五話 鉄を精錬しました2
常世「いつもありがとうございます」
ベリアル「おお、いつもより早く上げたねぇ」
常世「駅のホームで、電車の音を聞きなから書いたからねぇ」
ベリアル「鉄っちゃん?」
常世「電車とか鉄道は好きだけど、まだそう呼ばれるには、経験値が足りないよ」
ベリアル「経験値って・・・次は同じ位に更新出来るの?」
常世「善処します」
ベリアル「テンプレ回答ww・・・とにかく、鉄を精錬しました2をどうぞ」
ハッシーシュが、コークスを作る為の作業に入ってから一週間程が経ち、炭鉱が本格稼働し始めた。
(炭鉱が本格稼働して、コークスの生産量が増えたから、軽油やコールタールの産出量も増えたけど、コールタールは土魔法で穴を作って、そこに入れてしまうからいいけれど、軽油はそれが出来ないから、瓶に入れるしか無いのよねぇ・・・リネルメガラスでも起こして、ガラス瓶の生産でもしないとねぇ。ホント、希少なのは分かるけど、一瓶銀貨一枚とか高過ぎなのよ。二番窯、三番窯とコークス窯が増えたから、ドルトンには調達出来次第、随時こちらに輸送して貰っているけど・・・既に金貨にして十枚は使っているわね。結構な量になるから、何か利用方を考えないといけないわねぇ・・・)
生産したコークスは、一度ザールラントに運ばれる。
ザールラントでは、品質に因って三段階に別け、良品はドルトンやゼトルに卸し、並品は鍛冶やこれから行われる鉄の精錬に使い、劣品は木炭の代用品として、暖房や炊事の際の燃料として使う。
「お嬢は居るかい?」
あたしが屋敷の執務室に戻ると、ターシャがすぐさま訪ねて来た。
何処で見てたんだろう・・・
「開いてるわよ。」
「おっ、お嬢。さっきコークスというのをマチルダが持って来たから、早速使ったんだが、中々いい物だなぁ。何せ火力が木炭の比じゃない。お陰で色々製作の幅が広がるってもんだ。」
「それは良かったわ。それより、窯の方はどうかしら?」
「!!さすが親父の所でやっていただけはある。そうなんだよ。窯の方が、火力の高さに耐えれなくなって来た。」
「今、その為に焼いた耐火レンガを、たくさん作っているから、それで、ターシャの工房の窯を作り替えましょ。完成すれば、鉄を溶かせる位の火力にも耐えられる様になるわよ。」
「・・・有り難い話しだが・・・鉄を溶かすって正気かい?」
「わたしがホラ吹いてると言うのかしら?」
「いやいやいや、そんな滅相も無い。あたし等鍛冶師からしたら、鍋何かならいざ知らず、石の状態の鉄を溶かすなんて不可能と言われていたからなぁ・・・」
「そうなのねぇ。これからザールラント以北は、鉄工業で栄えさすつもりでいるわ。今の課題は、鉄鉱石をドルトンやゼトルに頼んで輸入している事かしらねぇ。その為、鉄鉱石の値段がまぁまぁするから、結果、コークスを使う事により、以前より安く鉄を生産出来る様になっても、【以前より】ってだけで、例えば、銅貨五枚掛かっていたのが、小銅貨一、二枚程安くなった程度の物なのよねぇ。今、ロンテに十基ばかし、製鉄の為の窯を建設しているわ。二週間程で完成するから、そしたらターシャも来て頂戴。」
「おぅ、承知したよお嬢。」
一週間後、ロンテ村に、製鉄の為の最初の窯が完成した。
あたしは、その報告を聞き、ターシャとティアとベリアルの四人でロンテ村に向かった。
「へぇ凄いねぇ。」
「この炉で、鉄鉱石を溶かすのかい?」
「まぁ、技術的に仕方ないか・・・」
ベリアル、ターシャ、ティアの順に初見での意見を述べる。
完成した窯は、高さが1セル位の陶器を焼く様な感じの窯で、違いと言えば、底が丸く整形されており、その中心から外に向かって細い溝が掘って有る事と、片側に二ヶ所送風の為のふいごが備え付けられている事だ。
ふいごを使い火力を上げ、溶けた鉄が、その溝から溶けた鉄が出てくるのである。
また、ふいごを外し、風の精霊が、そこから送風する事も出来る。
後は、火の精霊が、火力を調節する事で、鉄の中の不純物がいい感じで燃焼し、良質な鉄が出来る。
本来なら、脱硫とか造滓剤とか、製鉄する上では色々解決しなければならない問題が有るが、そこは精霊が協力してくれる事で、万事解決してしまう。
(そうは言っても、鉄鉱石自体が入手困難だから、窯を十基作っても、実際に稼働するのは一基だけかしらねぇ・・・結果、生産量が少ないから、大して粗鋼の価格は下がらないのよねぇ。もう一度山岳地帯を調査してみないといけないわねぇ。)
早朝、三つ刻(午前六時)頃火入れをしてから四つ刻(八時間)経ち、殆んど鉄鉱石は溶けた様だと、ハッシーシュから報告を受け、取り出し口を塞いでいる粘土を、引っ掻き棒で外し、事前に作っておいた耐火粘土で作った型枠に、少しずつ溶けた銑鉄を流し込む。
真っ赤に溶けた鉄で型枠が一杯になると、横に移し、極力空気に触れない様、砂で型枠を埋め自然に冷ます。
型枠の大きさは、高さと縦が5セセル(10㎝位)横が15セセルで、その型枠を三十作り、その全てを使ったが、銑鉄はまだ残っていたので、急きょ土魔法でくぼみを作り、そこに残りの銑鉄を流し込んだ。
「へぇ、しっかり溶けるもんだねぇ。それで、この後はどうするんだい?」
「この延べ棒が入る坩堝を作って、型枠に流し込む。という感じかしらねぇ・・・ああ、この大きな塊は、アイテムボックスに入れておくしか無いわねぇ。」
「鋳物か!」
「まだまだお鍋とか高いでしょ?生産量が増えれば、だいぶ安くなるはずだわ。あと、ターシャから見て、この鉄の質はどうかしら?」
「中々いいねぇ。冷めたらひとつ貰って、それを鍛えて剣を拵えてみたいな。あたしの見立てだと結構な業物、陛下に献上出来る様な物が作れそうだ。」
「そう、それは良かったわ。それなら、ふたつ渡すから、ひとつを献上用に、もうひとつをタレザ用に拵えて頂戴。」
「陛下に献上する分はいいとして、妹にか?・・・そうか、妹はお嬢の護衛だったな。よし分かった。あたしに任せときな。あと、あのデカイ塊はどうするんだい?」
「・・・質量兵器?」
「無い無い無い。リル、それはありえないから。現にいつ使うのさ。使って倒す敵自体居ないジャン。」
「そうなのよねぇ・・・」
「・・・献上品として使え無いかなぁ?」
「献上品かぁ。鉄塊の質はいい物だけど、ちょっと難しいじゃないかねぇ。」
「・・・宰相閣下に預けても、いいかも知れないわねぇ。」
「そうなると、国庫に納入する税はいいから、現物を回せ。と言って来るかも知れないよ。」
「そこは、ベリアルの腕次第かしらねぇ。」
「うぇ~、嫌だなぁ。僕、あの宰相苦手なんだよなぁ・・・そうだ!リルが行けばいいんだよ。」
「わたしだってヤーよ。とにかくベリアル、諦めなさい。あと、ティアを同行させるわ。」
「私?大丈夫なの?」
「そこは大丈夫よ。ティアは主に輸送機扱いだから。」
「何か、それはそれで酷いねぇ・・・」
「でも、速さは重要でしょ?とにかく、さっと行って、さっと纏めて、さっと戻って来て貰いたいのよ。ベリアルもティアも、貴女達の替わりは居ないんだからね。それに、時は金なりって言うでしょ?」
「時は金なりって何だい?」
「あぁそうか、ターシャは分からないわよね・・・一度過ぎた時間は、どれだけお金を積んでも二度と戻らない。それだけ時間という物は貴重であるので、無為に過ごしてはならない・・・って言う意味だったかしら?ターシャだって、鉄を打つ時、ゆっくりやらないで、手早くやるでしょ?それと同じ様なものよ。」
「あぁ、確かに、のったらやって居たら、業物処か良い物なんて出来っこない。なんとなくだが分かったよ。」
「とにかく、ふたりが戻って来るのが一日遅れれば、リネルメの発展が三日は遅れると思って於いて頂戴。」
「ハァ。何とか一日で纏めて来るよ。」
「それだと、都合三、四日掛かるじゃない。手続き一日交渉半日で済ませて来て頂戴。」
「うはぁ、本気?・・・まぁ、リルの事だから、本気だよねぇ・・・了解。」
「という事は、王都まで片道を半日で行って来いと・・・」
「ティア。大変だろうけど、よろしくお願いするわね。」
「何とかやってみるよ。」
「ふたり供。よろしくね・・・そうそう、ベリアル。金鉱山の件も併せてよろしくお願いね。」
「・・・リルってば、悪魔使いが荒すぎる。」
ベリアルとティアは、しょんぼりしながら、ロンテ村を後にする。
「良いもん見れたし、あたしはザールラントに戻るよ。」
「ターシャ。今日はありがとうね。あと、献上品の件よろしくね。献上品として恥ずかしく無い様に仕上げてくれれば、別に急がなくて良いからね。」
「おお、あたしの方も、何気に要求が厳しいねぇ。まぁ、何とかやって見るよ。で、お嬢はこれからどうするんだい?」
「わたしも一度ザールラントに戻って、不貞腐れて居るタレザを伴って、金鉱山の状況を確認して二、三指示を出した後、山岳地帯の未探索地の探査に行く予定よ。何としても鉄鉱山となる場所を見付けたいわねぇ。」
「ザールラントまでは一緒なんだな?それなら、一緒に行こう。色々聞きたい事が有るし。」
「そうね。その方が効率的ねぇ。」
その後、製鉄所の担当者に指示を出し、ターシャと一緒にザールラントに向かった。
リル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字など有りましたらよろしくお願いします・・・ハァ、ハッシーシュなんかに協力して貰ってでも、近代的な物に比べれば遥かに劣るけど、ようやく製鉄所が出来た。」
常世「ようやくだよ」
リル「ところでこの後は?」
常世「探査の後は、学校作って、農業改革をして、遥かに劣るけど病院と健康保険的な仕組みを作った後、三年ばかし経過させます。」
リル「三年?その間も話しに成りそうじゃないの?」
常世「端折ります。じゃないと、リルが農務k・・・」
リル「それ以上は、色々と不味いから。それでは今後とも、新米領主の奮闘記をよろしくお願いします」
常世「リルってば、鼻まで押さえたら苦しいから」




