六話 王都は荒れていました1
ベリアル「いつもありがとうございます・・・えー、へぼ作者が居ないので、僕が今回は仕切ります。で、読者の皆様のお陰で、一周年を迎えれたというのに、何やってんのかなぁ」
ルシフェル「まぁ、いいんじゃないの。あたしからしたらやり易いし。それで、リルが踊り出す所から、芥川也寸志作曲のラ・ダンスがBGMだって?何言ってるんだか・・・」
ベリアル「大体6・7分の曲だけど、いい曲だよ。八甲田山とかトリプティークとか有るけど、僕はこの曲好きだな」
ルシフェル「あいつ、入野義郎作曲の小管弦楽のためのシンフォニエッタって曲も聴いてたな」
ベリアル「まぁ、セフェラはA・I・ハチャトゥリアンの曲が一番好きみたいだけど」
ルシフェル「あれ?この前は、ピアソラがいいだの、更に前は、ショスタコだの言ってたけどなぁ」
ベリアル「基本、セフェラは八方美人だからねぇ」
ルシフェル「クラシックに興味ない読者様には、どうでもいい話しだがな」
ベリアル「それでは、六話、王都は荒れていました1をどうぞ」
ザールラントを出発してから四日経過し、ようやく久方ぶりに王都に到着したのだが、到着して先ず気付いた事は、保守派の領地に居た資産家がいくらか逃げ込んだ筈なのに、以前の様な活気が全く無い。
行き交う人の姿が全く見えないのだ。
それに加えて城門に衛兵が居ない。
交代にしても、次の者達が来てからでないと持ち場を離れる事が出来ない。
にも係わらず一人も居ない。
「リル様。やはり深刻な状況ですわね」
メアラは険しい顔付きで言ってくる。
「王都に居る諜報員からの連絡が途絶えた事で、ある程度は考えていたけど、これは酷いわねぇ・・・・・・だとすれば今、中には入らない方がいいわね」
「そうですわね。今日は行軍の疲れも有るでしょうし、城外で夜営して、明日改めて入城した方が賢明ですわね」
顎に手をやり思案するも、どうやらメアラの言う通りにしておいた方が無難な様だ。
夜営の支度も終わり、あたし達は少し早い夕食を摂りながら、明日以降の事について相談する事にした。
「さて、明日からの話しだけど、どうした方がいいかしら?」
「先ずは城内の状況把握からでしょうね。それから宰相府に行き、閣下と今後・・・と言いたい所ですが、現状を踏まえますと、閣下の容体は随分前から芳しくないと推測されますわ。でなければ、王都がこのような状況に陥る事は有りませんもの」
「最悪、閣下はすでにこの世に居ないと」
「その可能性が高いですわね」
「となると・・・ルシフェル。医者として見た時、このまま城内に入って大丈夫かしら?」
「・・・あたしの私見で言わせて貰うと、疫病が蔓延している恐れが有るから、オススメ出来ないし、諜報員からの連絡が途絶えた原因もそれである可能性が高いが、如何であろうかねぇ」
ルシフェルは、いたずらっぽい顔付きで、再びこちらに水を向ける・・・というより、メアラに向かって、と言った方がいいだろうか。
「そうですわね・・・明日入城するのは、リル様と私とルシフェルの三人。残りの者は、この場にて待機という事になりそうですわね」
メアラは、考え込みながらそう言う。
「そうねぇ。確かに主だった面子が全員という訳にはいかないわねぇ・・・悪いけど、ティアにはここに残って欲しいのだけどいいかしら?」
「仕方ないよね・・・分かったよ。ここに残ってリルの帰りを待ってるよ・・・でも、携帯みたいのが有ればなぁ」
「そうよねぇ。有ればわたしも安心出来るのだけど・・・」
「有りますよ」
「えっ?」
「有りますよ」
「何が?」
「さすがに携帯電話とはいきませんが、無線機の様な通信手段なら有りますよ。通信限界距離は2500セル程ですね。城内が以前のままで有れば、ここからでしたら主要施設は殆んどカバー出来ます」
あたしとティアが残念がっていると、メアラが唐突にそう告げる。
・・・何?遠距離の通信手段が有るだとぉ!
しばらくあたしとティアは呆然とするのであった。
件の通信機器は、魔法の力と地球の知識を合成して作った物らしい。
魔力が無いと使えない。
という欠点は有るが、あたしもティアも魔法はそれなりに使えるから問題ない。
使い方は、使用時に魔力を送り込むという事以外は、トランシーバーを使うのと一緒なので、難しい操作などが無かったから、ホッとした。
え?あたしもメアラには色々突っ込みたい事はいっぱい有るけど、こういう事は突っ込んだら負けなので、そう言う物だと無理矢理自分に納得させる。
一通り食事も終わると、あたしは唐突に踊り始める。
これからの事への不安や、より良い方向へ向かって行く様に。
そして、皆の息災の祈りを込めて、それを踊りにぶつける。
ルシフェルとメアラが、笛やギターみたいなのを取りだし、演奏し始める。
あたしは、それに合わせて、より強い思いを込めて踊る。
たき火の灯りに彩られ、リルーエットの踊る様はより幻想的に見えた。
しばらくすると、兵士達が呟き始める。
「この国の王様何て見た事無いけど、俺達の王様はリルーエット様しか居ねぇ」
「そうだそうだ。リルーエット様のお陰で、親類縁者皆腹一杯飯が食える」
「ウチはここに来る前に、五人目のやや子が産まれたさ」
「おめぇは頑張るなぁ。でも、それもリルーエット様あっての事だよな」
「然り然り。リルーエット様のお陰で、飢える者が居なくなり、病気になってもお医者様に診て貰える。ガキ供には学校って所で字さ教えて貰える」
「オレなんか、この間ゾアレって町に家族で行って温泉って言う風呂に入って来たよ。日頃の疲れがとれるし、メシは旨いし、この世の極楽かと思ったさ」
「聞いた事は有るけど、そんなにいい所か?」
「いい所だぞ。朝三つ刻に乗り合い馬車でザールラントを出れば、暮れ八つ刻にはあっちに着く。おめぇも金貯めて、一度家族で行ってみろ。お一人様馬車台込みで400ズゼで行けるぞ」
「そだな。そんな値段で行けるのなら、金貯めてかかあやガキ供連れて一度行ってみるか」
「こんな旅行なんて事が出来る様になったのも、リルーエット様のお陰だなぁ」
「そうだなぁ。昔は旅行どころか、その日食うメシにも事欠いたのによ」
この世界では、何か用事が有って、隣村などに行く事は有ったが、旅行に行く習慣は皆無であった。
リゼルアでは、ゾアレ市の観光開発の事も有り、ゾアレリゾート完成当初は、王都の富裕層に限られていた旅行だったが、領民が豊かになって来るにしたがって、リネルメ旅客のパック旅行の効果も有り、最近では、海外こそ行かないが、労働者の中にも国内旅行に行く者が増えているのだ。
「それにしても、本当に、どんなに着飾ったどの女よりも、リルーエット様ほど美しい女性は見た事無い」
リルーエットはひとりの人として皆を惹き付ける。
本人は知らないが、兵士は元より、領民の間でのリルーエットは、絶大な人気を誇っていた。
皆、リルーエットが貴族であるのに恥も外聞も無く、自分達の為に駆けずり回る姿に、常日頃から感謝をしていた。
その噂を聞き付け、一家で、一族で、住み慣れた故郷を離れリゼルアにやって来る者は後を断たない。
その証拠に、世界が異常気象に因り混迷するこの最中、危険な夜にも関わらず、街道を行き交う人が途切れる事は無い。
「リルーエット様は、ああ仰ってたが、オレは付いて行くぞ」
「オレだって、あの何があるか分からない所に、リルーエット様達三人だけで行かす訳にはいかねぇ。そんな事したらかかあに怒られてしまうだ」
「違ぇ無ぇ」
酒こそ無かったが、兵士達は和やかに語らい、そうして夜はふけてゆく。
ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などありましたらお気軽にご連絡ください・・・えー、引き続き、後書きも僕が仕切ります・・・って、知らないよ僕は・・・」
リル「王都の中に入りたくないんだけど」
ベリアル「仕方ないよ。したら話し進まないし」
リル「えー。大丈夫なの?」
ベリアル「そこはご都合主義ってやつじゃないの?」
リル「いつもそれで強引に話しを進めたら不味いんじゃないの?」
ベリアル「成る様にしか成らないよ」
リル「・・・・・・兎に角、今後とも、新米辺境領主リルーエットの、異世界奮闘記をよろしくお願いします」
ベリアル「ブクマや評価を頂けましたら嬉しいです」
リル「そうそう、ガルダフェリナ年代記の方もよろしくお願いします」




