十四話 武装蜂起
ベリアル「いつもありがとうございます。えー読者諸兄の皆様方には長らく更新出来なかった事を深くお詫び致します」
リル「と、言っても、次が何時になるか分からないけどね。ともすれば武装蜂起?」
ベリアル「深くは言わないけど、そう言う事だよ」
リル「・・・ベリアルだったら出来る?」
ベリアル「出来なくはないけど、こう鮮やかにはねぇ。流石メアラだよ」
リル「・・・ねぇベリアル」
ベリアル「何?リル」
リル「これ以上話してたらネタバレしそうだわ」
ベリアル「・・・是非も無しだね。それではどうぞ」
王国暦324年 6月12日未明 ゾラスタングラード市内
ダン
ダン
ダン
タッタッタッ
「閣下。大変です」
「何事だ!」
「住民が蜂起しました」
「何だと!・・・直ぐに兵士を鎮圧に向かわせろ」
「よろしいのですか?」
「ぐだぐだ言ってないで早くしろ!」
「りょ、了解であります」
この日、メアラが密かに支援していた市民の一部が遂に武装蜂起した。
軍政局のゾラスタングラード市司令本部は、蜂の巣をつついた様な騒ぎとなった。
その混乱は、市外に駐屯する部隊にも及ぶ事になる。
同日 イザルラント州マフダナ平原 ザルヘルバ軍簡易指令部
「申し上げます」
「どうしたの?」
一人の兵士が、あたし達の居る天幕にあわてて入って来た。
「つい半刻前にゾラスタングラード市の市民が武装蜂起しました」
「!!・・・そう、分かったわ。ありがとう下がっていいわよ」
「了解であります」
伝令に来た兵士はそう言って天幕から退室する。
「・・・ベリアル。動いたわよ」
「その様だね。タイミング的には微妙に早いけどね。まぁ連携している訳ではないし致し方無いというのはあるけど」
元々、今日の攻城戦はこの武装蜂起が分かっていたのだ。
ただ、決行予定の時刻は三つ刻半としていた。
まぁ、戦争に於いては、予定などと言う物は有って無い様な物だが、刻一刻と変わる状況に逐次対応しないとならない上に、幾つも有る選択肢の中からハズレを選ばない様にしないとならない。
今回は事前に間者を数名潜り混ませ、反軍政局勢力を支援していたのはメアラの指示であり、その連絡の為に楓ちゃんは度々居なくなっていた。
「申し訳ありませんリル様」
「仕方ないわよ。戦争は生き物の様な物だから、思い通りに行かない事も有るわ。それよりあちらは大丈夫なのかしら?」
「反軍政局勢力の方は概ね大丈夫です。何せ、支援した武器の中には最新式のライフルも千挺ばかり有りましたから」
楓ちゃんだから出来るのだけど、普通は厳重警戒の中、城壁内に侵入して銃をレジスタンスに渡すなんて芸当は無理よ。
「出撃するわよベリアル。楓ちゃんも用意して」
「分かった。全軍に通達する」
「メニヒダに行ってます」
それぞれがそれぞれの行動に入る。
「タレザは・・・ベリアル。タレザは?」
「タレザ?・・・ああ、無駄だと思うけど釘を刺しとく」
「最近動きが無かったからフラストレーションが溜まってると思うから無駄かも知れないけどお願いね」
「任された」
同日 三つ刻半 マフダナ平原
「隊長!閣下から出過ぎるなと忠告が有ったばかりじゃないですか。不味いッスよ」
「何を言うか!この一戦、今気張らずに何時気張ると言うのだ!そもそも、陛下もベリアルも相手の程度は高が知れているのに・・・」
あたし達の心配を余所に、タレザは高揚状態に在り、タレザの師団はそれなり・・・いや、結構本体から突出していた。
「マジで不味いッスよ。一旦後退して後続を待ちましょう」
「あんな烏合の集に後れは取らん。全軍突撃ー!」
「オレはしっかり言いましたからね隊長。ハァ・・・仕方ない行くか」
更に言えば、タレザに付いて来れているのは僅か1個大隊千名だけである。
いくら近代的な騎兵隊とは言え、猪突猛進としか言い様のない有り様である。
勿論、無謀とも言える位には、彼我の兵力差は歴然としている。
本来ならば、鎧袖一触、こちらが蹴散らされるのだが・・・
「敵は浮き足立っているぞ!突っ込め!」
そう、タレザの猛進に、城外に駐屯していた軍政局軍15師団17万は、逆に鎧袖一触と蹴散らされ、大混乱していた。
「あり得ない、あり得ない、あり得ない」
副官は涙目になりながらも、向かって来る敵兵を銃剣で斬り伏せていた。
「タレザ!突出し過ぎよいい加減になさい」
あたしはメニヒダを駆り、突出してしまったタレザを叩くべく、楓ちゃんが機関銃を掃射しながらフルスロットルで来た。
「楓ちゃん。左10時の方向に見えるのタレザじゃない?」
「・・・ですね。タレザ殿ですね」
「楓ちゃん。正面に機銃斉射!」
「了解」
ダダダダダダダダダダダダ
楓ちゃんが発射する8mm機銃の斉射に因り、この車の正面、タレザから見たら右側の圧力がフッと消える。
それを見逃すタレザじゃない。
「!?敵右翼がが崩れたぞ!追撃するぞ!突撃ー!」
タレザは、未だあたしの事に気付く事無く奮戦する。
「あんなの相手にしたら命がいくら有っても足りないぜ」
そしたらどうした事が敵兵は蜘蛛の子を散らす様に逃走、戦線が崩壊した。
「貴様ら!逃げずに戦え!」
敵司令官は鼓舞するも、この敵司令官の能力では一度こうなってしまった軍隊は、覆水盆に還らずの如く、もうこの崩壊は止められない。
「!!敵司令官か!?よし!このタレザ=モデスト押して参る!」
敵司令官を目視で捉えたタレザは、敵司令官を倒すべく、この混戦の中を突っ込んで行く。
「くっ!強い」
敵司令官はタレザの精強さに、苦しみに顔が歪む。
「ハッ」
敵司令官がタレザに攻勢を始めたその刹那。
「チェーッストッー!!」
タレザの銃剣が敵司令官の首を一閃撥ね飛ばす。
「わぁ!?司令官閣下がやられた!撤退撤退!」
敵司令官の副官は、その衝撃故に撤退を指示した。
「敵司令官を、このタレザ=モデストが討ち取ったぞ!」
タレザは勝鬨を上げた。
その後、軍政局軍の前線は崩壊。
蜘蛛の子を散らす様に、全軍が逃走する。
それを只指を咥えて見ている訳ではない。
「敵は逃走したぞ。これより追撃を開始する。全軍進撃!」
タレザが追討令を発する。
転回が目まぐるしく、タレザを引っ捕まえてお小言を言う所ではなくなった。
「敵が退却したわよ。私達も追撃するわよ。タレザが作った価千金の好機ものにするわよ!」
あたしも、メニヒダ部隊に追撃を命令した。
終わってみれば、住民が早朝に蜂起して、軍政局軍が壊走するまでは、三つ刻も掛からなかった。
昼には戦闘が終わって、ゾラスタングラードの解放をあたしは宣言した。
王国暦324年 7月2日 ゾラスタングラード市臨時司令部
「何か呆気なかったわね」
「うん。こんなに早く終わるとは思って無かったよ」
軍政局軍は、ゾラスタングラード攻防戦で敗戦した後は、坂道を転がり落ちる様に、瞬く間にその勢力を喪失して行き、昨日、軍政局軍は無条件降伏を受諾した。
リル「ここまでありがとうございます。誤字、脱字などございましたらよろしくお願いします。あっという間だったわね」
ベリアル「そうだね。タラベアが本格介入する前に終わったのは良かったね。ただね、楓ちゃんがゲロったけど、メアラってばほかの都市にも工作してたらしいね」
リル「・・・そ、そうなんだ」
ベリアル「ねぇリル。メアラって人間だよね?複数都市の同時工作とか、アシュに手伝って貰わないとボク一人では出来ないよ」
リル「ハハハ(乾いた笑い)」
ベリアル「今後とも、辺境領リネルメ興隆記をよろしくお願いします」
リル「なるべく早く更新させます。と言っても、ガルダフェリナ年代記の更新が先ですが」




