六話 砂漠を開発しました5
タレザ「いつもありがとうございます・・・常世殿。私とリル様がイチャイチャするシーンが無いでは無いですか!」
リル「あたしがあんたとイチャイチャする訳無いじゃない。ややこしくなるから、あんたは黙ってなさい」
タレザ「ハイ」(シュン)
常世「何とか、一週間以内に上げれました」
リル「まぁ、当然よね」
ベリアル「毎日投稿している方に比べれば、大した事無い量だよね」
リル「兎も角、六話、砂漠を開発しました5をどうぞ」
それから、更に三ヶ月程経つと、人口の少なかったラゼリアにも、他所から仕事を求めて、多くの人がやって来る様になってきた。
あたしが来てから九ヶ月が経ち、ラゼリアの町は当初の約五倍程に膨れ上がった。
砂漠の農地化と言っても、作付けしているのは、主に油ヤシが殆どで、次には柑橘類と続き、穀物は一切無く、野菜が細々と生産される状態だ。
当然、小麦や豆などの穀物や肉類に、生活雑貨はラゼリアラント以外から持って来るほかない。
それで、ドンカッター商会の支店を、ラゼリアに誘致する為の交渉をしていたのだが、ようやくそれが実り二ヶ月前に小さいながらも、ドンカッター商会ラゼリア支店が開設された。
これに因り、今までラゼリアファームとラゼリア油脂の従業員の給料の一部を・・・というか半分を今月迄食料で支給していたのを、来月分から全て現金で支給する事になった。
「ラゼリアファームとラゼリア油脂の二社の運営資金は大丈夫でしょうか?」
経営なんて経験した事が無くて不安なのか、タレザはあたしに聞いて来た。
「タレザ。それは、メアラに聞いた方が早いわよ。まあ、ラゼリアファームで掛け買いした後、ラゼリア油脂で掛け売りして相殺しているから、実質現金が必要なのは人件費だけね。それに、貴女は、わたしが治める辺境領の、治安の責任者なんだからね。心配してくれるのは嬉しいけど、今、ラゼリアは急激に人口が増加している。わたしの予測だと半年後には、今より、倍とは言わないまでも、八割増し位にはなるわよ。砂漠の農地化一辺倒で、都市計画をおざなりにしていたツケが、今後乗し掛かって来るわ。今、メアラに早急に方策を練って貰ってるわ」
「そうでしたか・・・分かりました。しかし、法ではこれ以上兵は増やせませんが」
「それが、そうでもないわ。国法の書かれている書物を取り寄せ、わたしとベリアルで協議した結果、木の棒の様に金属製の刃が無い物なら、装備として大丈夫という見解に至ったわ。兎に角、現在、五百名募集しているのと、治安部隊の本部とする建物を、ラゼリアの中心部に作っているから、貴女には、その部隊の統括をしばらくお願いするわ。ゆくゆくは、辺境領全体にそういった仕組みを作るから、その時は、その組織の統轄をお願いするわね。ちなみに、わたしの護衛の任はそのままでね。でも、今後治安の方に集中して貰いたいから解くわよ」
「!?そ、それは、私は何か粗相致しましたでしょうか?」
「ん?何を言っているの?そんな事無いわよ。それどころか、良くやってると思うわ」
「それなら、何故、リル様の護衛の任から私を解くのでしょうか?考え直して貰えないでしょうか?」
あたしと離れたくないのか、タレザが懇願してくる。
「現状のままだと今後、領内の治安が悪化するから、貴女には、領内の治安が悪化しない様に、これから結成される治安部隊を統括して貰いたいのよ。この、治安の問題は、辺境領の経済発展にも影響する大事な事だから、信頼出来る貴女に頼みたいのよ」
「リル様ぁ。私は貴女から離れたくないですよぅ」
タレザは、泣きながらあたしにすがり付く。
「・・・仕方ないわねぇ・・・分かったわ、このラゼリアで何とかなる様に手配するわ。それでも昼間は、部隊の訓練をしてよね」
「良かった・・・」
あたしの話しを聞いて、タレザはホッと安堵する。
数日後、ラゼリア市内から少し離れたあたしの拠点前に、250名の治安部隊のメンバーが集められた。
あたしの拠点前は、縦50セル、横150セルの平らな砂地に芝を敷き詰めていて、ベンチとベンチが日陰になる程度の日差しの有る場所が、その周囲に何ヵ所か有り、さながら公園の様な感じになっている。
当然、この場所はあたし個人の持ち物ではなく、領政府の持ち物になっているので、通常は一般に開放している。
今日は、辺境領の治安部隊の発足式の為、四つ刻から一般の人を入場禁止にしている。
あたしはというと、拠点つまり辺境領公邸の窓越しに、タレザの勇姿を眺めている。
あたし自身、公邸の執務室で領主と農務卿の仕事をしている。
つまりデスクワーク中だ。
最初の方こそ、ラゼリアファームの従業員に農業指導をしたり、自身で従事したりと、六つ刻迄は外に居たが、今は四つ刻から、昼食時間を挟み、八つ刻迄一日中書類仕事に追われる日々だ。
(ああ、タレザが演説してるわ。それにしても、予想外に砂漠の農地化にお金が掛かるわねぇ)
そう、あたしの想定以上に、砂漠の農地化にお金が掛かっているのだ。
何も植物の生えていない不毛の砂漠を、農地にする訳だから、莫大な費用が掛かるのは覚悟していたし、そのために予算も組んだ。
ほら、そこ、組み込むのに失敗して金欠になってたんじゃないのとか言わない。
兎も角、スタートしてから早十ヶ月。
今年ももう残り三週間程になった。
あたしは、1000万ズゼ規模の費用を想定していたが、この十ヶ月の間に消費した費用は、倍近い1800万ズゼを既に使っている。
リネルメ地区の公共事業を幾つか凍結して、何とかその穴埋めをしているが、農地化出来た面積から言えば、砂漠全体の10%処か5%にも満たない。
この状況だと、最終的には50億とも、100億とも言う位掛かってもおかしくない。
タレザには言っていないが、ラゼリアファームの経営は芳しく無い。
ラゼリアファームは、前述の費用の内、800万は領政府からの借り入れ、つまりは借金だ。
収穫される油ヤシの実や柑橘類は、ラゼリア油脂やドンカッター商会に卸しているが、そこで売り上げた200万は農地化や人件費に回され、300万程足りない分は、金額分の社債を発行して、ラゼリア油脂が買い取るという形で何とか回している。
回しているが、大赤字なのは明らかだ。
ラゼリアファームを一時的に領有化するか、農地化するペースを落とすかしないと、二年目は迎えられない。
ラゼリア油脂は、ラゼリアファームから150万で仕入れた油ヤシから、油を抽出してそれを750万でドンカッター商会に卸している。
これから、ラゼリアファームの社債の購入費用と人件費合わせて380万を差し引いて、今年は220万の黒字だ。
大丈夫じゃん・・・と言いたい所だが、初期投資に500万掛かっていて、全て領政府からの借り入れになっているので、まだ280万・・・ああ、法人税を入れ忘れた。
法人税は、純利益の25%だから55万になるから、335万借入金が残る事になる。
ちょっと纏めてみる。
ラゼリアファーム
総資本・・・・・1,300万
負債
借入金・・・1,100万
未払税金・・ 0(赤字なので免除)
純資産
資本金・・・ 500万
剰余金・・・- 300万
総資産・・・・・1,300万
流動資産
現金・・・・ 100万
棚卸資産・・ 50万
固定資産
土地・・・・ 300万
建物・・・・ 50万
樹木・・・・ 800万(油ヤシと柑橘類の樹木)
ラゼリア油脂
総資本・・・・・1,020万
負債
借入金・・・ 500万
未払税金・・ 55万
純資産
資本金・・・ 500万
剰余金・・・- 35万
総資産・・・・・1,020万
流動資産
現金・・・・ 220万
有価証券・・ 300万
棚卸資産・・ 150万
固定資産
土地・・・・ 100万
建物・・・・ 250万
ここで重要なのは、剰余金の項目だ。
この剰余金がマイナスの間は、どれだけ会社の保有する現金等が有っても、会社が儲かっているとは言えない。
ラゼリア油脂は、現在は剰余金がマイナスでも、油の価格が暴落しない限り、来年中には剰余金がプラスになる。
しかし、ラゼリアファームは一次産業なので、ラゼリア油脂やドンカッター商会に収穫物を売却しても、大したお金にはならない。
来年の推定売却益は300万位が精々だと思っている。
これから、人件費を差し引いかないといけないので、債務超過な状況では、現状維持で早く借入金を精算するか、領有化するかしかない。
だが、借入金は領政府とラゼリア油脂から、つまりは、あたしからすれば身内からの借金なので、有る時払いの催促無し。
という事も出来る。
但し、サラが煩いだろうが・・・
さて、こうして、二社を貸借対照表で簡単に纏めてみて、問題点やこれからの指針も見えて来た。
(ラゼリアファームの赤字分は、ラゼリア油脂の黒字分で穴埋めするしか無いかなぁ・・・まぁ、ラゼリアファームを一次領有化しないで済む事が分かっただけでも収穫ね)
外を見ると、夜の帳が降りてきたのが分かる。
誰もいないから、どうやら今日の分の訓練は終わった様だ。
「リル様。食事のご用意が出来ましたわ」
そうメアラから声が掛かる。
「リル様。今日の分の修練が終わりました」
タレザも帰って来た様だ。
あたしは、メアラの夕食のメニューが何か考えながら、これからの事に思いを馳せるのであった。
ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字など有りましたらよろしくお願いします・・・もう少し何とかならない?」
リル「そうねぇ、五日も掛けるのなら、倍とはいかないまでも、五千文字位は無いと、しかも、今回は一部を貸借対照表で誤魔化していると、言えなくもないわね」
常世「どうもねぇ・・・この章の着地点が見えないんだけど・・・」
ベリアル「またぁ、この人は・・・それより例のヤツは?」
常世「アレね」
参考文献
遠山柾雄著『砂漠緑化への挑戦』読売新聞社、1989年
常世「以上になります。ちなみに調べてみたら、絶版らしいです。今になって、新品が欲しいんだけど・・・こんな事になるから、高校の時に買っておけばよかった」
ベリアル「後の後悔先立たず・・・新品じゃないとダメなら、図書館の借りて我慢するしか無いね」
常世 orz
ベリアル「それでは、今後とも、新米辺境領主リルーエットの、異世界奮闘記をよろしくお願いします・・・ねぇ、早く略称考えようよ。長い」
常世「出来るだけ早目にね」




