十一話 使節団と交渉しました2
常世「いつもありがとうございます。」
リル「あんた。ホントにべリアルと仲良くない?」
常世「そりゃねぇ、そういう仲だし・・・」
リル「えっ!?そういう仲って・・・・・・」
べリアル「いやいや、リルの思っている様な仲じゃないよ。」
常世「そうそう。アチキが主で。」
べリアル「僕が従。そういう関係だよ・・・まぁ、そういう関係にはなりたいとは思うけど、物理的に無理だし。」
リル「ふーん、そう・・・とにかく、今回は、中途半端に終わった前回の続きでしょ?」
常世「そうだよ。それでは・・・」
べリアル「使節団と交渉しました2をどうぞ。」
常世「イヤん。べリアルのいけずさん。」
「さすがに、この一番街寄りの案は飲めませんなぁ。」
(あぁ、やっぱり一案は飲めませんか・・・まぁそれは想定の範囲内だから問題無いわねぇ。)
「ねぇリル。一案で行ってみる?」
べリアルが、小声で話し掛けて来た。
「無理に通さなくても構わないわよ。二案で行ければ御の字よ。」
「そう?僕に任せて貰えれば、それ以上の成果を出せるよ。」
「ん?わたしじゃなくて、べリアル貴女が交渉するのよ。」
「ひょっとして、僕に丸投げかな?」
「うん。」
「・・・いや、いいんだけど、ホントに?」
「ええ、構わないわ。」
「・・・ま、まぁ、あまり無茶苦茶な要求はしないから。とにかく、先日の件は巧く使うよ。」
「ええ、お願いするわね。」
小声での相談が終わると、いよいよべリアルの交渉が始まる。
「フム、ご相談はよろしいですか?」
「ええ、一通り終わりました。僭越ながら、リルーエット様に成り代わり、交渉役はわたしがお相手させて頂きます。閣下。」
「よろしい。それでは私からは、この三本目の案で受けて貰いたい。」
「はい、承知致しました。それでは、そちらの軍の者が、我々がこちらへ来る際の粗相の件に付きましては、事細かに宰相閣下にご報告させて頂きます。」
「!!その粗相と言うのは、どういった内容なのか、差し支え無ければ教えて貰えないかな?」
「それはおかしな話しですね。軍大佐のジルダル殿には、その件や、捕虜の扱いに関する覚書なども、中央の方には併せてご報告されたと、本人から伺っていますが、おかしな話しですねぇ・・・」
すると、ブロリー側がざわつき始めた。
しばらくすると、ブロリーは
「かれこれ半刻少々経ちますし、一旦休憩に致しませんか?」
(ふーん、これはどこか途中で報告が途切れていたみたいねぇ。大方故意でしょうけど・・・)
「承知致しましたわ。わたし共の方もそうしたいと思っていた所でしたわ。それでは、再開は如何致しましょうか?」
「再開は明日、今日と同じ位の時刻でよろしいかな?」
「構いませんわ。それでは失礼致しますわ。」
あたし達は、ブロリー達の居る部屋を退室する。
このまま帰るのは大変なので、今日はこの宿場町で宿を取る事にした。
泊まる宿を探している途中にべリアルが話し掛けて来る。
「リル。どうやら、共和国側で一悶着有った様だね。」
「その様ね」
「どうする?これは、充分一案を承認させる事が出来るよ。」
「いえ。二案で十分よ。」
「・・・ブロリーの奴に恩を売っておく訳だね♪」
「まぁ、そういう事よ。それにしても、いくら有能でも足を引っ張られちゃ、非公式の会合ひとつ纏められない・・・ブロリーも大変ねぇ。」
翌日、指定の時間に、使節団の滞在先の部屋に、宿のボーイと向かい、ボーイがドアをノックすると
「どちら様ですかな?」
ブロリーが応答する。
「お客様、リネルメ様がご到着にございます。」
「これ、中に入って貰いなさい。」
ブロリーは、部下にドアを開けさせ、リルーエット達を中に案内する。
「これはこれはグランベール殿、ご丁寧な対応痛み入ります。」
「それでは、リネルメ殿にラズテュール殿、そちらにお掛け下さい。従者の方はドアの横の椅子に掛けて下さい。」
あたしとべリアルは、入口から中に有るテーブルに向かって左側に奥から、あたし、べリアルの順に座り、反対側の奥からブロリー、補佐官の順に座る。
「昨日は、色々不手際が有りまして申し訳無い。昨日、リネルメ殿がおっしゃっていた事に関しましては、確認が取れましたので、リネルメ殿を不当に扱った事に関しまして、この場で謝罪致します。」
ブロリーは席を立ち、あたし達に向かって頭を下げる。
「グランベール殿の謝罪、確かに受け取りましたわ。それでは、早速ですが、今回の案件に付いて、話しを始めてよろしいでしょうか?」
「ハイ。問題ありません。それと、謝罪を受けて頂きありがとうございます。」
「いえ、こちらとしては、話し合いに来たのであって、戦争をしに来た訳ではありませんので、そちら側が非を認めて頂けるのであれば構いませんわ。」
「それでは、グランベール殿よろしいですか?ザルヘルバ王国としては、この真ん中の線の案を提示致します。加えて、リネルメ辺境領のザールラントから、共和国国境の町のリベブルクまでの街道の建設に許可を頂きたいですね。」
「真ん中の線の案で良いのかね?・・・正直、あれだけの事が有ったから、どの様な無理難題を押し付けられるか戦々恐々としていたが、ホッとしたよ。この分では、街道の件に付いても許可せざるを得ない様だね。但し、建設に要する資金は一切出せないぞ。」
「グランベール殿。お受けくださいまして恐れ入りますわ。街道の建設費は全額こちらで準備していますし、資材の調達に関しましても、今のところ順調ですわ。共和国には、竣工後の維持管理に関しましてお願いする事になります。」
「まぁ、それ位はやらねばならんだろう。」
その後、捕虜の扱いに関する覚書を、正式に条約として締結するための話し合いと、街道の竣工後に発生する事が予想される、両国の出入国の件と、取引量が多くなると予想される、主要品目の関税の件を話し合い、凡そ三刻程で交渉が終わった。
べリアルのお蔭で、こちら側にはまあまあ有利な内容になった。
(べリアルに丸投げして大正解。あたしでは、ああは有利な内容にもっていけないわね。)
「まったく、リネルメ殿には借りが出来てしまったな。それに、後は街道建設のゴーサインを出すだけの状態とは・・・末恐ろしいものだな。兎も角有意義な会合になったのは確かだ。今後ともお手柔らかに頼むよ。」
「いえ、こちらこそ有意義なひとときになりましたわ。」
あたしとブロリーは、互いに握手を交わして、公式に限りなく近い、非公式の会合は終わり、あたし達はリベブルクに帰った。
リル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字等有りましたらよろしくお願いします・・・前回からずいぶん開いたわねぇ。」
常世「頑張ってはいるんだけどねぇ・・・」
リル「所で、今後の展開は?」
常世「街道建設開始の号令を発して、ザルヘルバ王国領となった山岳地帯で資源探索をし、ザールラントに帰還して、第三章が終了する予定。」
リル「ふーん。」
常世「何かあれだね。」
リル「だって、外交交渉で手腕を発揮したべリアルが、内政でも無双するんでしょ?」
べリアル「リルってば、僕を過労で倒れさす気?」
常世「そんな柔じゃないじゃん。」
べリアル「そうだけど・・・って、リルの領地なんだから、リルも頑張んないとダメじゃん。」
リル「えー。あたし頭脳労働苦手だし。」
常世「アチキも。」
べリアル「ふたりして酷いよ。」
リル「それでは、今後とも、新米領主の奮闘記をよろしくお願いします。」
べリアル「リルってば、締めないでよ(涙)」




