四話 商人と取引きしました2
いつもありがとうございます
頑張ってみました
「ドルトンは居るかしら?」
家捜しした後、あたしはドンカッター商会に来た。
店内は、壁に二メートルの高さの棚が、カウンターを挟んで全面に設置されていて、売り場の中ほどには、ワゴン型の陳列台が有る。
「これはこれはリル様、ようこそいらっしゃいました。中々のもんでっしゃろ?」
「そうねぇ、貴方に引き渡す前の状態を知っているから、店内を見て驚いたわ」
「そうでっしゃろ。ちなみに、今日はどんなご用でいらしたんでっか?」
「今日は白金貨を一枚と、ちょっとした絵画を買い取って欲しいのよ」
「ここでは何ですし、奥にご案内します」
あたし達は、ドルトンに奥の部屋に案内された。
「それでは、現物を見せて貰えまっか?」
あたしは、白金貨が入った箱をテーブルの上で開け、人物画の方は、レフィーナとウィンネに持って来て貰った。
『まったく、精霊使いの荒いご主人様じゃのぅ』
『そこ、文句は言わない』
「・・・二人共ありがとう。そちらに置いて貰えるかしら?」
『承知したのじゃ』
『了解です』
人物画をドルトンのそばに立て掛けると、ドルトンは食い入る様にそれを見た。
「フムフム、中々の代物でんなぁ。流石は古さだけなら王国一の名家でんなぁ」
「古さだけはって・・・もう少しちょっとねぇ・・・それより、どう言った謂われが有るのか分かるかしら?」
「まぁ、わてとリル様との間柄でお為ごかしは、今後の関係からしたら不味いでっしゃろ?わてとしてはリル様とは腹を割ったお付きあいをさせて貰いたいと思っております。話しは変わりますが、この絵画でんな?これは三代目の国王様を描いたものですわ。しかし、残念な事に本物とはちゃいます。なので、ドンカッター商会として買い取るならば金貨七枚ちゅう所になりますわ」
「?・・・本物で無いならば、二束三文な値段な筈なのに、何で金貨七枚もするのかしら?」
「わては本物ではないと言いましたが、偽物とは言っとりません。これは、三代目様を描いた画家リガルのお弟子さんの作品ですわ。リガル殿は数人居るお弟子さん全てにこの絵を模写させとります。中でもこの絵を描いたベニンというお弟子さんは、一番の腕前を持っとりまして、その後リガル殿の後を継ぐほどですが、この作品は模写という事でこの値段になるんですわ。リガル殿が描いた本物は大金貨数枚はしますし、お弟子のベニン殿独自の作品なら、同じくらいするもんですわ。この絵の相場的な事で言えば、大金貨一枚に成りますわ。もっとも、リガル殿もそうですけど、ベニン殿も四百年以上前の画家ですので、作品の現存数がかなり少ないんですわ。だから競りに出せば、あるいは大金貨数枚になる事可能性も有るんですわ。なので、競りの落札価格が大金貨一枚を超えた分の一割を後日上乗せという形でお支払致しますわ。それでよろしいでっか?」
「・・・いいの?競りの事だってわたしに言わなければ、丸々儲けれるのに・・・」
「言ったでっしゃろ?わてはリル様とは腹を割ったお付きあいをさせて貰いたいと。リル様からは、こんな競りでの上乗せ額なんか端金程度に思わせるくらい、お金の匂いがするんですわ。そもそも、商人は信用が第一ですわ。リル様は、わてが黙って競りに掛けて、大金をせしめたと後日知ったら、どんな気持ちでっか?」
「・・・あまりいい感じではないわねぇ」
「でっしゃろ?だからわてはリル様を信頼して大事な事は全てお話しする様しとるんですわ」
「ありがとうわかったわ。ドルトン、いっぱい儲けさせてあげるわ」
「はい、期待しとります」
あたしとドルトンの会話が終わったのを見計らって、ウィンネがドルトンに声を掛ける。
『ドルトン殿、ちょっと良いかの。この絵の事じゃが、どの辺りで三代目国王と判断したのじゃ?』
「これはウィンネ様。これはですなぁ、王国の商業ギルド会員の商会に配られる、この冊子を元にしているんですわ」
そう言うとドルトンは、一冊の冊子をウィンネに渡す。
『フム、これは凄いのぅ。これ程事細かく注釈が有るならば、真贋の区別がつき易いのぅ。ちなみに、この一冊だけでは無いのであろう?』
「はい、全十二冊からになりますわ。しかし、これだけの物を作っても毎年少なくない数の偽物の被害が有りますわ。しかも近年巧妙になって来ていて、商業ギルドでは近々改訂版を配布する予定ですわ。まぁそれでも、偽物の被害は無くならない、いたちごっこな感じだと思います。ちなみに、この冊子は商業ギルド会員の商会の人間以外、所持出来ない旨が会員規約に有りますので、残念ながら差し上げる事が出来ません。商業ギルド以外での複製も禁止されとりますし、盗難に遇った場合も厳しい罰則が有りますので、悪しからずご了承ください」
『そう言う事なら仕方ないのぅ。それだと、あまりじっくり検分しても塩梅悪いのぅ。ドルトン殿、皆で決めた決まり事ならば守らねばなるまい?ならば、そんな申し訳なさそうな顔をするで無い』
「ウィンネ様、そう言って貰えて助かりますわ」
「ちょっといいかしら?あと色々と注文したい物が有るのだけど」
そう言うとあたしは欲しい物を書かれた羊皮紙を渡す。
ええ、残念ながら紙の製法はまだ確立されて無いので、とても高価です一枚が銀貨一枚(一万ズゼ)するので、普段使いする場合は羊皮紙を使います。これでも銅貨一枚(百ズゼ)するので、庶民は滅多に使えません。
なので、あたしが推測した識字率わ20%を下回ると思っています。
ちなみに、我がリネルメ辺境領の識字率は、調べた結果10%にも満たない事がわかっています。
全国平均以下ですので、紙の製法の確立と学校の設立は急務なのですが、いかんせん財政難なので、財政の健全化が先になってしまい、こういうのはどうしても優先順位が下位になってしまいます。
ちなみに、あたしもまだ書けません。セバスチャンに代筆して貰っています。羊皮紙は勿体無いので、地面に書いて練習中です。
(あたしが二人欲しい・・・)
「これでしたら、一週間以内に届けさせますわ。代金はその時で大丈夫でっか?」
「問題無いわ。よろしくお願いするわね」
ドルトンとの会合も終わり支店をあとにする。
(さて、当面の資金も追加で確保したし、とにかく戻るか・・・まずは農民の懐を充たさないと)
ここまでありがとうございます
物価に関してですが、こちらの世界の立ち食いそば屋のかけそばを例にとると、大体小銅貨二枚、20ズゼくらいですので、1ズゼは20円くらいだと思って頂ければ大丈夫です。
誤字、脱字等有りましたらよろしくお願いします




