一話 新しい役職に就きました
常世「いつもありがとうございます・・・ハイ!この話から、五章農政改革がスタートとなります。それでは、一話 新しい役職に就きましたをどうぞ」
ベリアル「新章のっけから、僕達をスルーとか酷いよ」
王都の、更には、王城の、二階の、とある一室にあたしは居る。
いきなりで申し訳無いので、少し時間を遡って話しをしよう。
今から三ヶ月と少し前、王都から、あの腹黒宰相閣下からの使者が来た。
何でも、街道建設や、農業の改革に因る税収増加(約八十倍増)に伴う上納金の増加(二十倍増)や、製鉄所の創業に因り結果的な事として、国内戦力の増強など、複数の業績に因り、国に対しての功績が顕著で有るとして、国王陛下直々に報賞を下賜くださるとの事なので、王都に来る様に、という旨の文書が勅詔と共に来た。
その使者が来た時
セバスチャンは「旦那様もあちらでお喜びでしょう」と、嬉し泣きをし。
マチルダは「さすがはお嬢様です」と、誇らしげに頷き。
母のナターシャは「あなた。リルーエットは勲章を拝領するそうですよ」と、微笑む。
その後、使者と共に王都へ向かう事になった。
王都に到着すると、直ぐに登城して陛下からお言葉を頂く・・・ではなく、陛下との謁見は二日後という話しで有ったたらしい。
それまでの間は、宰相閣下から、事の詳細を聞いたり、謁見際に粗相の無い様にするための注意点などのレクチャーを受けたので、二日も有るんだからと、おのぼりさんよろしく、王都見物とはいかなかった。
二日後、いよいよ国王陛下との謁見が、あと半刻と迫っている中、まあまあ・・・いや、ずいぶん緊張していた。
(だってしょうがないじゃない。国王陛下に拝謁する処か、ご尊顔を拝するのも初めてなんだし。王都に住んでる人は、新年のご参賀の時に拝する事が出来るらしいけど、あたしは、継承の時は秋だったし、それから丸三年以上領地に籠りっ切りだったんだもの、陛下のご尊顔を拝するなんて事出来る訳無いじゃない。雲の上の存在の人より、領民の生活が第一なんだから。領の内政に腐心したお陰で、今はみんな一日三食食べれる様になったわ。領の人口も十万人を越え、今も方々から職を求めてたくさんの人がやって来るわ。グループの方の成長もうなぎ登り。リネルメ製鉄は当初溶鉱炉十基、従業員数五百人だった会社が今では溶鉱炉五十基。従業員も十倍の五千人を越え、ロンテ村は名実共に鉄鋼の町に化けたわ。今でこそ鉱山の町であるデッセンラントも、第二、第三の鉄鉱山が開き、また、金山の金の埋蔵量もどれだけ在るか分からない位、莫大な埋蔵量が在る事が分かり、にわかにゴールドラッシュに沸き、街道が開通した当初、人口千人程の宿場町だったのが、今では人口三万人を抱える辺境領第二の都市として成長したわ。ちなみに、その三分の一に当たる一万人がリネルメ鉱業の従業員よ。そして我がザールラントは、屋敷とは別に、中心部に鉄筋コンクリート造の三階建ての役場を造り、病院もベット数五百床の鉄筋コンクリート造に造り替え、学校もザールラント内に八つ造ったわ。その分支出も激増したけど、それを上回る税収の伸びに因る、潤沢な開発資金。個人的には、今が一番大変だけど、面白い時なのに・・・・・・)
そんな事を考えているうちに、文官が時間になった事を知らせ呼びに来た。
謁見の間に入ると、正面に白髪で白い髭をたくわえた、昔イケメンだっただろう人物が、豪華な椅子、玉座に座っていた。国王陛下だ。
あたしは、陛下から離れること、約3セル程手前で方膝を着き、頭を垂れる。
次に宰相閣下から、事の次第についての説明がされ、陛下は終始頷かれていた。
「リルーエット=リネルメよ。近う寄れ」
陛下が、宰相より下賜する報賞品を受け取るとそう仰った。
あたしは、陛下まで1セルの所まで寄る。
「リルーエットよ。今後の働きに期待する」
そう仰ると、先程受け取った品を下賜する。
下賜品を受け取ったあとは、2セル程下がり深々と礼をして、陛下が
「大儀であった。下がって良いぞ」
そう仰ると、あたしは5セル程後ろ歩きをして、それから踵を返して、謁見の間から退室する。
それからあたしは、控え室に一旦戻り、下賜品を改めて確認する。
ひとつ目は、ズッシリ重く金貨の詰まった袋だ。
ふたつ目は、辺境領の北に在る、直轄地の辺境領への編入の旨が書かれている目録。
みっつ目は・・・・・・・・・・・・〈リルーエット=リネルメを本日付で農務卿とする〉と書かれている辞令書。
あたしは、予想外の事態に頭を抱える。
(・・・やられた。あの腹黒宰相閣下は・・・くぅ、悔しい)
それから少しすると、担当の文官がやって来て、あれよあれよという内に諸々の手続きが、その日の内に終わり、一日が経ち、冒頭に戻るのである。
「リル様。いかがなさいましたか?」
精神的に疲れて備え付けの机に、突っ伏してるあたしに、タレザが声を掛ける。
「タレザ、これ見てよ」
そう言って、二枚の書面を渡す。
「・・・リル様。昨日から農務卿に成られたのですね・・・このタレザ。リル様にお仕え出来る事を誇りに思います」
タレザは、上を見上げ、涙を流す。
「・・・止めてちょうだい。泣くほどの事でも無いジャン。私が継承してから約四年。進まない農政改革という難問を押し付けられただけじゃないのよ・・・北部の砂漠地帯のオマケ付きで・・・これが突っ伏さずに居られるかって言うのよ・・・まぁ元々、辺境領は乾燥気味だから、ドルトンにとある物を探させているのだけど・・・まったく、領内の開発もまだ折り返しにすら差し掛かっていないのに、国内の農政改革に、新たに拝領した砂漠地帯、もう、勘弁して欲しいわ」
「それでも、勅命である以上、やらねばならぬのでしょう?」
「そこがキツい所なのよ。取り合えず、手始めに砂漠地帯の開発から始めるわよ・・・これ、宰相閣下に渡して来てちょうだい」
あたしは、サッと手紙を書き上げ、タレザに託す。
「承知致しました。そのあとはいかがなさいましょうか?」
「そのあとね?・・・これ、渡して置くわ。旅客馬車のフリーパスよ・・・っと言っても、貴女なら顔パスかも知れないけど、一応渡して置くわ。わたしは一足先に屋敷に帰るから、お願いね」
あたしは、一枚のカードを渡す。
「承知致しました。では早速、宰相閣下の執務室に行ってきます」
「それじゃあね」
あたしは、農務卿の執務室でタレザと別れ、一路辺境領へ帰るのであった。
ベリアル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字など有りましたらよろしくお願いします・・・酷いよなぁ常世ってば。折角新章がスタートしたのに、僕達を除け者にするとか無いよ」
リル「そうねぇ。主役のあたしすら除け者とかあり得ないわよ」
常世「そこはそこ、書く事無かったし」
リル「そうなの?・・・それより、どうするのよ、砂漠なんて貰っても嬉しく無いんだけど」
常世「試練だよ」
リル「そんな試練要らないわよ。その上、農務卿とか、あんたバカじゃないの?」
常世「この作品の最初の頃から、そのつもりだったし・・・ちなみに、次章は戦争の予定だからね」
リル「・・・もういいわ。兎に角頑張るしか無いのでしょ?」
常世「そう言う事になるけど、もう1人増やそうか?」
リル「増やせるの!?」
常世「リルが希望するならね」
リル「増やせるんなら、1人と言わず3人位増やしてよ。やる事増やし過ぎよ」
常世「わたったよ。手始めに1人増やすね・・・三話からだけど」
リル「・・・仕方無いわね。それで手を打つわ」
常世「それでは、次話は、砂漠の開発をしました1になります」
ベリアル「今後とも、新米領主の奮闘記をよろしくお願いします・・・まぁ、成るようにしか成らないね」




