二話 砂漠の開発をしました1
ベリアル「いつもありがとうございます・・・ようやくだね」
常世「ようやくだよ。この話から、数話は砂漠の開発関係の話しになる予定」
ベリアル「この物語りがスタートして、そろそろ半年が経つね」
常世「感慨深いねぇ」
ベリアル「そう言えば、もふもふ成分があれ以来まったく無いんだけど」
常世「話しの流れ的に、まだしばらく無いなあ・・・遺憾ではあるけど」
ベリアル「まぁ、僕は別にいいけど、常世は我慢出来ないでしょ?ほかの方の作品を指をくわえながら見てるもんね」
常世「!!な、何故それを!」
ベリアル「いや、一緒に居るんだから、知ってるに決まってるジャン」
常世「そう言えばそうか・・・何か脱線してきたね」
ベリアル「そうだね・・・それでは、二話、砂漠の開発をしましたをどうぞ」
翌日、セバスチャンに頼んで、早速ラゼリア砂漠の周辺の情報を集める様に頼んだ。
セバスチャンに情報を集めて貰っている間、あたしは、役場に居るサラの所に来た。
サラの執務室の扉をノックすると、中から「どうぞ」というサラの声がしたので、中に入る。
サラは、二年前にリネルメ土木から、領政府に異動して貰って、領主代理をして貰っている。
「サラ、ちょっと失礼するわよ」
「あっ!社・・・領主様。いかがしましたか?」
サラがそう言うと、あたしは、タレザに見せた書面をサラにも見せる。
「・・・農務卿就任に、新たな領地の拝領、おめでとうございます・・・って、そんな訳無いですね。また、随分な難題を押し付けられましたね」
サラは、書面を見ると渋い顔をする。
「そうなのよねぇ。それで悪いのだけど・・・」
「お嬢様の留守の間はお任せください」
あたしが言い終わる前に、察し良くサラが答える。
ホントいい人材が来たわ。
「そう?助かるわ。あと、ロンテ村から、かの地の中心地までの街道を建設したいから、リネルメ土木に発注を掛けておいてちょうだい。あの地では、水がとても貴重になるから、造る街道には500セル(約1km)置きに井戸を掘らせてちょうだい。」
「承りました。あと、何か必要な物とか有りますか?」
「大体は、ドルトンに用意して貰っているから大丈夫よ。それじゃ行って来るわね」
「ご武運を」
役場を後にしたあたしは、ドンカッター商会ザールラント支店に向かった。
「こんにちわ。番頭さんは居るかしら?」
「いらっしゃいませ領主様。番頭でしたら先程戻って来ましたよ」
「そう。ちょっとお邪魔して良いかしら?」
「あ、ちょっと待てってください。今呼んで来ます・・・おい、ドルトンさんを呼んで来てくれ。領主様が来ていると言えば分かる」
店番の店員がそう言うと、部下の店員が、ドルトンを呼ぶために奥へ向かった。
しばらくすると、ドルトンがやって来る。
「これはこれはお嬢様。農務卿就任おめでとうございます。今日はどないしたんでっしゃろ」
「ありがとうドルトン。それで、頼んでいた品物は見付かったかしら?」
「ああ、ピートモスちゅう用土と小石の事でんな?それでしたら、何とか見付かりましたで。ちょっと待ちなはれ」
そう言うと、ドルトンは奥へ戻って行く。
「・・・ちょっとお水貰えないかしら?」
「喉が渇いたのですね?直ぐに用意させます」
しばらくすると、水差しとコップを持って来たので、コップを取り、お水を注いで貰う。
「・・・ありがとう。一心地着いたわ」
「これ位何でも有りませんよ」
しばらくすると、ドルトンが、お盆をふたりの部下にひとつずつ持たせやって来る。
「お待たせ致しました。これなる品で間違いありまへんか?」
ひとつは、ピートモス。
自重と同等の水分を、蓄える性質が有ると言われている、園芸で良く利用されている用土だ。
もうひとつは、大きさが5ミリ位に揃えられたの小石だ。
これを使用して、グラベルマルチという農法を行う。
ピートモスを使うのは、現代の地球の様に、吸水性高分子の様な物が無い為の代用品である。
吸水性高分子というのは、自重の100倍から1,000倍の水分を吸水する物質で、地球ではオムツや生理用品など幅広く利用されている。
グラベルマルチというのは、この小石をピートモスを鋤き込んだ後の用地に一定の厚さで敷き詰める。
これにより、直接用地が温められず、水分の蒸発を緩和出来、灌水する水の量を節約出来る。
地球みたいに、パイプラインを引いてなんて事が出来ないし、ホースを使って、必要な量の水を根元に撒く、点滴灌漑の様な事が出来ないので、砂漠での水の確保や作物への灌水は、余計に大変な作業になるから、少しでも節水したい。
もっとも、砂漠の北側から順に、辺境領から運河を引く計画だが、コストが掛かるので将来的になってしまう。
なぜ、川の無い辺境領からキャナルが引けるかと言うと、辺境領は川が無い代わりに、地下水の水位が異常に高い。
辺境領では2セル(4メートル)も掘れば、どこでも水が湧いて来る。
それを、手押しポンプと風車を組み合わせた、自動揚水システムを利用して、川が無い辺境領でも、キャナルに水を流す事が出来る。
このシステムは、現時点で雨の少ない辺境領北部で実用化されていて、導入前と導入後の収穫量の差は四倍位になっている。
「ええ、間違い無いわ。それで現時点でどれくらい調達出来たかしら?」
「ピートモスちゅうんが馬車三十台分、この小石が馬車二十五台分調達出来ましたわ」
「そう。ありがとう。請求書は、役場の方に送っておいて貰えるかしら?あと、物はもう少し預かって貰えるかしら?その際の費用も、役場にお願いするわね」
「えー、ちょっとよろしいでっか?この品物は何に使うか、差し支え無ければ、伺ってよろしゅうおますか?」
「これね?これは、ラゼリア砂漠を農地として開発するために必要な物よ」
「噂には、聞いとりましたが、とんでもない天領を下賜されましたな」
「仕方無いわ。拒否出来ないし。大方、わたしみたいな若輩者が、農務卿になった際、方々からの矛先を反らす為だと思うわ」
「そこは、仕方無いでっしゃろ。リル様の偉業は、国内は元より、遠方の国々にも知れ渡っとると聞いとります。せやから、このまま何も無いのでは、外聞が悪うなるが、功績の額面通りの報賞を与えると、国内の反発を買う。せやから、ラゼリア砂漠とワンセットにしたんやな。抗議のひとつもしようもんなら、それなら代わりにやってみろ。ちゅう話しになるから、誰も文句を言わん様になる。流石わ腹黒宰相閣下でんな・・・こりゃその内、辺境領南部の荒野も下賜されそうでんなぁ」
そう、ドルトンは苦笑いしながら言う。
「そうなのよ。砂漠の開発は失敗させる気は無いけど、そうなると、遠からず南部の荒野も押し付けられる可能性が高いわねぇ」
辺境領南部には、ラゼリア砂漠以上の面積を誇る、広大な荒野が広がっている。
降水量的には、一ヶ月当たり80ミリ前後の降水量が毎月降るので、本来なら王国一の穀倉地帯に成るはずなのだが、南の隣国のラナバルラント王国との紛争が有った為、現在も殆ど開発がされていない。
と、あたしは聞いている。
正式名・・・・アジェラル辺境領
領都・・・・・ダナルブルク 1,977人
総人口・・・・2,871人
特産品・・・・無し
領都の他に、みっつ程村が在る。
気候は温暖で、年間で1,000ミリ近くの雨が平均的に降り、西部には草原が広がっている。
高い山は無く、その為に川も無い。
経済は、隣国との紛争よりかなり前から停滞若しくは後退していて、領内に山が無い為、鉱物資源が乏しいのも、投資が行われ難く、経済が上向きに成らない理由にされ、十年程前に起きた隣国ラナバルラントとの紛争が足枷になっている。
この情報は、あたしがセバスチャンに頼んで調べさせた物だ。
あたしが、辺境領主に就いた頃と、同じ位貧しい地域だ。
大森林やデッセンラントに在るみたいな鉱山もまったく無い為に、開発をするには相当量の資金の投入しても、それに見合ったリターンが期待出来ないので、今下賜されても、ラゼリア砂漠の開発が一段落するまで、街道をダナルブルクに繋げる以外は、放置する事になってしまうだろう。
まぁ、ラゼリア砂漠の開発も似たり寄ったりではあるが・・・
そうそう、屋敷に帰ったら、セバスチャンがラゼリア砂漠周辺の情報を纏めて終わっていたので、夕食後目を通す事にする。
正式名・・・ラゼリアラント辺境領
領都・・・・ラゼリア 617人
総人口・・・763人
特産品・・・ヤシ油
気候は温暖だが、雨が降らず乾燥していて、辺境領の殆どが砂漠である。
人口の殆どは領都に集中しており、残りは領都と他領とを結ぶ街道上にひとつ村が在るのみとなっている。
領都周辺では、油ヤシの栽培がされていて、ヤシ油がここの特産品になっている。
殆どが砂漠の為、農業自体は細々としか行われておらず、食料は専ら他領からの輸入に頼っている。
以上の理由から、経済基盤は脆弱であると言わざるを得ない。
これが調べさせた結果だ。
(・・・やっぱり予想していた通りねぇ。でも油ヤシの栽培をしているなら、資金の投入次第で化けるわねぇ。中間の村に製油の為の会社を立ち上げて、品質を向上させれば、ブランド化も出来る。ザールラントとラゼリア間の街道が完成すれば、共和国に輸出する事も視野に入れれるわね。油ヤシなら、南部のアジェラルでも栽培出来そうだから、そうなればラゼリア産の油とはある程度違う油が出来る筈だから、産地の違いに因る差別化も出来るわ・・・何にせよ、これが国内農業を変革する為の試金石になりそうねぇ)
あたしは、そう考えながら、まだ見ぬ新天地に思いを馳せるのであった。
ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字など有りましたらよろしくお願いします・・・常世、僕の出番が無いよ」
常世「多分しばらく無いね」
ベリアル「何ですと!?」
常世「じゃあ、逆に聞くけど、砂漠でチマチマ農業する?」
ベリアル「あっ、それは無いね。リルに任せて、僕は屋敷で、食う寝る遊ぶをしてるよ」
サラ「そんな暇が有るなら、こっちを手伝ってください・・・あっ!読者の皆様、お初にお目に掛かります。リル様の不在の際に領政府を取り仕切っている、サラと申します。以後お見知り置きください・・・ベリアルさんは、リル様のブレーン的な立ち位置じゃないのではないのですか?」
ベリアル「そうなの?」
常世「どう考えても、そうにしか見えないけど・・・」
ベリアル「やっぱりそうか・・・あまり考え無い様にしてたんだけど・・・」
リル「あたしと一緒に来ないなら、サラの方を手伝って貰わないと困るわよ。ってか手伝え。伝令用にティアは置いて行くわ」
ティア「私、お留守番♪」
ベリアル「えっ?ひょっとしないでも、しばらく出番無いの?」
常世「リルに付いて行かないなら、必然的にそうなるね」
ベリアル「じゃあ、リルに付いて行く」
リル「手伝うの前提よね?」
ベリアル「・・・・・・あ、当たり前じゃない」
リル「何よ、今の間は。あたし的には、ベリアルには残って欲しいけどね」
ベリアル「何・・・ああ、無くは無いかなぁ・・・」
リル「いつの時代も、国内の発展を妨げるのは、佞臣なのよねぇ」
ベリアル「確かにね・・・分かった。僕は、リルが頑張れる様に残るよ」
リル「ありがとうベリアル」
ベリアル「・・・もう一寸ハグしてね。リル成分充電するから」
リル「ハイハイ」
サラ「・・・それでは、今後とも新米領主の奮闘記をよろしくお願いします・・・へぇ。リル様とベリアルさんて、そういう関係なんだ・・・」
常世「サラちゃん。それは無いから」




