三話 砂漠を開発しました2
ベリアル「いつもありがとうございます・・・でぇ、昨日中に上げろって言ったよね?」
リル「そこは常世だし、言っても詮無いわよ」
ベリアル「そうは言ってもねぇ・・・わかってるの常世」
常世「それに関しましては、わたくしの不徳の致す所で・・・」
ベリアル「ホントに悪いと思っているの?」
常世「・・・思っています」
ベリアル「ホントに」
常世「ハイ」
ベリアル「・・・ともかく、三話、砂漠を開発しました2をどうぞ」
あたしは今、ラゼリアに来ている。
まだザールラントからラゼリア迄の街道が完成していない・・・というか、着工したばかりなので、凡そ完成迄の半年は、ラゼリアにダイレクトに来れない。
現時点でラゼリアに来るには、王都を経由してラゼリアラント辺境領の東側から入領する事になる。
街道が完成した時の、ザールラントからラゼリアとを結ぶルートの推定所要時間は、約二日程度に対し、王都を経由するルートの所要時間は四日から五日掛かるので、資材の輸送に倍以上の時間が掛かる。
日数が掛かれば、当然輸送コストが嵩み、尚且つ王都に入市する時の入市税は馬車一台に付き大銅貨二枚と、これから街道が完成する迄の間、何十台とここを通過するので、少なくない額が税金として持っていかれるので、街道の完成が待ち遠しい。
ちなみに、人の場合は、貴族が大銅貨一枚、一般市民が銅貨一枚、奴隷は小銅貨一枚(法律では一応禁止はされているが、他国人の所有する奴隷は例外の為)
(王国版自動車重量税って所ねぇ・・・馬車だけど・・・あたしの予想では、街道が出来る迄に、凡そ延べ二百台は馬車が通過する予定だから、大銀貨二枚(約400万円)になるから、それまでは入市税が結構痛いわねぇ)
ラゼリアの入口から、向かって右側にラゼリアの街並みが在り、その反対側は油ヤシ畑が広がる。
ラゼリアの中に入ると、村の何軒かで収穫した油ヤシから、油を抽出する作業をしている。
街を東に向かって一歩外に出ると、地面が一面白く輝いている。
これは、塩類集積という現象で、こういう気候の所で、必要以上に水を撒き灌水させると、その水が地下水まで達し、今度は毛細管現象により、地下水が地表に上がって来る。
一般的には、地下水はまあまあ塩分濃度が高目なので、極度に乾燥している砂漠地帯では、塩類集積が起き易く、地表上がって来た水分はさっさと蒸発し、あとには塩分が残り、地表を白くする。
これが塩類集積である。
日本では豪雪地帯で撒く、融雪材の塩化カルシウム、略して〈塩カル〉も塩類で有るので、路肩などで塩類集積が起きている場合が有る。
塩類集積になると、地表に溜まっている塩分のせいで、作物が生育が妨げられる為、大量の水で洗い流すか、ある程度の深さ迄の表土をそっくり入れ替えるかしないといけないが、このラゼリアでは、そのどちらも出来ない為、結局放棄しないといけなくなる。
このラゼリアでは、灌水する為の水も、井戸水つまり地下水なので
、余計に塩類集積が起き易くなる。
あたしは早速、村長かそれに準ずる役割をしている者の住まいを探そうとしたが、ラゼリアには来たばかりなので、そんな事は分かる訳が無い。
なので、その辺を歩いている村人に聴いてみる。
そうすると、住居区に入って、奥の方に在る立派な建物がそうらしい。
とりあえず向かってみる事にした。
しばらく歩くと、その建物に到着する。
「ごめんください」
あたしは、そう言って扉を叩く。
「どちら様ですか?」
中から女性と思わしき声がする。
「わたしは、リネルメ辺境領から参りました使いの者です」
あたしは、身分を隠し、そう答える。
「はい、ただいまお待ちください」
その後、扉が開く。
「はじめまして。わたしは、リルと申す者です。この度、このラゼリアラントがリネルメ辺境領に編入しました事を、お知らせに来た事と、わたしが代官として赴任する事をお知らせに来ましたけど・・・これが、領主様からの辞令と、リネルメ辺境領に編入する旨が書かれている書類です。どうぞお改めください」
あたしはそう言うと、父親であるガレンダールの名で署名してある、あたしに向けた辞令書と、王都で拝領したラゼリアラント他を下賜する旨が書かれている目録を渡す。
「こちらこそはじめまして。私はこの村の取り纏めをやらせて貰っています、メアラ=サスタカーンと申します。領主様には態々ご足労頂きまして、大変恐縮です」
メアラは、大体アラf・・・じゃないアラサー位の年頃で、髪は紫で腰までの長さが有り、首の高さから先端まで粗く纏めている。
肌の色は褐色で、背はあたしより頭ひとつ半程高いから、凡そ9デルセル(約180センチ)弱は有る。
痩せてはいるが、服の隙間から垣間見る感じだと、結構鍛えている様だ。
物腰柔らかく、おっとりとした感じがする女性である。
(が・・・そんな事はどうでもいい。何でバレたの?訳が分からないわ。ドルトンみたいに、普段から王都との繋がりを保っているならともかく、どう贔屓目に見ても、王都との交流は疎遠どころか寧ろ絶途状態。隣の領地との交流すら疎遠に近い物が有る。という報告が有ったのに、セバスチャンの事だから、入念に調べさせたのだろうけど・・・こんな辺境に、女孔明とも言える人材が隠遁しているとは・・・・・・まさに伏龍ね)
あたしが沈黙していると、メアラの方から話し掛けて来る。
「フフフ。どうしてってお顔をされていますわね。立ち話は何ですし、中にお入りください」
あたし達は、メアラに薦められるがままに、中にに入る。
中は、外で見た建物の大きさより、かなり広く感じる。
こういう所にも、という位、メアラのその希有なる才能を垣間見る事が出来る。
「さて、何からお話し致しましょうか・・・そうですね。先ずは、貴女様がどうしてリネルメ辺境領の領主と分かったというと、私にも独自の情報網がございまして、それに因る伝聞の特徴と、貴女様の容姿とを照らし合わせ、護衛のタレザ殿を見て判断致しました。リルーエット様は、中々産業振興に力を入れている様で、農務卿に就任する事に加え、直轄領であるこのラゼリアラント辺境領の下賜。私は、会える日を心待ちにしていましたわ」
「ねぇメアラ。貴女、わたしの元に来てくれないかしら?」
「ハイ。承りましたわ・・・と、言っても、ラゼリアのこの現状では、離れる事は叶いませんわ」
「それなら問題無いわ。わたしが半年間こちらで頑張るから、貴女にはその手伝いをお願いしたいの。わたしはこのラゼリアラントを王国一の穀倉地帯にするつもりよ」
そうあたしが言い終わると、メアラは怪訝そうな眼差しであたしを見る。
「リルーエット様。本気で仰っているのですか?ここは砂漠です。飲み水にすら事欠くのに、どうやってこのラゼリアラントを穀倉地帯にするのですか?」
「本気でこのラゼリアラントを、穀倉地帯にするつもりよ。その為に色々準備して来たわ。先ずは街道建設。ザールラントからこのラゼリア迄を結ぶ街道を十日前から建設中よ。その街道には千セル(約2km)ごとに井戸を掘らせる予定よ。次は・・・メアラ。ちょっと一緒に外に来てくれるかしら?」
あたしはそう言うと、メアラを連れて、表に停めて在る十台の馬車の前に向かった。
馬車には半分ずつ、ピートモスとグラベルマルチに使う小石を積んで有る。
それを、メアラに見せると、メアラは驚きこちらに尋ねる。
「リルーエット様。私の間違いで無ければ、こちらの馬車に積まれている土はピートモスで、こっちの馬車に積まれている小石は、グラベルマルチとして使用するのですね?」
「えっ!?何でメアラが知っているの?」
また、あたしも、メアラがこの世界に無い技術に関して、知っている事に驚いた。
「ほう。リルーエット様も地球からいらした・・・いえ、転生なされたのですね?」
そうメアラが言うと、あたしはまた驚いた。
(あんたもか!・・・ん?いらした?どういう事?)
「リルーエット様。私は、地球では死んでいません。恐らく、失踪という扱いになっていると思います」
あたしが、メアラの発言を疑問に思っていると、メアラはそれを察したのか、その疑問に対する答えを言った。
「とすると、メアラは、神隠しに遭ったのね」
「神隠し・・・God hidingですか・・・日本では、そう言うのですね。私の地方では、kidnaped 拐かす。と言いましたわ」
「というと、メアラは英語圏の人?」
「田舎ですけどね。二十五の時に、単身日本に来て二十年。これでも、日本国籍を取得しているんですよ。表記は、メアラ=佐須多勘・・・もう夕方ですねぇ・・・リルーエット様は、しばらく滞在されるのでしたら、食事をご用意致しますよ」
「もう、そんな時間?そう言う事なら、お言葉に甘えて馳走になろうかしら・・・タレザは五人前は食べるから、あと、肉とか提供するわよ」
「それなら助かります。タレザ殿がそんなに食べるとは思いませんので・・・」
「まぁ、タレザはその分腕が立つから、いいのだけど・・・燃料は要るかしら?ウチの会社、リネルメ窯業で作った木炭をたくさん持って来たわよ」
「そうですか?それは助かります。出来れば有るだけ頂けませんか?・・・窯業という事は、陶器とかも作っているのですか?」
「リネルメ窯業では、主に耐火レンガを作っているわ。木炭は伐採の際に出た端材を使って作っているわ・・・あとで、木炭を保管する場所を教えてちょうだい」
「わかりました。それでは、さっと食事を作ってしまいますわね」
メアラはそう言うと、厨房に入って行った。
あたしは、以前に捕獲した動物の肉と、今年収穫した大豆とレンズマメを10キロずつと、あとゴミが混じっていない塩を提供した。
それから、四半刻、メアラが出来上がった料理を運んで来た。
メインは、あたしが提供したお肉で、ほかは、豆と野菜のスープに、小麦粉を練って焼いた物が二、三十枚ほど出される。
「メアラ。ありがとう。さっそく頂くわ」
「拙い物ですが、お召し上がりください」
あたしは、先ずは肉料理を食べてみた。
それは、焼き加減が絶妙で、食べる前に肉汁が滴り過ぎず、かといって口の中に入れて噛むと、肉汁がブワッと染み出し、その旨さが口の中いっぱいに広がる。
正直言って、あたしが作る物より数倍美味しく、転生前でもこれだけの肉は食べた事が無いくらい、ホントに美味しい。
スープにしてみても、塩加減は豆や野菜の素材の味を十二分に引き出していて、あたしではとても太刀打ち出来ない。
これだけ料理の腕が有るのに、あたしが転生前には、聞いた事が無い。
領地の運営面から見ても、料理の腕前を見ても、何でも超一流と言っても差し支え無いくらい出来る。
それでいて、あっちでもこっちでも、まったくと言っていい位の無名の士。
それを意図してやっているので有れば、メアラが情報操作の面でも、超一流の腕前で有る事の査証かと思われる。
(まったく、とんでもない人物が在野に居るわね。ともかく今日はメアラの作った料理に舌鼓を打ちつつ、明日に備えないと)
あたしは、そう思いながらメアラの作った料理を食べるのであった。
タレザ「ここまでありがとうございます。誤字、脱字など有りましたらよろしくお願いします・・・それで常世殿。私とリル様の絡みが全く無いではないですか!」
リル「いや、そう言う作品じゃないし、ややこしくなるから、あんたは黙ってなさい」
タレザ「ハイ」
ベリアル「一日遅れだけど、何とか上がったね・・・と言いたい所だけど、終わりの方脱線してたね」
常世「メアラと言えば料理の話しをしないと」
ベリアル「確かにそうだけど・・・メアラの料理はホント美味しいけど、何とかならなかったの?」
常世「なりません」
ベリアル「まぁいいや」
メアラ「フフ、陛下。登場させて頂きましてありがとうございます」
常世「メアラ、此処でその呼び名はあんべー悪いよ」
メアラ「失礼致しました。常世様でよろしいですか?」
常世「ほかに無いし、それで妥協します」
ベリアル「ところでサァ、次は今週中に上げれんの?」
常世「何とか頑張って」
ベリアル「あと、少ししか出ていないけど、参考文献とかどうするの?」
常世「砂漠を開発しました編の最終話で、忘れず、必ず、絶対掲載します」
ベリアル「まぁ、それなら大丈夫かな?」
メアラ「それでは皆様、次回、四話 砂漠を開発しました3をお送り致します。今後とも、新米領主の奮闘記をよろしくお願いします」




