影響は無視出来ないとは思うの」


ベリアル「ふーん。さわりしか知らなかったけど、結構影響あるんだね。方やとある地方では年の三分のニが雨だとか言ううんざりな所も在るって話しだし・・・と、逸れたね。で、今回は【革命】という事だけど?」


リル「あたしの出番無いのよ!」


ベリアル「?・・・いやいやいや、そう言う事じゃなくて、革命がザルヘルバ王国の外で起きたよ。という話しでしょ?」


リル「・・・いいのよ。あたしが主人公なのに・・・」


ベリアル「・・・もういいや。それでは、閑話ならぬ間話 革命をどうぞ」







「パンを寄越せ!」


「仕事を寄越せ!」


王宮前には、デモ行進する民衆であふれかえっていた。

その規模は数万とも数十万とも・・・

先頃発生した天候不順に因る大凶作で、巷には食料が圧倒的に不足していた。


「・・・・・・であるから、この度の飢餓は、民衆を省みず、税を絞り取り己の私腹を肥やすだけには飽きたらず、我々の口に入る筈の政府買い上げ小麦の横流しにある。このような腐り切った政府を我々は打倒しなければならない!」


デモに集まった民衆に演説をしているのは、メゼリエ王立大学で政治学を教えている、アゼレバート=ルーベンという者である。


現在、メゼリエ王国では役人の汚職が酷く、賄賂目当てに不当な逮捕や、政府で買い上げしている小麦や塩の横流しが横行している。


当然、この世界規模の大凶作も相まって、小麦や塩の価格は暴騰しているので、庶民の口にそれらは中々入らず、結果、結構な餓死者が出ている。


この騒動に、軍にも同調する者が現れ始め、このデモの一ヵ月後には、300年の歴史を誇ったメゼリエ王国のロバモブ王朝は崩壊、王家に連なる一族郎党は遠からず捕縛、その後、公開銃殺刑となる。


ただ一人、ラセル=ロバモブ(26才)を除いて・・・


王朝が倒れると、ルーベンの教え子の一人のヤゼック=ツェリーズを首魁とした、メゼリエ社会主義共和国が成立する。


成立して間もなく、メゼリエの東に在る中規模都市である、ナセルでメゼリエファシズム党党首のゲネル=マッシーブを総統としたメゼリエ人民共和国が興り、事実上メゼリエ王国は分裂する事になる。





「ここまで来れば大丈夫かしら・・・」

私は王宮を協力者の協力を得て命からがら脱出し、今はザルヘルバ王国側の国境の町ディエッセルに来ていた。


私自身は王家でも珍しい良識派として慣らし、何とか現状を打開しようと動いていたが、奮闘虚しく今日に至った。


「さて、どうしたものか・・・」

私は命からがら脱出したが、その為当然旅行に行く訳では無い為、先立つ物は殆ど無い。


有るのは、私付きの侍女メーニッヒと数枚のメゼリエ金貨だけである。

メゼリエ王国はザルヘルバ王国と正式な国交は無いが、民間レベル、つまり商人はそれなりには行き交っているので、この金貨をザルヘルバ王国の通貨と交換しようと思えば可能なのだが、相手を選ばねば足元を見られ、不当に安い比率で両替されかねない。


しかし、私には()()が有った様だ。


「そこの方。いかがなされたか?」

声の主は、軍隊の将軍だった。

将軍の名はタレザと言い、何でもこの地方の反乱勢力の鎮圧に来ていたらしい。


私は、本来なら警戒してしかるべきなのだが、将軍に事情を話した。


「フム。そしたら暫しお待ち頂ければ、我が主の元まで案内致しましょう。何、大して時間は取らせませんよ。数日お待ち下さい」


将軍はそう言うと、私を部下に預け踵を返す。





それから数日後。タレザ将軍は反乱勢力を見事鎮圧してみせ、私の所に戻って来る。


「お待たせ致しました。それでは向かいましょう。皆の者。後を頼むぞ」


「了解致しました」

将軍麾下の将校は深々と頭を下げる。


(中々凄い方ね。聞いた話しだけど、それを総合的に判断すれば、私の国ならば、鎮圧に数日どころか一ヵ月は掛かろうという物。それに、銃も我が国以上に持っている様だし、こちらの方がより洗練されているわ。兎に角、私がこの国に入ったのは調べればいずれ分かる事だから、この調子だと開戦の口実にされかねないわね・・・・・・しかし、かの御仁はその辺りの事はわからない様ね。この国の国王には悪いけど、巻き込ませて貰うわね)

私は、これからの事について思案を巡らす。





「凄いわねぇ」

ディエッセルを発ち数日間馬車に揺られ、ゾアレという町に到着したのだが、その発展ぶりを見た私は感嘆の声を漏らす。


聞けばこのゾアレという町は、観光地として開発されいるらしく、宿泊施設に案内されている間も、このご時世にも拘わらず、多くの観光客で賑わっている。


しかも、観光地の多くは金持ちではないごく普通の民衆である事に更に驚く。


ゾアレで一泊し、また馬車に乗るかと思ったら、今度は鉄道という乗り物に乗るという事だ。


「ささラセル殿こちらに」

将軍は私を列車の中に案内する。


「凄い乗り物ですね」


「そうでしょうそうでしょう。この鉄道という物はとても速い上に、大量に物資を輸送出来、このゾアレからこれから向かうザールラントまで馬車で数日掛かる所、今は・・・四つ刻(午前八時)ですから四刻(約八時間)後の八つ刻(午後四時)にはあちらに到着します」


八時間!?


何と言う速さだろう。

武器もそうだが、この鉄道に因り戦争その物が変わってしまう。


私はとんでもない国に来た様だ。





列車に乗ってニ刻半すると、ロンテという町に着いた。

ここで多少停車して、またザールラント目指して発車するらしい。


とも言えば、車窓からみるロンテの街並みの異様さに目を奪われる。


「将軍。この町はどう言った町なのでしょうか?」

時間待ちがてら、私はタレザ将軍に聞いてみる。


「この町ですかな?このロンテは製鉄の町でして、この国で使用される鋼鉄のほぼ全てを生産しております。生産量については極秘でして・・・」


「将軍。実は知りませんよね?ベリアル閣下やメアラ首相に内政関係全て丸投げですよね?・・・まったく、いつも閣下からグチられるの私なんですから、その辺しっかりして下さいよね。まぁ、尤も極秘なのは確かですけどね」


「うるさい。結果が同じならば良いではないか」

将軍は、副官の将校に盛大に突っ込まれる。

将軍。それは同じではないかと思いますよ。


「あれ?いいんですか将軍。()()陛下からその辺の事頼まれているから、言っちゃいますよ」


「ひ、卑怯だぞ貴様!陛下を持ち出すなんて」


「陛下は将軍の泣き所ですし、そこは上手く使わないと。というか、将軍がそちら方面の事をもっと習熟して貰えれば、そんな事は無いのですけどね。将軍の急な転戦に対して兵站を整えるこちらの身にもなって下さい」

この副官、中々言う様だ。

方や将軍の方は、言い返せず唸っていた。


ともすれば、将軍は不意に外を見る。

視線の先には一人の女性が居た。


「これは奇遇ですなハッシーシュ殿。こちらへはいか様で?」


『お嬢様からのご用で来ましたが、足し終えたので戻る所です。ところでそちらの方は?』

ん?ハッシーシュとか言われた女性の声が変よね?


「紹介が前後してしまってすまない。こちらに居るのは隣国メゼリエからいらした、ラセル=ロバモブという名の方です」


「お初にお目にかかりますハッシーシュ殿・・・失礼ですが、ハッシーシュ殿はひょっとして・・・」

私は気になっていた事をハッシーシュ殿に聞いてみる。


『ハイ。ラセル殿のお察しの通り、私は精霊ですよ・・・ロバモブ・・・向こうの王家縁の方ですか』

ハッシーシュ殿は、ハァとため息を吐いた。

恐らく、私が居る事の危険性について分かる様だ。

尤も、軍の将軍であるタレザ殿が分からないのがおかしい話しなのだが・・・


『つい数日前に、かの国で革命が起きた様で、王家に連なる者はすべからく処刑された様ですが・・・タレザ殿。まさか知らないという事は無いでしょうね?』

そうハッシーシュ殿が言うと、タレザ殿の目が泳ぐ。

どうやら知らなかった様だ。


『・・・リル様にはこの件もご報告せねばなりませんね』


「い、いや。後生だから、リル様には内緒にして貰えないか?」

ハッシーシュ殿が言うと、タレザ殿は狼狽する。


『・・・貰えないか?・・・どうやらタレザ殿は物の頼み方を知らない様ですね』


「!!。申し訳ありませんハッシーシュ様。どうか内緒にして下さいませ」

タレザ殿は途端に卑屈になって、ハッシーシュ殿に懇願する。


私は目の前の出来事を見なかった事にした。





その日の夕方、私は、ザールラントに到着したのであった。





ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらよろしくお願いします・・・ったく、あのリル大好き脳筋女は!」


リル「新しい人が入って来るの?」


ベリアル「戦争を背負ってね」


リル「えー。何それ」


ベリアル「まぁ、僕はラセルとは知らない仲じゃないけどね」


ラセル「ご紹介にあずかりましたラセルにございます。本姓は違うのですが、今回、この物語では、ロバモブ王朝の唯一の生き残り。という事で登場させて頂きますが・・・時に、セフェラ様は?」


ベリアル「僕達に丸投げしてエスケープしたよ」


ラセル「これは後でHANASIAIが必要ですね」


ベリアル ガクブル


リル「そ、それでは、今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」


ベリアル「よ、良かったら、ブックマークまや評価を入れてくれたら嬉しいな」


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